7月19日のマツダスタジアム。2-2の8回、広島のセットアッパー・ハーンが阪神・佐藤輝明に勝ち越しの2点二塁打を浴びた。なおも二死二塁。続く大山悠輔へ投じた内角への154キロが体を直撃した。一塁が空いていた場面での死球に、阪神ベンチが一斉に動いた。
疑念が噴き出すには十分な死球だった。
「打たれた直後の腹いせか」
「前日も佐藤の胸元へ投げていた」
だが、野球として考えれば話は逆だ。2点を追う広島に、大山を死球で歩かせる利点はない。しかもハーンは2ストライクまで追い込んでいた。故意に当てたとは考えにくい状況であり、ハーンも「引っかけてしまった球が当たった」と、故意死球を否定している。
それでもこの一球は「報復」と受け取られた。理由は2日前にある。
カード初戦の7月17日、広島投手陣は阪神に3つの死球を与えた。2回に大山、4回に前川右京がアドゥワからぶつけられると、7回には前川が再び島内から、この試合2個目となる死球を浴びた。前川は右肩甲骨を骨折し、戦線離脱。試合後、藤川球児監督は言った。
「ある程度、我慢してますけど、インコースに投げるのは技術も必要。技術の引き上げをしてもらいたい」
広島戦での阪神選手の骨折は、これで2人目だ。4月26日に近本光司が左手首に死球を受け、長期離脱を余儀なくされた。
翌18日も火種は消えなかった。8回、ハーンの抜け球が佐藤の胸元付近を通過。あわや死球という一球に佐藤はバットを放り投げ、ベンチへ戻ってからもヘルメットを叩きつけた。ハーンは三振で切り抜けたが、その裏には阪神のモレッタが小園海斗に死球。両軍の間に張り詰めた空気が残った。
そして第3戦。前日までの不穏な空気を引きずったまま、ハーンは再び阪神の中軸と対峙した。佐藤に決勝打を浴び、その直後に大山へ死球。大山にとっては、カード初戦に続く2個目だった。
9試合の対決を残す両軍の「次」は8月14日
前川の骨折、佐藤の怒り、そして大山への再度の死球。3日間の出来事が一本につながり、阪神ベンチの感情が噴き出した。藤川監督が先頭でグラウンドへ出ると、新井貴浩監督も大山へ歩み寄って謝罪。両軍ナインが本塁付近に詰めかけ、審判団は警告試合を宣告した。
広島ベンチは佐藤の打席前、すでにコーチをマウンドへ送っていた。それでも決勝打を浴び、続く大山との勝負をハーンに託した。続投そのものは不自然ではないが、その大山にまで死球を与えたことで、単なる失投が「報復ではないか」と疑われる一球へと変わった。
両軍は今季、まだ9試合を残している。次は8月14日からのマツダ3連戦だ。今回の騒動が一過性のものとして収まるのか、それとも次の内角球で再び火がつくのか。ペナント争いが佳境を迎える中、両軍の間にこれ以上、禍根が残らなければいいが。
(ケン高田)

