
【三浦泰年の情熱地泰】W杯決勝を終えて寂しい気持ちはないが…4年後よりも「4年間」を大事に
ワールドカップ決勝は、90分を通してスペイン代表が勝者であるべき試合だと感じた。
僕自身もサッカーの発展を考えれば、アルゼンチンがやらなければいけなかったサッカーを理解してあげたいところではあった。
それは泥臭く、時に醜くく、最後に結果だけが残るサッカーだった。そんなアルゼンチン代表だったが、終了した瞬間のメッシの顔を見たら…。
1人少なくなったアルゼンチンは、PK戦狙いから延長後半開始1分で失点。その後に今大会のアルゼンチン代表を象徴した粘り、執着心にどこか拍手を送り、延長後半に投入された5番のレアンドロ・パレデスが試合終了直後までずっと暴れていた態度も良いとは言えないが、負けたアルゼンチン代表も称えてあげなければと感じた。
120分間の勝負となり、勝者はどちらになるのか――アルゼンチンの粘り強さもやはり凄かったが、スペインは大会を通して、さすがFIFAランキング通りのパフォーマンスを貫いていた。
特に中盤の構成が魅力で16番のキャプテン、ロドリは攻守両面を司るチームの心臓だ。
そして、勝利を掴み取るために、最後の所で心臓となる選手を代え、そのポジションに別の選手が入ってくる采配。
その「信頼」が、このスペインサッカーを貫けた要因なんであろう。選手が監督、コーチングスタッフを信じ、監督が選手たちに確固たる信頼を置いていた。
これはアルゼンチン代表監督と選手たちの間にも感じていた。
アルゼンチン代表のスカローニ監督は、他国から見れば癖のある南米選手をしっかりマネジメントしてメッシを中心とした粘り強い、嫌なチームを作り上げた。
僕はブラジルで育った経験があるので、“憎きアルゼンチン”なのだが、今大会の最後まで諦めない、逆境に強かった彼らを称賛したい。
一方でスペイン代表には19歳の選手が2人いた。この年齢の選手を使って勝ったスペインの未来は明るさしか感じない。
そして彼ら2人。特に19番のヤマルには、この後のサッカー界を引っ張らなければいけないという宿命、あるいは重圧みたいなものが生まれてしまった。
メッシはアルゼンチンを優勝させるのに5大会もかかった。それを彼は最初のW杯で成し遂げてしまったのである。
ちなみに、“王様”ペレは17歳で世界一になり、ブラジルを3回優勝させている。ヤマルはどこまで優勝回数を伸ばすのだろうか。
ここから、世界のサッカーがどう変化していくか?
伝統的なサッカー文化を持つアルゼンチンのスタイルを、実力差でぶち破ったスペイン代表の優勝は、世界の頂点を争うサッカーのスタンダード(基準)を変えてくれると信じている。
そしてアルゼンチン代表は、メッシがいなければパラグアイやコロンビアと変わらない…と言われてしまうのか?
ネイマールがいなくなるブラジル代表は、お金のために闘うお金持ちの選手ではなく、ブラジル本来のハングリーな闘う気持ちを持った国内組選手をW杯でお披露目させる環境が作れるのか?
そうではなく、ヨーロッパで闘う選手をアルゼンチンのように強い闘争心で一致団結させ、どの国もどんな選手も止められないという勝利に貪欲なブラジル代表を復活できるのか?
スペインが優勝したことにより、日本のサッカーはやはりヨーロッパに学び、ヨーロッパでプレーする選手によって代表チームが構成されていくことになるのか。そして、Jリーグの選手は「蚊帳の外」化してしまい、日本の国内リーグは弱く衰退していってしまうのか?
いや、それではいずれヨーロッパに選手を供給することもできなくなるだろう。だからこそ、Jリーグの選手には、人気やイメージだけを気にして、負けを簡単に許してしまうような薄っぺらいサッカーはしてほしくない。
そうでなく日本らしさ、どんな時でも手を抜かず、努力でき、走り続け、勤勉で、相手を絶対に舐めない、謙虚で人を想いやれるという、世界にはない強靭なメンタリティーを持ちながらも、テクニックと戦術と分析をバランスよく調和させるサッカーを目指してほしい。そんなサッカーを完成させられるのか?
W杯が終わって寂しいのではない。
僕はW杯が終わって「怖い」。これからどうなるのかが…。
日本のサッカーも明るい未来しか見えない。そんな景色になっていかなければいけない。
そして、僕自身は日本のサッカーに貢献したい、との思いがより強くなった。
感動もした、一喜一憂もした。びっくりもした。最高だった。
しかし僕は表彰式など見たくない。どこか悔しさだけが残っている。
4年後よりも4年間が大事。
「ありがとうワールドカップ」。
2026年7月20日
三浦泰年
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