
ある人は「内向的な性格の人ほど、孤独になりやすい」と考えるかもしれません。
しかし反対に、孤独を感じることが、その後の外向性や感情の安定しやすさなど、性格に影響を及ぼす可能性もあります。
スイスのチューリッヒ大学(UZH)の研究チームが6万3502人を対象に分析したところ、性格と孤独感は関連しており、4年後の互いの変化を予測していました。
研究成果は2026年6月19日付で、科学誌『Journal of Personality』にオンライン掲載されています。
目次
- 性格が孤独感を生じさせるのか、孤独感が性格を変化させるのか
- 孤独感と3つの性格特性が小さな循環を作る可能性
性格が孤独感を生じさせるのか、孤独感が性格を変化させるのか
孤独感とは、単に一人でいることではありません。
実際の人間関係が、自分の望む人間関係より少ない、親密でない、満足できないと感じる主観的な苦痛を指します。
そのため、大勢に囲まれていても孤独を感じる人がいる一方、一人の時間が長くても、その状態に満足していれば孤独とは限りません。
これまでの研究では、外向性などの性格特性と孤独感に関連があることが知られていました。
しかし、同じ時点で両者を調べただけでは、性格が先なのか、孤独感が先なのかを判断できません。
過去の追跡研究も、対象や分析方法が異なり、結果が一致していませんでした。
そこで研究チームは、オーストラリアのHILDA、アメリカのHRS、オランダのLISSという3つの大規模追跡調査(6万3502人分)を分析しました。
性格は、外向性、協調性、誠実性、開放性、情緒安定性からなる「ビッグファイブ」で評価されました。
このうち誠実性は計画性や責任感、情緒安定性は不安やストレスに振り回されにくい傾向を表します。
今回のポイントは、外向的な人と内向的な人を単純に比べたのではないことです。
研究者たちは、「ある人が普段より外向的だった時期に、4年後の孤独感が普段より低くなっているか」というように、同じ人の中で起きた変化を追いました。
さらに、性格から孤独感への方向と、孤独感から性格への方向を同時に分析し、データセットの結果を統合しました。
その結果、普段より外向性、誠実性、情緒安定性が高かった時期は、4年後の孤独感がわずかに低い傾向がありました。
反対に、普段より孤独感が強かった時期は、4年後の同じ3つの性格特性がわずかに低い傾向を示しました。
では、なぜ両者は双方向に結びついていたのでしょうか。
より詳しい結果を次項で見ていきます。
孤独感と3つの性格特性が小さな循環を作る可能性
統合分析で一貫した関係が確認されたのは、外向性、誠実性、情緒安定性の3つでした。
一方、協調性と開放性については、全体を通じた明確な関係は確認されませんでした。
重要なのは、見つかった関係がいずれも小さかったことです。
孤独を感じた人の性格が大きく変わるわけでも、内向的な人が必ず孤独になるわけでもありません。
それでも、一方がもう一方の結果になるだけではなく、互いの将来の状態を予測していた点には意味があります。
外向性が普段より高い時期には、自分から交流を始める機会が増え、人間関係の量や質が高まりやすいと考えられます。
誠実性が高い時期には、約束を守る、連絡を続ける、責任を持って相手と接するといった行動を取りやすく、関係を維持しやすいのかもしれません。
情緒安定性が高ければ、相手の曖昧な反応を過度に悪く受け取らず、人間関係の不安やストレスにも対処しやすいでしょう。
これらの性質が高い状態では、人との関わりが増えたり、関係が安定したり、対人ストレスにうまく対処できたりするため、結果として孤独感が薄れやすくなると考えられます。
逆にこれらの性質が低い状態では、自分から関係を築く機会が減ったり、関係を維持する行動が続かなかったり、相手の反応を過度にネガティブに受け取ったりしやすくなります。
その結果、人間関係の質や満足度が下がり、孤独感が高まりやすくなる可能性があります。
一方、孤独感が強い状態では、拒絶の兆候に敏感になり、相手の態度を悪い方向に解釈したり、人付き合いを避けたりする可能性があります。
その状態が続けば、社会的な積極性や自己管理、感情の安定しやすさが少しずつ弱まることも考えられます。
このように、性格特性の低下が孤独感を高め、その孤独感がさらに性格特性を弱めるという形で、両者が互いに影響し合いながら小さな負のループを形成する可能性も考えられます。
ただし、この研究には限界があります。
これらは観察データの分析であり、性格と孤独感が互いを直接引き起こしたと証明するものではありません。
データはすべて自己申告で、調査ごとに質問方法も異なり、結果の大きさにもばらつきがありました。
対象がオーストラリア、アメリカ、オランダに限られているため、日本を含む他の文化圏に同じ結果が当てはまるかも不明です。
それでも今回の研究は、孤独感を性格の結果だけとして扱うのではなく、その後の性格とも結びつく可能性があるものとして捉える必要性を示しています。
性格と孤独感は、長い時間をかけて互いをわずかに押し動かしているのかもしれません。
参考文献
Do our personalities make us lonely, or does loneliness change who we are?
https://www.psypost.org/do-our-personalities-make-us-lonely-or-does-loneliness-change-who-we-are/
元論文
Identifying Robust Longitudinal Transactions Between Loneliness and the Big Five Personality Traits
https://doi.org/10.1111/jopy.70084
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

