
「重鎮を排除」「クラブで良くなかった選手を重用」スペイン代表を世界制覇に導いた指揮官の“妥協なき組織作り”【コラム】
スペインは代表チームというよりも一つの完成されたチームであり、ルイス・デ・ラ・フエンテの歩みを見れば、彼はクラブの監督というよりも根っからの代表監督と言える。
アンダーカテゴリーから世界チャンピオンへの選手たちが辿った軌跡に、これほど深く関わってきた指導者は他にいない。ラ・リーガのビッグクラブでの実績という後ろ盾を持たない中で、彼がこの職務の価値を高めてきた姿勢は模範的だった。
レアル・マドリーの選手を一人も招集しなかったにもかかわらず、あるいは誰も呼ばなかったからこそ、デ・ラ・フエンテはリスペクトを勝ち取った。彼の選手選考は所属クラブの格ではなく、2015年からアンダーカテゴリーで見てきた選手たちの取り組みや、純粋な実力に基づいている。バルセロナとマドリーのライバル関係を超えた時、真の代表チームが成立する。デ・ラ・フエンテはまさにスペインフットボール全体を包括する代表監督である。
デ・ラ・フエンテが政治的な駆け引きをしたと責める者は誰もいない。彼は個別の事情を超越し、全体の利益を第一に考える連盟の人間として自然体で振る舞った。今の彼はあまりにもごく普通の代表監督に見えるため、ラミネ・ヤマルという規格外の選手すらもごく普通の存在に変えてしまった。ヤマルは大会を通して献身的なプレーを披露し、絶対的リーダーであるロドリに付き従う一員として機能した。
スペインが追求した全体の利益とは、ボールに対する執着心だ。その組織力に屈したメッシは涙した。10番はボールを持たなければ無力であり、それはアルゼンチンを不幸にする展開でしかなかった。
もちろんアルゼンチンは今大会4度の逆転劇を演じてきたチームだ。彼らからボールを奪い、メッシをプレーに関与させないことは容易ではない。しかしデ・ラ・フエンテは明確な考えとプランを持ち、メンバー選考から栄冠獲得までのプロセスにおいて、一切の妥協なくそれを具現化し続けた。招集リスト、スタメン、選手交代といった用兵がすべてと言っていいほど的中した。
これは単なる運で片付けることはできない。ウナイ・シモン、ペドロ・ポロ、ククレジャ、ラポルト、ファビアン、オジャルサバル、バエナといった、所属クラブで決して良いシーズンを送ったとは言えない選手たちを主軸として起用し、最適解を弾き出した。その選考は形式的な事務作業に陥ることはなかった。それはセルヒオ・ラモス、モラタ、カルバハルといった重鎮を外すことに躊躇しなかったことからも明らかだ。
デ・ラ・フエンテは助け合いと調和、一体感を最優先する戦術的枠組みを構築した。インサイドハーフの高さやウイングの人選に応じたFWのポジション取りといった細かな調整を許容しつつ、エゴを徹底して排除する。この妥協なき組織作りこそが、ベルギー戦でのわずか1失点のみでワールドカップを制覇する原動力となった。
闘牛を愛し、フリオ・イグレシアスを敬愛し、時に古代ローマ皇帝マルクス・アウレリウスを引用する信仰深き男、デ・ラ・フエンテ。スペイン代表監督を天職とする彼にとって、信念、野心、そして誠実さは決して譲れない絶対条件なのだ。
取材・文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸
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