「オーストラリアで日本人女性の入国拒否が相次いでいる」
そんな話が駆けめぐっている。その背景にあるとされるのは「夜の仕事」だという。日本人女性はオーストラリアで、キャバクラや性風俗で働くことは禁止されているからなのか。
いや、答えは単純な「禁止」ではない。まず整理しておきたいのは、キャバクラのような接客業と性風俗は別の業態だということ。オーストラリアでは性風俗に関する法律が州や準州によって異なり、合法または規制のもとで営業が認められている地域がある。
キャバクラや性風俗で働くための専用ビザはなく、ワーキングホリデービザなど就労が認められたビザであれば、業種を一律に禁止しているわけではない。ただし、観光ビザで働くことは認められず、州ごとの法律や営業ルールを守ることが前提となる。
ではなぜ、日本人女性が入国時に問題になるケースが出ているのか。ポイントは「仕事そのもの」ではなく、「入国時の目的とビザの内容が一致しているか」にあった。
オーストラリア国境警備隊(ABF)の「Operation Inglenook」に関する情報公開資料によると、2022年11月14日から2024年8月18日までの約21カ月間で、入国審査を拒否された人は165人。そのうち女性は154人で、29歳以下は78人だった。
国籍別では、日本人が87人と最も多く、全体の約53%を占めた。続いて中国人18人、台湾人16人、タイ人12人となっている。
ただし、これは「オーストラリア全体の入国拒否者の半数以上が日本人女性」という意味ではない。あくまでOperation Inglenookという特定の取り締まり対象者のデータである。それにしてもなぜ、日本人が多いのか。そこは、過去の日本人向けナイトビジネスが横たわっていた。
現地で仕事を探すのではなく「何を目的に来たのか」を厳しく確認
「2000年代から2010年代にかけて、シドニーなどでは日本人向けのクラブやラウンジが数多く営業していました。日本語で接客を受けられるため、駐在員や日本人旅行者から需要があり、ワーキングホリデーで渡航した女性にとっても、働きやすい仕事でした」
地元飲食店関係者はこう話すのだが、現在は状況がガラリと変わっている。以前は海外の求人サイトに日本人向けクラブの募集情報が数多く掲載されていたが、現在はその数が大きく減っているのだ。
「夜の仕事自体が禁止されたわけではありません。ただ、以前のように現地で仕事を探す時代ではなく、今は入国時点で『何を目的に来たのか』を厳しく確認されるようになっています」(前出・地元飲食店関係者)
一方で、この取り締まりには批判もある。オーストラリアの性産業従事者支援団体「Scarlet Alliance」は、日本人を含むアジア系女性への審査が集中しているとして、国籍による偏りがあるのではないかと指摘。対する当局は、ビザ制度の適正な運用や人身取引防止のための措置だとしている。
つまり「日本人だからオーストラリアで夜の仕事ができない」という話ではないのだ。
とはいえ、「ワーホリビザがあるから何でも自由に働ける」という時代ではなくなった。海外で働く日本人を取り巻く環境は、情勢とともに大きく変化しているのだ。
(カワノアユミ)

