ゴスペラーズの黒沢薫と乃木坂46の中西アルノがMCを務める音楽番組『Spicy Sessions』の最新回『Spicy Sessions with 松崎しげる』が、7月25日午後11時30分からCS放送「TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画」で放送される。
第28回のゲストは、1970年のデビュー以来、ソウル、ポップス、歌謡曲を横断しながら数々の名曲を歌い続けてきた松崎しげる。今回も、ゲストの音楽的ルーツや歌への向き合い方をトークで掘り下げるとともに、生バンドを交え、その場で楽曲を作り上げる番組ならではのセッションが繰り広げられた。
収録後のインタビューでは、黒沢が松崎の歌声を「神々しかった。照明じゃなくて、光って見えました」と表現。中西も「人って歌い続けていたらここまでいけるんだ」と圧倒されたことを明かし、自身が番組で歌い続ける意味について「まだまだたくさん、いろいろな意味が見つかりそう」と語った。
松崎しげる、代表曲「愛のメモリー」で収録開始

『Spicy Sessions』は、完成されたパフォーマンスを披露するだけでなく、出演者とバンドが歌割りやアレンジを相談し、一曲の音楽を立ち上げていく過程まで届ける音楽番組である。
松崎はステージに登場すると、バンドメンバーに目配せしながら握手を交わし、一礼。演奏者を尊重する姿から、長年にわたり音楽と向き合ってきた姿勢をうかがわせた。
最初に披露したのは、代表曲「愛のメモリー」。松崎は自身が高校球児だったことに触れ、甲子園への出場はかなわなかったものの、同曲が選抜高校野球大会の入場行進曲となったことで、別の形で夢をかなえてくれた一曲だと紹介した。
サビに差しかかるとステージは赤い照明に包まれ、黒沢もMC席で歌詞を口ずさむ。歌い終えた松崎に、黒沢は「胸いっぱいです」と率直な思いを伝えた。中西も「人って歌い続けていたらここまでいけるんだ」と興奮を隠せない様子を見せた。
収録後のインタビューでも、中西は「横で聴いていて“やばいこれ!”って」と、その衝撃を回想。「今日この後セッションするのに、『愛のメモリー』を超えられるはずがないって思っちゃいました」と苦笑しながらも、歌い続けることの可能性を実感したという。
「近くで聴いたら、こりゃ敵わないって思いました。でも、歌い続けていたらここまでやれるようになるんだと思って。そしたら『Spicy Sessions』で歌い続ける意味って、すごくあるなと。まだまだたくさん、いろいろな意味が見つかりそうだなと思ったんです」
一方、黒沢は「神々しかったですよ。照明じゃなくて、光って見えました」と振り返った。松崎が白いスーツを着ていたためかもしれないと笑わせつつも、その歌声に込められた説得力と重みを強調した。
「『愛のメモリー』って、もうみんな知った気になっているし、実際聴いている。松崎さん自身もいろんなバージョンを歌っているし、ギャグにもしている。でも実際に目の前で歌われると、『すみませんでした、今まで。こういう曲だったんですね』って。説得力というか、重みが違う。本当に“神々しい”という言い方が一番合っているかもしれない」
さらに黒沢は、長く歌い続ける歌手の場合、聴き手が全盛期の記憶を補いながら聴くこともあるとした上で、「松崎さんの歌は、それが起きない」と指摘。「今が一番良い部分がちゃんとある。歴史を積み重ねた上で、さらに良くなっている」と、そのすごさを語った。
ビートルズ来日公演のチケットも披露
トークでは、松崎の音楽的ルーツも明かされた。
黒沢は、かつて自身のラジオ番組で松崎と「愛のメモリー」を一緒に歌った際、「コテンパンにされました。大人と子供みたいな感じに」と感じたことを告白。中西は、小学生の頃に絵具の“松崎しげる色”を持っていたと話した。
黒沢から「使った?」と尋ねられると、中西は「松崎しげるさんを描く時にだけ」と答え、会場を笑わせた。
松崎は両親の影響で、幼い頃から洋楽を聴いて育ったという。ビートルズの来日公演にも足を運んでおり、収録には当時のパンフレットとチケットを持参。貴重な品を前に、黒沢やバンドメンバーも目を輝かせた。
学生時代は野球部で厳しい練習に打ち込んでいたが、練習後には這うようにレコードプレーヤーの前へ行き、毎日レコードに針を落としていたという。圧倒的な歌唱力を持つ歌手である一方、熱心な音楽リスナーでもある松崎の原点が浮かび上がった。
黒沢薫と「Georgia On My Mind」を即興セッション
松崎が黒沢とのセッション曲に選んだのは、レイ・チャールズの「Georgia On My Mind」だった。
同番組では事前に歌唱曲は決められているものの、歌と演奏を出演者が実際に合わせるのは収録当日。スタッフが譜面を運び込むと、松崎、黒沢、バンドメンバーがステージ中央で歌割りやアレンジについて話し合った。
「ここはこうしたらどうだろう」「もう少しシンプルに」と、その場でアイデアを出し合い、曲の形を探っていく。完成した譜面を再現するのではなく、出演者全員が音楽を介して会話し、収録の瞬間に最適な形を組み立てる姿が映し出された。
黒沢が「歌割りは、しげるさんの“ここ歌え”“あれ歌え”を聞けばいいと思うんですけど」と話すと、松崎は「サビは1行ずつ歌おうか」と提案。その後も松崎が「一緒に歌う?」と問いかけ、黒沢が「しげるさんに合わせて、僕が何かやればいいんですよね」と応じるなど、テンポよく打ち合わせが進んだ。
黒沢は観客に向かって、「“後輩感”を噛み締めております」と冗談を飛ばし、笑いを誘った。
完成した「Georgia On My Mind」では、松崎の力強くブルージーな歌声と、黒沢のソウルフルなボーカルが交錯。どちらか一方が主役になるのではなく、相手が放つフレーズを受け止め、呼吸を合わせながら音楽を育てていくセッションとなった。
黒沢は収録後、この曲について「本当に決まらないまま歌った」と明かした。
「松崎さんが“一緒に歌う”と言っているのは、ユニゾンではないんですよ。だから本当に歌いながら探って、その場でやっていました。後で収録音源を聴いたら、ちょっとヒョロっとしているところもあると思うけど、でもそれがリアル。これこそセッションだと思う」
松崎がレイ・チャールズの音源通りに歌わないことは予想していたという黒沢だが、実際に予想外の歌が返ってきた際、その歌を受け止め、曲として成立させる力は番組を通して鍛えられたと語る。
「歌い散らかすだけじゃなく、相手を受けて、ちゃんと歌、曲として成立させられるようになったのは、この番組のおかげかなと思います」
松崎しげると中西アルノ「見上げてごらん夜の星を」

続いて松崎は、坂本九と一緒に歌った際に「涙が出るほど嬉しかった」と語り、中西とのセッション曲に「見上げてごらん夜の星を」を選んだ。
松崎は自身と中西の声について、「このダミ声と天使のような声が」と表現し、会場を笑わせた。中西は、父親が同曲を好きだったため、幼い頃から生活の中にあった曲だと明かした。
打ち合わせでは、松崎が歌割り、キー、フレーズの受け渡しを中西やバンドと丁寧に確認。さらにステージ上での動きについても提案し、バンドはウッドベースを準備するなど、2人が作り出そうとする世界観に応じて編成を整えた。
本番では、松崎が圧倒的な歌唱力を前面に出すのではなく、中西の透明感のある歌声を包み込むように歌唱。坂本九が楽曲に込めた温もりを大切にしながら、一つひとつのフレーズを互いに受け渡していった。
黒沢は会場全体を穏やかな表情で見守り、終盤には目を閉じて、2人の歌とバンドの演奏に聴き入った。
歌唱後、松崎は中西の声について「ずっと聴いていたい感じがした」と称賛。中西も「ハモリのところがはまって、ステージングまでついて。オンエアが楽しみ」と手応えを口にした。
ただし、本番で松崎が歌ったフレーズは、事前の打ち合わせ通りではなかったという。
中西は「一切、打ち合わせ通りではなかったです」と笑い、「『Georgia On My Mind』で翻弄されている黒沢さんを見ていたので、私の番が来るぞっていう気持ちでした」と振り返った。
特に終盤のハモリでは、松崎がどのように崩してきても対応できるよう、寄り添いながら歌うことを意識したという。
これを聞いた黒沢は、「歌心の膝を柔らかくする。いつでも、どの動きでもダッシュできるように。最高ですね、アルノさん」と評価。中西が予測不能な相手の歌に対応し、セッションを成立させたことに感心していた。
黒沢は「ちゃんとデュエットになっていた。すごく良かった」と総括。誰もが知るスタンダードナンバーだからこそ、歌い手による解釈の違いや、その場でしか生まれない表現がはっきりと伝わるセッションになったと話した。
黒沢念願の「マイ・ラブ」で松崎しげると共演
黒沢が松崎と歌いたい曲として選んだのは、1979年放送のTBSドラマ『噂の刑事トミーとマツ』の主題歌「マイ・ラブ(I Gave You My Love)」だった。
黒沢は同ドラマが好きで、以前から松崎と一緒に歌いたいと思っていたという。松崎も今回の歌唱に向けて曲を改めて調べ、「いい曲だなと思いましたね」と笑顔を見せた。
ピアノのイントロから始まったセッションでは、松崎と黒沢の円熟した歌声が正面から向き合った。後半では、黒沢が同番組では珍しい、突き抜けるような全開のハイトーンを披露。日本の男性ハイトーンボーカルの先駆的存在でもある松崎に対する敬意を、歌声で示すようなパフォーマンスとなった。
歌唱後、2人は力強く握手。互いに満足そうな笑顔を浮かべた。
中西は「バンドもお2人もエネルギーがすごい。近くで聴くことに価値がある歌」と感想を語った。
黒沢は同曲を選んだ理由について、ゴスペラーズのツアー中に偶然『噂の刑事トミーとマツ』の再放送を見たことがきっかけだったと説明。エンディングで流れた同曲を聴き、「めちゃくちゃいい曲じゃん。何、この曲?」と改めて魅力に気付いたという。
「最近は、あまり歌われていないようないい曲を、『これ、いい曲でしょ?』とプレゼンするのも『Spicy Sessions』の役割としてあると思っています」
中西が番組で歌った、さユりやmajikoの楽曲をきっかけに、黒沢の世代が新しい音楽と出会うことがある一方、今回は昔の名曲を若い世代へ伝える“逆バージョン”でもあったという。
「ちゃんといい曲でなきゃいけないし、いい曲として歌わなきゃいけない。今回、それはできたかなと思います」
黒沢薫と中西アルノがマイケル・ジャクソンに挑戦

収録の最後を飾ったのは、黒沢と中西による「I Just Can’t Stop Loving You」。マイケル・ジャクソンとサイーダ・ギャレットによるデュエット曲で、中西がマイケル・ジャクソンの楽曲を本格的に歌うのは今回が初めてだった。
中西は、洋楽好きの祖母がマイケル・ジャクソンやエルヴィス・プレスリーをよく聴いており、祖母の部屋でも同曲が流れていたと語った。収録当日は、その祖母も観覧に訪れていたという。
演奏が始まると、黒沢のソウルフルなボーカルと中西の艶のある声が、美しいコントラストを描いた。松崎との予測不能なセッションを経験した後だけに、互いの声を受け止めながら歌を組み立てる意識も、より鮮明に表れていた。
終盤では、黒沢が中西にアドリブを投げかけ、中西が歌で応じるラリーも展開。歌い終えた2人は自然にハイタッチを交わした。
黒沢は今回、アルバム『BAD』に収録された音源ではなく、ドキュメンタリー映画『THIS IS IT』に登場するリハーサル場面を意識したという。
その場面では、マイケル・ジャクソンがデュエット相手に「こうやるんだ」と促し、相手が戸惑いながらも次第に歌へ乗っていく。黒沢は、その関係性が自身と中西に重なると感じた。
「ちゃんと歌っていてキャリアもあるけど、今回このセッションは初めてだという人に対して、俺はこうだよ、こうだよとやっている感じが、面白く伝わるかもしれないと思ったんです」
中西も「引っ張り出されている感じですよね」と納得。アドリブが何度も返ってくる中、「もう限界」と内心思いながら歌っていたと明かした。
それでも映画の場面を見たことで、黒沢が求めていた表現を理解できたという。
「マイケル・ジャクソンが『戸惑っていないで、やってみて』と言っている感じと、私が戸惑いつつ乗っかっていく感じが重なって。これが黒沢さんのやりたかったことなんだと理解して歌えました」
黒沢は、中西がアドリブの終わりを歌声で示したことも称賛した。
「物足りなかったら、僕はもう一回行くんですよ。でもアルノさんは、順を追って『はい、ここでおしまいです、黒沢さん』というのを歌声で伝えてくれる。2人で会話をしながら歌うことができた。本当にいい表現ができたと思っています」
音楽が人と人との間で生まれる瞬間
今回、松崎は圧倒的な歌唱力を披露するだけでなく、相手の声を聴き、バンドと対話し、その場で最良の形を探し続けた。
「Georgia On My Mind」では黒沢と洋楽への敬意を分かち合い、「見上げてごらん夜の星を」では中西の歌声に寄り添った。「マイ・ラブ(I Gave You My Love)」では、自身に敬意を向ける黒沢に対し、円熟した歌声で応えた。
完成形が最後まで分からない中で、歌い手同士が声を交わし、バンドがそれを受け止めながら、一曲の音楽が生まれていく。松崎、黒沢、中西、バンドメンバー全員が熱心な音楽リスナーでもあるからこそ成立した収録となった。
黒沢は「結局、本番で完成させるしかない。でも完成形がどうなるかは最後まで分からない。そこが面白い」と語る。
中西にとっても、松崎との共演は、自身が歌い続ける意味を改めて考える機会となった。
世代も声質も音楽的背景も異なる歌い手たちが、互いの声に耳を傾け、敬意を交わしながら歌を作る。音楽は完成された作品としてだけではなく、人と人との間で生まれ、受け継がれていくものだということを示す一夜となった。
『Spicy Sessions with 松崎しげる』は、7月25日午後11時30分から深夜0時30分まで、「TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画」で放送される。

