“先輩だから”が通じない時代
フジテレビのドラマ撮影現場で起きたトラブルが明らかになり、さまざまな意見が飛び交っている。
主演女優に性的トラウマがあり、それに対する配慮をフジテレビ側のプロデューサーには通達していたんだけど、男優にはその件が伝えられていなかった。事態を把握・打開しようと、この男優が女優の控室に出向き「そのような状態なら俳優業を続けるのは難しいのではないか」という意見を述べたところ、これがハラスメントと認定されたということだ。
それぞれの立場で正当性があるとは思う。客観的には、トラブルの発端である行き違いや、問題が起きてから積極的に介入せずに放置した制作会社やフジテレビ側に問題があると思う。
ただ、控え室まで乗り込んで発言したことについては、本人的に単なるアドバイスだったかもしれないけど、今の時代はハラスメンと言われても仕方がない。
この男優は業界の先輩として、一言いいたかっただけなんだよ。プロレス界に例えたら、若手選手から「首をケガをしてるので攻撃しないでほしい」と言われたら、それは配慮するけど、一方で「そんな状態だったらプロレスを辞めて、他の仕事を探した方がいいかもしれないよ」くらいの話はすると思う。でも、それを言っていいのは、同じ会社の後輩に限るんだよ。
お笑い芸人もそうだけど、芸歴が1日でも長い方が先輩という暗黙の了解がある。プロレス界でもその傾向があって、年齢は関係なく、入門・デビューの早い方が先輩。でも、今の時代だと他団体やフリーの選手に対して先輩風を吹かせて説教するのは、ハラスメントになる可能性が高い。
【蝶野正洋の黒の履歴書】アーカイブ
会社を弱らせるのは身内の争い
テレビドラマというのは、いろいろな事務所や会社から、さまざまな世代のスタッフが集まって作っている。みんなプロだから、そこに上下はなく、立場としては平等なんだよね。
いくら主演で座長的な立ち位置とはいえ、共演者は同業の競合者になるから、どちらか一方的に意見するのはNG。上からモノを言えるのは、カネを払って雇用している側。今回の場合は所属事務所や制作プロダクション、それにフジテレビということになるんだよ。
テレビ関係者の知り合いがいるんだけど、一連の問題にはフジテレビ内の権力争いもあるんじゃないかと思う。今回の件も、誰かが週刊誌に情報を流したことで問題が広がったけど、リークしたのはフジテレビ局内の人間という可能性もある。
フジテレビは中居くんのときもスポンサーが退いて、本当に潰れるかもしれないという状況まで追い込まれた。実際に左遷になったり、クビになった重役もいる。でも、その後に出世した社員もいるんだよ。そういう奴らが、また会社に揺さぶりをかけているのかもしれない。
でも、こういうことが続くと、組織というのは必ず弱体化する。実際に最前線で働いていた人からクビになっていくし、それを近くで見ていた有能な社員も「こんな会社やってられない」と辞めていく。後に残るのは、仕事はできないけど社内人事だけが得意な連中だけ。
そんな繰り上げ式に地位を得た社員だらけの会社は、本当につまらなくなって業績が下がる。そういう組織をいくつも見てきたから、フジテレビも同じ轍を踏まないようにしてほしいね。
「週刊実話」7月30日・8月6日号より
蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)
1963年シアトル生まれ。84年に新日本プロレス入団。「nWo JAPAN」を率いるなど“黒のカリスマ”として活躍し、2010年に退団。現在はプロレス関係の他に、テレビやイベントに出演するタレント活動、「救急救命」「地域防災」などの啓発活動にも力を入れる。
