日本列島の梅雨明けは既に関東甲信地方と東海地方にも及び、ワイドショー番組では首都圏にある海水浴場にテレビカメラを送り込んで現地の様子を伝えているが、中継映像に映し出された「人出の少なさ」に違和感を覚えた視聴者は多かったのではないか。
例えば江の島を正面に臨む片瀬東浜海岸(神奈川県藤沢市)は1980年代、海水浴客が砂浜をぎっしりと埋め尽くす光景がトレードマークとなっていた。ところが、この日の東浜ビーチは人影もまばらなスカスカ状態。同様のスカスカ状態は湘南地域にある別の海水浴場でも見られ、中には閑古鳥が激しく鳴いているビーチも散見されたのである。
公益財団法人「日本生産性本部」が公表している「レジャー白書」によれば、夏場の海水浴客数は1985年の約3790万人をピークに減少を続け、2024年には約440万人にまで激減。ピーク時からの減少率は、およそ9割にも達しているのだ。全国各地の海水浴場で今、何が起きているのか。
全国紙社会部記者が指摘する。
「最近の若者は車への関心が極めて低いため、海水浴をするには電車やバスを乗り継がねばならず、着替えをするにも海の家を利用しなければならない。そのようなタイパとコスパの悪さが、レジャーの多様化とともに、若者の海離れを招いていると考えられています。加えて近年は夏場の異常酷暑が激しさを増しており、かつてのように海水浴を楽しめる環境ではなくなってしまったことも、大幅な客足減につながっているようです」
海の家の夜間営業やサンセットライブ開催による成果も
そんな中、海水浴場の開設数も減少の一途を辿っている。公益社団法人「日本観光振興協会」の調査によれば、夏場の開設数は1993年の1379カ所から、2024年には969カ所にまで減少。減少率は30年間で約3割にも上る。
社会部記者が続ける。
「熱中症や日焼けへの警戒、屋内レジャーへのシフト、全国各地で進む砂浜の消失など、開設数減少の要因は複合的。全国レベルで海水浴場の閉鎖や開設見送りが相次ぐ中、客足減とのダブルパンチに見舞われている海の家の経営者からは『今後は赤字による廃業が続出するだろう』との、悲鳴に似た声が上がっています」
もっとも、客足を伸ばしている海水浴場がないわけではない。例えば神奈川県鎌倉市にある由比ガ浜海水浴場では、海の家の営業時間を夜間(午後21時)まで延長したり、サンセットライブを開催したりして、一定の成果を上げている。要は夕方から夜間にかけての時間帯に着目した起死回生策である。
近い将来、いわゆる海水浴は「夏の風物詩」ではなくなるかもしれない。
(石森巌/ジャーナリスト)

