現在、祇園祭で世界中から集まった観光客であふれ返る京都。四条通や河原町周辺では外国語が飛び交い、人気の観光スポットは連日、大混雑している。
インバウンド需要はコロナ禍前を上回る勢いで回復したが、その一方で「地元の人が近寄らなくなった場所」が少なくない。代表格として名前が挙がるのが、「京の台所」と呼ばれる錦市場だ。
実は同じように「観光客向けになりすぎた」と批判を浴びた市場が大阪にもある。「大阪の台所」として知られる黒門市場だ。コロナ禍前にはホタテやカニ、和牛串などを高額販売し、「ぼったくり市場」と揶揄されたことで、地元客の足は遠のいた。
しかし最近では外国人観光客向けの高額グルメ店が軒を連ねる一方、昔ながらの総菜店や鮮魚店、青果店も営業を続け、価格帯は二極化。地元客が戻り始め、観光客と地域住民が共存する市場へと変わりつつある。
一方、錦市場は事情が異なる。京都市民に話を聞くと、辛辣すぎる声が返ってきた。
「地元の人間はほとんど行っていませんし、話題に上ることもありませんね。このままでは、数年かけて店舗を入れ替えるくらいの改革をしなければ、失った信用は取り戻せないのではないでしょうか。京都は百年企業が数多く根付く街です。お金を積んで地元の店を追い出し、市場を別世界のように変えてしまった以上、回復には相当な時間がかかると思います。将来的に『日本人割』や『京都府民向けサービス』などで地元客を呼び戻す手はあるかもしれませんが…」
まず取り戻すべきは外国人観光客ではなく…
これほど厳しい目が向けられることには、京都ならではの空気感が関係している。京都では店の評判や地域との関係を長く見られるため、少しでも「地元向けではない」と受け取られると、客足が一気に遠のきやすい。
観光客が増えればそれで終わりではなく、日常使いできる価格や品揃え、地元客が入りやすい雰囲気を取り戻していけるかどうかが欠かせない。錦市場もまずは京都の人に「また行ってみよう」と思わせるところから、少しずつ信頼を積み直していく必要があるだろう。
「京の台所」を名乗るなら、まず取り戻すべきは外国人観光客ではなく、財布を持って毎日のように通ってくれた京都人の気持ちなのかもしれない。
(京野歩夢)

