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「隣の芝生は青く見える」苦悩を告白…稲葉ともかが悲願の初戴冠 JTOを背負い続けた7年の本音「これまで悔しかった」

「隣の芝生は青く見える」苦悩を告白…稲葉ともかが悲願の初戴冠 JTOを背負い続けた7年の本音「これまで悔しかった」

強気な姿でファンや団体を引っ張っていくばかりがプロレスラーではない。時に悩み、迷う姿をさらけ出すことも魅力につながる。

 7月10日に開催されたJTO後楽園ホール大会。メインでは稲葉ともかがMIRAIを下し、JTO GIRLS王座を初戴冠するとともに団体に取り戻した。
  稲葉とMIRAIはJTOの前身となる団体で練習生時代をともにした。稲葉はJTOでデビューし、女子部門のエース格に。MIRAIは東京女子プロレスからスターダム、マリーゴールドと移籍しながら実績をあげていった。現在は出身地の岩手県を拠点とするみちのくプロレスに所属。

 前回の対戦ではMIRAIが勝利し、稲葉としては当然、リベンジを狙いたいところだった。ただそこまでの道のりは平坦ではなかった。

 稲葉は妹の稲葉あずさとともに姉妹レスラーとして知られている。家族の中では長女で、団体の中では1期生。人一倍責任感が強く、それだけに重圧もあった。現スターダムの舞華など他団体に移籍していく選手も多かったが、稲葉は団体にとどまり、支えてきた。

 自身もスターダムにレギュラー参戦しているが、なかなかホームリングに還元できない状況。観客動員は常に悩みの種だった。その一方、活動の場を広げたMIRAIはJTO代表のTAKAみちのくとも対戦。必殺技みちのくドライバーⅡで敗れたが、TAKAがこの技を女子に使うのは初めてだったという。それ以前、舞華にはみちのくドライバーⅡを伝授している。

 ずっと団体を支えてきた稲葉だが、代表からそうした“勲章”をもらったことはない。ならば自分で奪ってやろうと思った。女子選手相手の初黒星だ。

 もちろん簡単なことではない。体格差もある上に、TAKAは厳しい姿勢で試合に臨んだ。今年2度のシングルマッチは連敗。それでも「これが最後」と臨んだ3度目の対戦で、時間切れ引き分けに持ち込む。TAKA曰く「女子に勝てなかったのは初めて」。

 JTO GIRLS王者となり、防衛を重ねるMIRAIの前に立ちながら無言で踵を返したこともある。自分が納得のいく形でなければ、MIRAIへの挑戦はできない。それが稲葉らしい生真面目さであり責任感だった。そして、引き分けとはいえTAKAと“初めて”の結果を残したことで、前に進む気持ちが固まった。
  完全に気持ちが晴れたわけではない。団体を大きくするため、自身が飛躍するため、思い悩むことは多かった。TAKAと引き分けた後も、稲葉はこんなコメントを残している。

「隣の芝生は青く見えるって言葉がありますよね。JTOでデビューできて、TAKAみちのくについてきてよかったと思うけど、モヤモヤもあります」
  7.10後楽園。TAKAは観客動員が1000人を超えなければ同会場から撤退するという方針を打ち出した。稲葉としてはさらに責任が重くなる。これまで以上のプロモーション、SNSでの発信。さらにスターダムから上谷沙弥が参戦し、飯伏プロレス研究所とJTOの対抗戦も組まれ、結果として後楽園には1182人のファンが集まった。

 これまでにない熱気の中でのメインイベント、稲葉は空手仕込みの蹴り、JTOで磨いた関節技と総力をぶつけてMIRAIを下した。団体旗揚げとともにデビューし、今大会が7周年。現時点での集大成と言ってもいい勝利だった。

 いっぱいになった客席を見て「これまで悔しかった」と稲葉は本音を漏らした。スターダムなど他団体で満員の会場を経験しているだけに、自分の団体がそうならないもどかしさをずっと感じてきたのだ。もちろん、ここで満足するわけにもいかない。

「今日これだけたくさんのお客さんが入ったのはJTOの力だけじゃない。それは分かってます。来年はJTOの力で、姉妹の力で、私の力で満員の景色が見たいです」

 ハッピーエンドの中でも課題から目を逸らさないのが稲葉ともからしい。今回の“1000人超え”について、団体の自力ではないという声がある。それは当然のことだし、選手たちも分かっていることだ。

 とはいえ、所属選手だけで興行を展開している団体はどれだけあるのか。ましてビッグマッチであれば“豪華ゲスト”で話題を作ろうとするのは普通のことだ。後楽園撤退という極端な打ち出しが反感を呼んだ可能性もあるが、ゲスト目当ての観客に所属選手の魅力をアピールすることは、団体を大きくするために必須のことではないか。

 課題があるからこそ、それをクリアしていくことがドラマになる。稲葉ともかがJTOをどう牽引していくのか。注目度が上がったここからが勝負だ。

取材・文●橋本宗洋

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配信元: THE DIGEST

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