6月30日、14年間にわたって新日本プロレスを支えた親会社・ブシロードが、全株式をテレビ朝日とサイバーエージェントに譲渡。売却は以前より計画されていたというのだが、その時期が早まった背景には、時のチャンピオンがリング内で発した禁断の言葉があった─。
事件が起きたのは2月11日、新日本プロレス大阪大会のメイン終了後のリング上だった。IWGPヘビー級王座を防衛した辻陽太(32)がマイクを握り、カードゲーム事業が中核の親会社・ブシロードに向けて、こう言い放ったのだ。
「おい、ブシロード! 俺たちレスラーはな、カードゲームのカードじゃねえんだよ。俺たちはこのリングで命をかけて戦ってるんだ!」
これを受けて、新日本のオーナーであるブシロードの木谷高明社長は当夜にXを更新し、顧客に謝罪をするに至った。
〈カードゲーム愛好家の皆様へ 本日の新日本プロレス大阪大会に於いて選手がカードゲームと言う言葉をあまり良くない例えとして使用しました。不快に思われた方もいらっしゃるかも知れません。誠に申し訳ありませんでした〉
すると、コメント欄には〈彼はカードゲームを悪い様にはいってない〉〈レスラーは、命をかけてリングで表現している人間であることを、もっと理解してほしい〉と辻を擁護する意見が殺到し、木谷社長は〈レスラーの気持ちがわかっていない〉とまで糾弾され、プライドを傷つけられた。
新日本関係者が話す。
「辻の訴えは予定調和のパフォーマンスなどではなく、本音の吐露でした。辻は木谷オーナーがとりわけプッシュしていた選手でもあり、オーナーのショックは大きかった。Ⅹの炎上も相まって、激怒していたそうです」
辻が親会社批判とも取れる“セメントマイク”を行ったのは、現状への警鐘だったという。
「ブシロードからの至上命令は『とにかく20代の若い選手を売り出して、スターにしろ』でした。ところが売り出しを急ぐあまり、辻だけでなく、成田蓮(28)、海野翔太(29)ら、キャリアや実力が足りない時期に持ち上げられても、本人たちもそれを自覚しているうえ、ファンもついてこない。タイミングを見極めず『なんでこいつら人気が出ないんだ』と、アイドルビジネスのように数年周期でスターを入れ替えるようでは、ある意味、30代になれば最前線から外されるという不文律にもなり、危機感を持っての発言でしょう」(専門誌記者)
オカダ・カズチカ(38)、内藤哲也(44)、EVIL(39)、そしてこの日ラストマッチを行った高橋ヒロム(36)ら、近年は主力選手の流出が続くという状況もあり、辻が一石を投じたのである。
トップ選手たちが退団しては若手を重用して、ベテラン選手は居場所をなくす。「取り替え可能」とも受け取れるシステムを不安に感じたようだ。
「退団したヒロムは、『36歳だからギリギリだ』とコメントしているが、それは『(メジャー団体となる)アメリカで勝負するなら』ということです。安定を求めるならば残留ですが、40になったら踏み台にされるのは目に見えています。プロレスラーの全盛期は40代前半だから、現時点での挑戦を選んだ。辻だけではなく、選手たちの中には親会社の考えに違和感を覚える向きが少なからずあったようです」(専門誌記者)

