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毒蝮三太夫“人生90歳からだろ”「卒寿のマムシ酒」〈談志ははんちくの江戸っ子?〉

毒蝮三太夫“人生90歳からだろ”「卒寿のマムシ酒」〈談志ははんちくの江戸っ子?〉

 それにしても毒蝮三太夫たぁ、談志の奴、ひどい名前をつけてくれたもんだ。

 あれから60年。今もこの名前で呼ばれてるとは、お釈迦様でも気がつくめぇ。

 俺には子役の頃から、石井伊吉という親父がつけてくれた立派な名前があるんだよ。今じゃあ、そう呼んでくれる仲間も少なくなっちまったがなぁ(笑)。

 その立川談志。世間じゃケチだケチだと言われているが、本当はそうじゃない。使う時にはパッと使うキップのいい男だった。そう前回書いたら、「冗談は、顔だけにしてくれ」なんていうツッコミが入っちまった。一体全体、談志ってのは、どんな奴なのか。今回は誰にも話してないケチにまつわる裏話を特別に披露してやろうじゃないか。親友の俺が言うんだ、間違いないぜ。うわっはっは。

 そもそも「江戸っ子」って、どんな奴のことを言うのかわかるかい。

 見栄っ張りでやせ我慢。しかも向こう見ずで喧嘩っ早いときてる。だがよ、

「江戸っ子は皐月の鯉の吹き流し 口先ばかりでハラワタはなし」

 なんて川柳もあるくらいだ。口が悪くて喧嘩っ早いが、終わったら綺麗さっぱり水に流す。それが粋な江戸っ子ってもんだ。

「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」

 とも言う。江戸っ子は稼いだお金はその日のうちに全部使っちまう。つまりめっぽう気前がいい。なんでそんなに気前がいいのかって。

 ご存知の通り江戸は火事が多い。だから財産をため込んでも一瞬にして灰燼に帰きす。つまり持ってる意味がないというわけさ。

 そしてもう一つ。もらった日当をその日のうちに使っちまえば、世の中の景気もよくなるって寸法だ。

 おっといけねぇ。噺を奴さんに戻そう。実は談志の奴は二つ目の頃から博打が強かったんだ。楽屋でチンチロリンやおいちょかぶなんぞやると、いつも負けない。しかも儲けた金を貯金に回してたんだ。

 そんな奴は、江戸っ子の風上にも置けない「はんちく」者。つまり中途半端な野郎って思うだろう。どっこい、「生き馬の目を抜く」立派な「江戸っ子」なのかもしれない。

 そういやぁ談志は、生まれも東京・文京区の小石川だったな。どちらかっていうと山手育ちといってもいい。まあ浅草の竜泉寺界隈で育った俺から見たら、お坊ちゃん育ちと言える。

 しかも奴さんは、見栄も張らなきゃ、やせ我慢もしないときてる。だから友達や弟子の結婚式にもヘアバンドにジーパン姿で行っちまうんだ。祝儀だって持って行かない時もあった。

「俺が行くのがお祝いだろ」ってんだから。後は、テレビ番組でもらった靴なんぞを後生大事に10年も20年も履いてやがるんだ。奴としては洒落のつもりなんだろうがね。こうなると野暮を通り越して、粋に見えてくるから不思議だ。

 江戸の華・火事にまつわる落語は数あるが、例えば「始末の極意」なんていう噺にケチな野郎が出てくる。前の家が火事で丸焼け。放っておいたら熾火が灰になってもったいない。そこで丁稚に、

「オキをすくってこい」

 と言いつける。ところが敵もさる者引っ搔く者。

「高い財産の木だからやれない」

 と来やがる。頭に来て、

「ウチで火事が出ても、火の粉もやらねえ」

 と、啖呵を切る。まさに談志はこの落語を地で行くような奴だったよ。

 花火や花見、水泳なんぞもめっぽう好きだったが、考えてみればどれもこれも金のかからないものばかり。まあそんなんだから食べる物にも金をかけない。アジのフライやコロッケを食パンに挟んで食べる。これが最高のご馳走なんだ。

「旨いもんは旨い」

 確かに言い得て妙なんだが、天下の立川談志だろ。もうちょっと格好つけてほしかったと思う時もあった。

 だがこうやってたんまりため込んだ銭を惜しまずに、パッ使うこともある。そのあたりの噺は次回にとっておこう。

毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)1936年生まれ。石井伊吉(本名)で「ウルトラマン」(TBS系)などに出演。「笑点」(日本テレビ系)2代目座布団運びでの出演を機に現在の芸名に改名。69年より出演を続ける「ミュージックプレゼント」(TBSラジオ)のほか、ユーチューブ「マムちゃんねる」でも現役で活動中

配信元: アサ芸プラス

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