
W杯の3位決定戦は必要なのか? なぜ切迫感に欠ける“ほぼ親善試合”がなくならないのか。もし日本が勝ち進んでいたら…【識者コラム】
ワールドカップの3位決定戦は必要か?
そんな議論が、日本国内で湧いているという。
たしかに、選手の立場に立っても微妙な試合だ。サッカーの世界では、オリンピックと違い、3位に大きな勲章は与えられない。しかも、W杯の3位は優勝を目指していたチーム同士の対戦がしばしばで、気持ちが盛り上がらないのだ。
今回、イングランド対フランスの試合も、その心理状態が透けて見えた。ノックアウトステージに入ってからの「生きるか死ぬか」の切実感はどこにもなかった。ボールホルダーに対する寄せは甘く、オープンスペースが広がり、“ゆるい”打ち合いになった。合計10得点が入ったのを面白がる人もいるだろうが、切迫感に欠け、ほとんど親善試合だった。
これまで緊張感のある試合を見てきた人たちにとって、突然、気が抜けた炭酸飲料を飲んだような甘ったるさだけが残り、「いらないんじゃないか」と思うのも仕方ないだろう。
しかし、W杯の3位決定戦がなくなることはない。
なぜならFIFAには1試合でも多く、W杯ゲームを増やしたい意向がある。放映権料や入場料収入が見込める試合をなくす理由はない。3位決定戦は有力国の勝ち上がりが予想され、もはや商業的な理由は絶対。親善試合のようなテンションであっても、W杯という舞台であることに価値があるのだ。
翻って、親善試合の内容、結果は本大会ではほとんど参考にならない。
森保ジャパンはドイツ、ブラジル、イングランドに勝利し、「W杯優勝」などという大それた夢を本気で信じてしまった。論理的に自分たちと相手を検証し、然るべき戦略を立てなかったから、“身のほども知らず”に負けた。精神性に根ざした“必勝の信念”に、何ら根拠ではなかった。自分たちの強さを最大化、相手の強さを最小化し、力尽きた。少しも“惜しかった戦い”ではない。
「W杯優勝に近づいた」
そんな意見も聞くが、敗北を検証できないから、そんな夢に縋るのだ。
結局、W杯優勝という目標が壮大すぎて、敗れた後もろくな検証もできない。選手の精神主義に頼って、過去のW杯戦士をかき集め、人的ネットワークでどうにかしようとするマネジメントは無策だった。もし気分をテコにするんだったら、長友佑都など呼ばず、最後まで遠藤航の復帰を待って、「出られなくてもメンバーのまま、一緒に戦ってくれ」と言うべきだったが...。
もし森保ジャパンが3位決定戦に勝ち進んでいたら、誰もが商業的な価値に飛びついていただろう。「こんなの要る?」と言える人がどれだけいたか。サッカービジネスは甘い蜜だ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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