つくばエクスプレスの快速で、秋葉原まで25分。流山おおたかの森駅の周辺には大型商業施設が並び、保育所や学童施設が整う。子育て世帯が暮らしやすい環境として知られるゆえんだ。2026年の「SUUMO」住みたい街ランキング首都圏版では16位、「いい部屋ネット」が実施した街の住みここちランキング千葉県版では3位に入るなど、複数の民間調査で上位に名を連ねる。
千葉県流山市は「母になるなら、流山市。」を掲げ、共働き子育て世帯を意識した情報発信と住環境整備を続けてきた。市の人口は約21万6000人まで増え、2025年度のアンケートでは「住み続けたい」と答えた市民が約93パーセントに達している。
だが、街の成功を誰より冷静に見ていたのは市長自身だった。井崎義治市長は、人気が定着するさなかに、すでに「次の問題」を口にしている。
2022年7月のタウンミーティングで、市民から「将来、多摩ニュータウンのように流山市が一斉に高齢化するのではないか」と問われた市長が説明したのは、「流山市では人口増加が約20年間にわたって分散してきたため、団地型の急激な高齢化とは状況が異なる」ということ。
そのうえで「10年から20年後には、相続などにより毎年1000戸くらいは住宅が売りに出されると想定している」との見通しを明かしている。これは流山おおたかの森だけの話ではなく、流山市全体を見据えた発言だ。
比較対象とされた多摩ニュータウンは、大規模な住宅供給と同世代の一斉入居が進んだ結果、入居開始から50年以上を経て人口減少や少子高齢化、住宅や設備の老朽化が課題となっている。
国土交通省も、同じ時期に似た世代が一斉に入居した住宅団地では、数十年後に高齢化や人口減少が急速に進みやすいと説明している。流山市は入居の時期が分散しており状況は異なるが、転入した子育て世代は年齢を重ねていく。
夜11時を過ぎると飲食店はほぼ閉店
「母になるなら、流山市。」という言葉に引かれて集まった親世代も、やがて家を手放す時期を迎える。その住宅を次の世帯が選ぶかどうかは、住みたい街ランキングでは測れない。
年間1000戸という規模の住宅が、一斉に動く時代が来る。市長は同じ席で、住環境と行政サービスのブランドを維持できれば年間1000戸を埋める需要は生まれる、とみていた。
ただし、駅周辺はチェーン店が揃う反面、個人店は少なく、夜11時を過ぎると飲食店はほぼ閉まる。子育て世帯には快適でも、子供が独立した世代や単身者には物足りなさが残る街だ。次に移り住む世代もまた、子育て世帯である保証はない。
象徴的な流山おおたかの森の、現在の人気が本物かどうか。答えが出るのは市長が語った2030年代から2040年代初め、流山の本当の世代交代が始まる時だ。
(ケン高田)

