
森保ジャパンの次を託された大岩剛監督の“最大の強み”は? パリ世代&ロス世代を率いた過去5年間から紐解く
スペインの優勝で幕を閉じた今夏のワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表はブラジルに敗れ、ラウンド32で姿を消した。
激闘を終えて間もないなか、4年後の戦いに向けて日本サッカー界は動き出している。注目を集めていた後任人事も発表され、7月23日に日本サッカー協会(JFA)は森保監督の続投発表。来年1月のアジアカップ終了まで率いるという異例の半年延長という形になった。併せてアジアカップ後の人事も示され、2028年のロサンゼルスオリンピックを目ざす大岩剛監督が五輪代表と兼任する形で就任することも決まった。
五輪世代との兼任はフィリップ・トルシエ体制(98年9月-02年7月)、森保体制(18年7月-21年7月)に続くケースとなり、スタッフの協力を仰ぎながら両チームを見ることになる。
現役時代は清水商高(現・清水桜ヶ丘)、筑波大を経て95年に名古屋へ加入した大岩監督。アーセン・ベンゲル監督のもとでSBからCBにコンバートされて頭角を現すと、2000年には日本代表で3試合に出場した。以降は磐田、鹿島でプレーし、10年に現役を退いた。翌年から鹿島で指導者の道を歩み、17年シーズンの途中からトップチームの監督に就任。18年にACLを制覇するなど、国際舞台でも結果を残して、21年からJFAに籍を置いている。
22年3月から五輪世代のチームを率い、24年夏のパリ五輪ではベスト8に進出。U-23アジアカップや五輪本戦はインターナショナルマッチウィーク外の戦いで、選手の拘束力がない。そのため、活動ごとに面子が変わり、次の遠征に誰が参加できるか見通せないなかでも言い訳をせず、「招集出来るメンバーが日本代表」という言葉を用いて現状の中で最適解を探ってきた。
戦術も一貫しており、システムは4−3−3がベース。守備面では前線からのハイプレスとミドルプレスを使い分け、最終ラインにはスピードがある選手を配置する傾向が強い。一方で攻撃面は個々のアイデアを大事にしつつ、セットプレーの強化にも励んできた。短期間で落とし込めるようにシンプルかつ簡潔なやり方を徹底しており、代表を率いるうえでの方法論も熟知しているのもプラスだろう。
そうした大岩監督の特徴はほかにもあるのだが、一番の強みはチームビルディングにある。性格は真面目でブレない。喜怒哀楽を表立って表す場面はなく、どんな時も冷静沈着。ポーカーフェイスを貫き、報道陣に対しても隙を見せない。一方で人情味あふれる一面を持っており、コミュニケーションと輪を大事にする監督でもある。
我々の前では凛とした姿で付け込ませないのだが、選手一人ひとりに対しては対話を重視する。印象深いのは23年9月のU-23アジアカップ予選だ。バーレーンで開催されたなかで気温は45度前後で酷暑の環境。海外組の選手は軒並みコンディションが上がらず、当時ベルギーのシント=トロイデンに移籍したばかりだったMF山本理仁(現フライブルク)もその一人だった。
チームは2勝1分の首位で予選突破を決めたが、バーレーンとの最終戦はスコアレスドロー。試合後、自身の出来に納得できなかった山本はチームの輪から外れて涙をピッチ上で流していた。その様子を見た大岩監督は駆け寄り、熱のこもった言葉で諭す。肩を抱き寄せながら副キャプテンを務めていた山本に言葉をかけた。
同じような場面はほかにもあり、ロス世代でも同様に昨年9月のU-23アジアカップ予選でFW後藤啓介(フライブルク)、FW塩貝健人(ヴォルフスブルク)に対して1対1で話す場面があった。
ロス五輪のエース候補として初招集を受けたふたりだったが、長距離フライトを経てミャンマー入りした影響でコンディション調整に苦戦。パフォーマンスが上がらず、先発起用は第2戦だけとなった。そうした状況下で先発起用を見送ることを説明すべく、第2戦と第3戦の間に青空ミーティングを実施。「状況などをしっかり説明されて、モヤモヤした気持ちはなくなった」と後藤も話したように、現状を説明しながら次にどうすべきかを伝えるコミュニケーション能力はA代表でも活きるはずだろう。
一方で“輪”を重視するタイプでもあり、規律を乱した選手を一定期間招集しないケースもあった。とある選手がミーティングで2度目となる遅刻した際は半年ほど代表に呼ばないなど、飴と鞭を使い分ける。もちろん、選手に対して愛情があるからこそ、厳しくもできるのだが、主力級の選手であっても特別扱いをしないため、そうしたドライに振る舞える点もA代表向きと言えるかもしれない。
現状ではコーチングスタッフも決まっておらず、1月以降の予定もまだ定まっていない。兼務という任務は一筋縄ではないが、どのようにチームをまとめていくのか。今後のA代表は世代交代も進めていかないといけない。パリ世代やロス世代で関わった選手をA代表に引き上げるミッションも含め、大岩新監督の手腕に注目したい。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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