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タカの母親が「カモの卵を育てる」事例を発見、しかし恐るべき結末が…

タカの母親が「カモの卵を育てる」事例を発見、しかし恐るべき結末が…

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

鳥の世界では、自分の産んだ卵を別種の鳥の巣にひそませて、代わりに育てさせる「托卵(たくらん)」という習性があります。

しかしこのほど、南アフリカであまりにも大胆すぎる托卵が行われました。

カモ科の「エジプトガン」のメスが、自らの卵2個を大型猛禽類である「カンムリクマタカ」の巣に托卵したのです。

そして、カンムリクマタカの母親もそれと気付かずに卵を育て続けましたが…

最後に待っていたのは、恐るべき悲劇だったのです。

研究の詳細は、オーストリア・ウィーン大学(University of Vienna)により、2026年4月15日付で学術誌『Journal of Raptor Research』に掲載されています。

目次

  • カンムリクマタカが他種の卵を育てる「初の事例」か
  • 待ち受けていたのは、恐るべき悲劇…

カンムリクマタカが他種の卵を育てる「初の事例」か

エジプトガン/ Credit: ja.wikipedia

舞台となったのは、南アフリカのダーバン北東部にあるジンバリ・エステートです。

ここではカンムリクマタカの繁殖行動を調べるため、地上約30メートルにある巣が遠隔カメラで観察されていました。

2025年7月、カンムリクマタカのつがいは巣材を運び、交尾を行うなど、繁殖の準備を進めていました。

ところがタカたちが巣を離れた隙に、エジプトガンが入り込み、2個の卵をタカの巣に産んだのです。

カンムリクマタカ/ Credit: ja.wikipedia

その後、巣へ戻ったメスのカンムリクマタカは卵を排除せず、自分が産んだ1個を加えた計3個を温め始めました。

これはカンムリクマタカで初めて確実に記録された、別種の卵を含む「異種混合卵群」の事例だと考えられています。

エジプトガンは必ずしも自分で巣を作らず、木の空洞や他の鳥の古巣を利用します。

ときには使用中の巣を強引に奪う「巣の乗っ取り」も行います。

今回もガンのつがいは近くに残り、タカが2羽とも不在になると巣へ戻りましたが、タカが帰ってくるとすぐに退避していました。

【カンムリクマタカがエジプトガンの卵を育てている実際の画像がこちら】

そのため、カッコウのように最初から育児を他種へ任せる典型的な托卵というより、巣を奪おうとした結果、タカがガンの卵まで抱く状況になったとみられます。

8月末になると、エジプトガンの卵は2個とも無事に孵化しました。

さらに、母タカはエジプトガンのヒナを自分の体の下に入れて温め、肉の餌を差し出したのです。

ところが、カンムリクマタカのヒナが巣で親から肉をもらって育つのに対し、エジプトガンは孵化直後から歩き、自分で食べ物を探す早成性の鳥です。

そのため、ガンのヒナたちは母ワシが差し出す肉を食べませんでした。

その中で、カンムリクマタカの母は異変に気づき始めました。

待ち受けていたのは、恐るべき悲劇…

先に孵化したエジプトガンのヒナの1羽は、誕生から約2日後、巣の縁へ歩いていき、そのまま約30メートル下へ飛び降りました。

高い場所で孵化したカモ科のヒナが地上へ飛び降りること自体は、本来の離巣行動として不自然ではありません。

ただし今回、その後に実の親と合流できたのか、無事に育ったのかは確認できませんでした。

さらに、もう1羽のヒナそのままは巣に残り、次第に活発に歩き回るようになりました。

母タカはそのたびに、ヒナを自分の腹の下へ戻そうとしました。

ここまでは、異種のヒナを自分の子として世話しているように見えます。

ところが、ガンのヒナが母タカの背中によじ登った後、行動は一変しました。

母タカはひなをくちばしで捕らえ、そのまま殺して食べてしまったのです。

背中に登ったことが攻撃の直接的な原因だったと証明されたわけではありません。

それでも、それまでの抱雛行動から捕食行動へ突然切り替わる瞬間が映像に残されたことは、親鳥による異種のひなの認識がどのように変化するのかを考えるうえで非常に興味深い記録です。

【エジプトガンのヒナが母タカの背中に乗ろうとした際の画像がこちら】

さらに、巣に残されていたカンムリクマタカ自身の卵は、残念ながら孵化しませんでした。

後に卵殻は割れましたが、中にヒナの姿は確認されず、この繁殖ではタカ自身の子も育たなかったのです。

今回の結末は、1羽が巣から飛び降り、1羽が捕食され、タカの卵も孵化しないという、すべての鳥にとって厳しいものとなりました。

しかし、この事例の意味は珍しい動物行動だけにとどまりません。

エジプトガンが外来種として定着した地域では、在来の猛禽類と営巣場所をめぐって競争することがあります。

異種の卵を見分けて排除できない猛禽類では、抱卵や子育てに時間を費やした末に繁殖へ失敗する可能性もあります。

ただし今回の研究は、1つの巣で起きた単一事例の報告です。

カンムリクマタカが常に他種の卵を受け入れると一般化することはできません。

それでも、巨大な鉤爪を持つ捕食者が小さなガンのヒナを一時は温かく抱き、やがて獲物として食べてしまった記録は、子育て行動と捕食行動の境界が、私たちの想像以上に不安定であることを物語っています。

参考文献

Eagle Unknowingly Incubates Goose Eggs Alongside Her Own In An “Extraordinary Case Of Nest Usurpation”. A Parent Trap That Had Mixed Results
https://www.iflscience.com/eagle-unknowingly-incubates-goose-eggs-alongside-her-own-in-an-extraordinary-case-of-nest-usurpation-a-parent-trap-that-had-mixed-results-84213

Forest eagle finds goose eggs in nest. What happens next is staggering
https://www.discoverwildlife.com/animal-facts/birds/eagle-incubates-goose-eggs

元論文

Extraordinary Case of Nest Usurpation and Mixed Clutch: Crowned Eagle Incubates Two Egyptian Goose Eggs Plus its Own
https://doi.org/10.3356/jrr2577

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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