7月26日(日)、東京国際フォーラムにて「レバテックIT転職フェア」が開催された。本イベントは、IT人材不足の深刻化を受け、企業とエンジニアの出会いの場を提供するイベントである。昨今の生成AIの普及に伴うキャリア観の変化を背景に、会場内では「生成AI時代のキャリア形成」をテーマとした特別講演も行われた。本稿では、活気あふれる会場の様子とともに、二人の有識者が語ったエンジニアの生存戦略について報告する。

会場となった東京国際フォーラムには数多くの注目企業がブースを連ね、朝から多くの来場者が詰めかけた。オンライン採用も増えている昨今、直接対面で企業の雰囲気や価値観を確かめ合えるリアルな場の重要性は高まっている。各ブースでは担当者の説明に真剣に耳を傾けるエンジニアの姿が目立ち、キャリア相談ブースでは自身の市場価値や今後のキャリアパスについて助言を求める人々が集まった。
また、会場内の特設ステージで行われた特別講演では多くの来場者が熱心に耳を傾けていた。生成AIという大きな技術変革の中で、いかに自身の価値を維持し発展させるかという課題に対し、エンジニアが高い関心を寄せていることがうかがえた。

株式会社サードスコープ取締役COOの伊東和成氏は、「生成AI時代のキャリア戦略」と題した講演で、AIが業務の前提となる時代にエンジニアの役割がどう再定義されるかを説いた。

伊東氏はまず、新たに生まれているポジションを提示した。RAG構築やエージェント設計を主導する「AIエンジニア」、AIの品質評価を担う「AIOps」に加え、特に注目すべきとして「FDE(Forward Deployed Engineer)」を挙げた。FDEとは、顧客の現場に入り込み、課題発見から実装・定着までを一気通貫でやり切るエンジニアを指す。生成AIによってプロトタイプの試作が高速化したことで、PoC止まりを防ぎ、本番導入まで迅速に伴走することが可能になったという。

伊東氏は評価される条件として「AI前提の生産性」「抽象度の高い仕事への移行」「技術×何か(業界知識等)の掛け算による希少性」の三点を提唱し、未経験であってもこの「掛け算」を提示できる人材には大きな参入余地があることを強調した。

続いて、AtCoder株式会社代表取締役社長の高橋直大氏は、「生成AI時代を生き抜くエンジニアの条件」について講演した。高橋氏は、AIがコードを書けるようになった今、強いエンジニアの定義は変わっていないものの、働き方には変化が必要だと語った。今後のエンジニアに必要なスキルとして定義したのは三点である。

一つ目は、問題の本質を理解し論理的に解決する「問題解決力」。二つ目は、AIを味方につけ自身の市場価値を高める「AI活用力」。そして三つ目が「マネージャ的なスキル」と表現された「タスクを委任する力・非同期で働く力」である。
高橋氏は「もともと社長として非同期に働いていたが、エンジニアも同様の力が必要になった」と述べ、自身が講演中にリモートでAIに10個のタスクを並列処理させている実例を紹介。「どの部分をAIに任せ、どの部分を自分が担うか」を判断する並列処理能力が、今後の生産性に直結すると説いた。

今回のフェアを通じて示されたのは、生成AIはエンジニアを淘汰するものではなく、その役割をより高度な「設計と判断」の領域へと拡張させるパートナーであるという視点だ。来場したエンジニアは、企業のリアルな情報に触れるとともに、二つの講演からは、「単なる実装者から、技術と成果をつなぐ設計者・マネジメント層へのシフト」という一つの方向性が浮かび上がった。技術環境の変化に即応し、自らの役割を柔軟に更新し続ける姿勢こそが、これからのIT業界で生き残るための最低条件となるだろう。

