アクション俳優として20代、30代を駆け抜け、今でも驚きの身体能力を見せつけるケイン・コスギさん。だが、歳を重ねるうちに身体との向き合い方は大きく変わったという。筋肉を鍛え続ける一方で、年齢を重ねた今だからこそ見えてきた「肉体と精神の鍛え方」について話を聞いた。
リビングは“筋トレ部屋”から“リハビリセンター”へ
――弟のシェイン・コスギさんが監督を務めた映画『四十九-SEEK』について、ご出演に至った経緯を聞かせてください。
ケイン・コスギ(以下、同) 弟からこの作品で映画監督をやると連絡をもらったとき、真っ先に「絶対に出たい!」という気持ちが込み上げました。しかしそこは兄として「裏方でもいいから、手伝えることがあったらなんでも言って」とだけ伝えて。その後、悪役としてオファーがあり、喜んで受けました。
演じる役に関して弟に言われたのは「あまり感情を表に出さないタイプ」ということ。侍ではないですけど、口数も少なく冷静沈着なキャラクター。その分、動く場面ではその凶暴さや暴力性を表現するように心がけました。
――ケインさんが思う見どころは?
僕が出ているシーンではないですが、終盤で5分間、長回しのアクションシーンがあります。そんなアクション撮影の経験は僕自身もありませんし、他のアクション映画と比べてもかなり見ごたえがあると思います。
実は作品の中で兄弟喧嘩もしていて(笑)。僕がバーテンダー役を殴りつけるシーンがあるのですが、それは僕の演じるキャラクターの凶暴性が露出する重要なシーンでもあります。本来はスタントマンを用意していたんですが、時間もかかるし「やっちゃおう」ということで、弟のシェインが殴られる役をやっています。振り返ると30数年ぶりの兄弟喧嘩でした(笑)。
――ケインさんご自身は、今回の撮影で体力の衰えを感じられるところはありましたか?
現在も毎日欠かさず、トレーニングを続けていますが、20代、30代の頃のようにいきなり激しいトレーニングはできなくなりました。始める前には入念にウォームアップをして、トレーニング後もしっかりケアしないと、翌日に響きますから。
あとは食事も変わってきました。昔はハンバーガーだろうがなんだろうが、食べても太らずにいられたけど、今はそうはいかない。栄養面にも気をつけていますし、常にOura Ring(オーラリング)というスマートリングで心拍数や睡眠の質などもチェックしながら、運動、食事、睡眠の3つのバランスを今まで以上に意識しています。
――やはり徹底されているんですね。
振り返ると若い頃は自分のリビングにはバーベルやダンベル、レッグプレスなど、なんというかマッチョなマシンが多く置かれていましたけど、今はストレッチ用のマットやローラー、筋膜リリースのための器具など、ケアや回復のためのものが多く、リハビリセンターのような状態です。
ジムでのワークアウトとランニング、そしてケアも欠かさずやりながら、50代の僕が今、目指すのは、怪我をしにくい体づくり。もちろんかっこいいアクションをやりたいですし、『SASUKE』に出るなら素晴らしい記録も出したい。だからこそ今はケアを大切にしています。
“一日中ゲームをしているお父さん”で終わりたくない
――今も変わらないエネルギッシュなケインさんですね。人生観の変化について教えてください。
20代の頃は自分の夢や目標のためにひたすら頑張るだけでしたが、家族ができた今はそれも少し変わってきました。過去には結果を重視していたので、自分がベストな状態でないときは挑戦しないという選択肢もありました。でも今、7歳の娘がいるんですが、子どもが生まれてからは何事にも頑張る姿を見せたいと思っています。
僕は趣味がゲームで、普段ゲーム配信をしています。ある日、娘が学校で「お父さんは何をしているの?」と聞かれて「一日中、ゲームをしている人」と言ったことがあって(笑)。娘の友達にもそう思われたくない気持ちがあって。結果だけではなくて、頑張っているプロセスを見せたいという気持ちが今は強いです。
――どのようにモチベーションを維持されていますか?
僕はいつも目標を作るタイプです。僕は6歳の頃からアクション俳優になりたいという夢があって、それに向かって頑張ってきました。ずっと変わらないのは、いろいろな映画やアクション映画に出て、お客さんに「あのアクション、かっこいいな!」と思ってもらえる作品をやりたいということです。
しかしそれだけでは、日々の地道なトレーニングやジム通いは続けられない。だからこそ「昨日より◯◯ができるようになるぞ」「今年中にこの数字はクリアするぞ」といった、頑張ればすぐに達成できそうな“小さな目標”を細かく設定することですね。
僕はそれをスマホに記録しています。やりたくないと思った日でも目標を達成できた時だけ星印をつける。そうやって自分の頑張りを記録することで、ゲーム感覚で続けられています。無理をせずに続けていけば、年齢を重ねても体力を維持できるし、逆にスタミナをつけることもできる。やっぱり地道に続けることですね。
――最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
僕もさすがに心身ともに20代の頃とは違います。しかし人生経験を積む中で悔しさをばねにする方法や、寝ることでネガティブな思考を抑える方法、また家族との時間がどれだけ自分をハッピーにしてくれるかを知りました。
あとは、好きだったことをやる大切さも実感していて。ゲームをしたり映画を見たり、そんなことだって全然いい。その中で肉体管理は無理をせず続けること。少しずつでも続けていれば、ちゃんと前に進めるし、体も心も変わっていきます。
50代に突入した今思うのは、変わるために特別なことをする必要はないということです。小さな目標を持ち、自分のペースで続けていく。その積み重ねが、自分らしく進化し続けることにつながると思います。
写真/関竜太 取材・文/松倉和華子
ヘアメイク/さとう夏海

