第2シーズンが7月26日にスタートし、いきなり18.8%という高視聴率(世帯平均)を叩き出した、TBS日曜劇場「VIVANT」放送から2日後、閣議後の会見で記者から「自衛隊内に『別班』はあるのか」と質問された小泉進次郎防衛大臣は、
「これまで存在しておらず、現在も存在していません」
と完全否定。しかし最後に残した「ドラマは好きですけどね」というひと言に、TBS関係者からは「おかげで番組の宣伝効果が最高潮にまで押し上げられた」と歓喜の声が上がったという。
むろん、仮に現実の自衛隊内に、ドラマで描かれるような非公然の秘密情報部隊や、それに準ずる組織が実在していたとしても、現職の防衛大臣が記者会見で「はい、実は裏でコソコソやってます」と認めるはずはない。当然のことながら、安全保障や諜報活動のイロハのイ。非公然部隊の存在を自国政府が公に認めることは国家機密の漏洩と同義で、外交的・組織的自殺行為である。
政治部記者が言う。
「イギリスの『MI6』や米国の『CIA』のように、主要先進国には国家直属の本格的な人的情報収集(HUMINT)機関が堂々と存在します。一方、日本は憲法の制約やスパイ防止法すらない法制不備の中で、長年にわたり独自のインテリジェンス活動において、いわば丸腰に近い状態を強いられてきた。小泉氏は会見の中で『諜報・情報を専門とする部隊などの人的情報収集能力の強化は、防衛省を含む政府全体の課題である』と言及していますが、この言葉には法の網の目をくぐりながら情報をかき集めなければならない、日本の現状が抱える悲痛なジレンマが透けて見えますね」
「見えざる盾=別班」がまことしやかに囁かれる理由
今この瞬間も、世界ではテロやキナ臭い情報戦が繰り広げられるている。だが「平和ボケ」と揶揄される日本では不思議なことに、過激なテロ行為が発生していない。これは日本がターゲットになっていないだけなのか、あるいは水面下で国家を守る、なんらかの特殊な組織がそれを未然に防いでいるのか…。これが「見えざる盾=別班」といった存在が、まことしやかに囁かれ続ける理由のようだ。
「別班は存在しない。だが、ドラマは好きだ」
その絶妙な切り返しで、記者たちの笑いを誘った小泉氏。スパイ防止法がない我が国が抱える「法制のジレンマ」の裏側で、日本の安全保障をめぐる現実とフィクションの境界線は曖昧なまま、静かに、そしてスリリングに動き続けているようである。
(灯倫太郎)

