復旧の途上にあった熊本城が、再び大きな地震に襲われた。
7月28日午後4時27分、熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の「令和8年熊本地震」は、宇城市と氷川町で最大震度7を観測した。
嘉島町のイオンモール熊本では地震後に爆発が起き、八代市の日本製紙八代工場では煙突が折れて建物が損壊。県内各地で道路や橋、住宅に甚大な被害が出て、救助活動が続いている。
震度5強を記録した熊本城では、少なくとも石垣28カ所が崩落し、天守閣など3カ所で損傷が確認された。来場者や職員にケガはなかったものの、安全確認のため、当面の休園が決まっている。
熊本城は2016年の熊本地震でも、国指定重要文化財13棟すべてと再建・復元建造物20棟が被災。石垣は全体の約3割にあたる2万3600平方メートルで崩落や膨らみ、緩みが生じた。天守閣は2021年に復旧したが、城全体の工事完了は2052年度の予定だった。
なぜ城を直すのに、ここまでの時間が必要なのか。
文化財建築に詳しい建築関係者が語る。
「熊本城の石垣は、崩れた場所を新しい石で埋めれば終わるコンクリート構造物ではありません。石そのものが歴史資料ですから、ひとつずつ回収して番号を振り、写真や測量データと照合し、可能な限り元の位置へ戻すのです。崩れていなくても内部が緩んだ石垣は一度解体し、古い石積みの技法を調べながら積み直す必要がある。いわば巨大な立体パズルを、文化財としての価値を壊さずに組み直すという膨大な作業なんです」
考古学や文化財専門家の調査や文化庁との協議、そして熟練石工の確保も…
2016年の地震では973面ある石垣のうち、517面に被害を確認。櫓や門の多くが石垣の上に立っていることから、今回の被災でさらに時間が必要となる。
建築関係者が続けて展望を明かす。
「まず石垣を直さなければ、その上の建物には着手できません。城内は工事車両の通路や石材の保管場所が限られ、何十カ所も同時には進められない。考古学や文化財の専門家による調査、文化庁との協議、熟練した石工の確保も必要ですね」
今回の地震では修復済みの場所も含めて城全域を再点検し、新たな崩落や内部の緩みを調べ直すことになる。
「被害の全容次第では、2052年度という工程そのものを組み替える可能性があります」(前出・建築関係者)
城を直すのは途方もない営みなのである。
(川瀬大輔)
1977年生まれ。国内外のビジネス、スポーツ、政治、社会問題を取材するフリー記者。

