
昌平、神村学園、前橋育英などプレミア勢が早期敗退。4強入りは大津のみ…近年稀に見る大混戦を生んだ背景、“絶対的優勝候補の予選敗退”と戦力の拮抗【総体】
夏の日本一を決める全国高校総体はベスト4が出揃った。しかし、例年とは異なる様相を呈している。
7月25日から福島県のJヴィレッジなどで熱戦が繰り広げられ、Jヴィレッジスタジアムで行なわれる31日の準決勝は第1試合で静岡学園(静岡)と大津(熊本)、第2試合で滝川二(兵庫)と近大附(大阪)が顔を合わせる。
勝ち上がってきた4チームはそれぞれが勝負強く、近大附と静岡学園は準々決勝で後半アディショナルタイムの劇的なゴールで勝ち抜けを決めた。滝川二もPK戦をものにして準決勝に進出。大津も3回戦では、後半アディショナルタイムに同点とされながらも、ラストプレーで得たPKを決めてしぶとく勝ち上がった。
高校サッカーらしいタフなゲームが続く今大会だが、準決勝の顔触れを見てみると、2種年代最高峰のU-18高円宮杯プレミアリーグ勢でベスト4に残ったのは大津だけ。滝川二はプリンスリーグ関西2部所属、近大附は大阪府リーグ1部に席を置き、昨年度までプレミアリーグを戦っていた静岡学園は、プリンスリーグ東海で1年での復帰を目ざして戦っている。
もっと言えば、準々決勝の勝ち上がりを見てもプレミア勢は大津のみ。優勝候補の一角と見られていたプレミア勢の昌平(対近大附/1−2)、神村学園(対桐光学園/1−1、4PK5)は3回戦で姿を消し、前橋育英(対滝川二/1−3)と青森山田(対山梨学院/1−2)は2回戦、東山(対青森山田/0−1)と米子北(対日章学園/1−2)は初戦で敗退した。
昨季は、ベスト8にプレミアリーグ勢が5チーム(流経大柏、昌平、大津、神村学園、帝京長岡)、準決勝にも3チーム(流経大柏、神村学園、大津)が進出。そうした昨夏の戦いを考えると、今大会は下馬評やリーグカテゴリーを覆す結果となっている。
では、なぜこうした事象が起こっているのだろうか。
まず1つ目がプレミアリーグEASTで首位を走る流経大柏が県予選決勝で敗退したからだろう。今季においてプレミア勢の高体連で最も力がある千葉の雄は、選手層も他の追随を許さない。プロ注目のU-18日本代表CBメンディー・サイモン友(3年)を筆頭にタレントを擁し、強度の高い守備と圧倒的な攻撃力を考えれば、出場していれば間違いなく絶対的な優勝候補だった。
しかし、県予選決勝で市立船橋に敗北。今季の市立船橋は守備が良く、前線にスピードがある選手が多い点を考えれば、敗れたこと自体は不思議ではないのだが、流経大柏の敗退は今夏の優勝戦線に大きな影響を与えたのは間違いない。また、同じくプレミア勢の帝京長岡も県予選決勝で新潟明訓に敗れており、そうした予選の結果が今大会の行方を大きく左右したと言える。
そして、2つ目は全体的な戦力が拮抗している点が今大会の勝ち上がりに大きな影響を及ぼしている。昨季はプレミア勢とそれ以外で力の差があった。しかし、今季は圧倒的な戦力と個の力を持っているチームは前述で触れたように流経大柏だけで、それ以外のプレミア勢とプリンスリーグや県リーグ勢の差は昨季ほどない。
プレミア勢もメンバー構成に頭を悩ませ、試合毎にメンバーを変えるケースもある。下級生が主力になる場合も多く、昌平のFW立野京弥(2年)、DF笠原慶多(2年)、オツコロ海桜(1年)といった世代別代表歴がある選手はまだ下級生。そのほかのチームも3年生が主力を張っていたとしても、代表でプレーした経験を持つ選手はどのチームも少ない。力の差が小さくなった結果、滝川二や近大附といった伏兵が一戦ごとに力をつけてベスト4まで勝ち上がってきた。
滝川二はボール奪取能力と運動量に長けたMF宮本蒼大(3年)が中盤を引き締め、右サイドの北村勇貴(3年)、左サイドの奥村翼(3年)、2トップのFW波多野蒼大(3年)、FW本城圭太(3年)が奏でる攻撃はスピーディーかつパワフルで面白い。
近大附は2年生CBで186センチの高さとスピードが魅力の清水彦、184センチのストライカーFW久下彬(3年)、左利きの司令塔・MF中澄恵大(2年)といった個性的なタレントを中心に、チームがよくまとまっている。決して勝ち上がってきたのはフロックではなく、「真夏の大冒険」(近大附・寺師悠斗監督)を経てチーム力が上がってきたからだろう。
もちろん、伝統校でテクニカルな選手が揃う静岡学園や、昨夏は決勝で神村学園に敗れて準優勝に終わった大津もタレントが揃う。
いずれにせよ、どこが優勝しても初となる。新たな景色を見る権利を得たチーム同士の戦いから明日以降も目が離せない。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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