最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
映画『インビジブルハーフ』西山将貴監督インタビュー「生まれながらに決められたもので、自分の運命が左右されてしまう葛藤を描く」

映画『インビジブルハーフ』西山将貴監督インタビュー「生まれながらに決められたもので、自分の運命が左右されてしまう葛藤を描く」

27歳の新鋭、西山将貴監督が放つ長編デビュー作、映画『インビジブルハーフ』が7月31日より公開となります。

【STORY】 クラスメイトがいなくなった夜、“その見えない怪物” は現れた ミックスルーツを持つ高校生・エレナ。見た目や名前で「外国人」扱いされ、転校先のクラスにも馴染めずにいた。 そんな彼女の前に、ある日突然現れたのは——“スマホに触れている時だけ見える透明な怪物”。 唯一エレナを信じてくれたアカリとともに、正体不明の恐怖に立ち向かうが… この恐怖に向き合うのは、きっと一人じゃない。

「ニュージャンルが登場した!」「思春期の痛みとホラー世界の融合が新しい」など、そのオリジナリティを評価する声が続々と届いている本作。西山監督に作品へのこだわりについて伺いました。

──本作とても楽しく拝見いたしました。制作には長い時間をかけられたそうですね。プロット自体は変わらずに作り続けていたのでしょうか。

19歳から25歳までの6年間で制作したのですが、最初の段階から変わらずに決まっていたことが多いです。2021年に脚本を書いたのですが、当時の脚本を読むと今の完成稿とほぼ同じなんです。ヴィジュアルについても「こういう画を撮りたい」というのも、そのまま踏襲されているので、本当にその時に撮りたいものを完成することが出来て良かったなと思います。

僕が学生時代を過ごしていた頃って、スマートフォンやSNSがどんどん普及して当たり前になっていく特殊な期間だったなと思っていて。最初はSNSのアカウントを持つなんて一部の人、という雰囲気だったのが、高校を卒業する頃には全員がインスタをやっている。そんなSNSの変遷をリアルタイムに経験したことで、感じること・考えることがたくさんありました。

スマートフォンとテクノロジーって、人と人とが繋がるための道具として開発されたのに普及するにつれて、人を攻撃したりとか、人同士を遠ざけたりするものに使われていくことになって。当時の僕は「繋がるためのもので人を遠ざけていく」ということがすごく怖いなと思ったんですね。そこで、SNS、スマホ中毒を比喩したような、ちょっとテクノロジーとホラーを結びつけたお話を作りたいなと考え、そこから6年経ったという感じです。19歳の自分のアイデアを信じて脚本を書き、21歳の自分を信じて撮影に挑み、23歳の自分を信じて編集をして、完成したのは25歳だったという感じです。

──素晴らしいですね。6年間の西山監督が一緒に作品作りをしているという感じがします。

映画に限らず作品作りをしていく中で締切りって絶対にあるものですが、本作に関してはプロデューサーの坂本篤さんから「締切りは無いです。西山さんが終わりと言ったら終わりです」と言われていました。そんな風に映画を作れることって今後二度と無いだろうなと思って、自分の感性みたいなものをとりあえず信じてやってみようと。
高校生時代から一緒に映画を作ってきたVFX のCao Moji、音楽の堀本陸さんもこの映画にかける想いが強くて、みんながやりたいということをやりきってから終わりにしようと思っていたので、僕だけでは無く全員の集大成的な作品になっています。

──先ほど「繋がるためのもので人を遠ざけていく」というお話が出ましたが、意地悪なクラスメイトがエレナのことを「外人」と言うじゃないですか。あの、あまりにも自然に差別をしているトーンはクリーチャー以上に怖さを感じました。

そう感じていただけて嬉しいです。僕自身はいわゆるミックス当事者では無いのですが、そういった人の恐ろしさについて考えることがありました。

僕は海外の映画祭では評価をいただけるけれど、日本の映画祭は全然通らないという時期が長くて、それならば、と半年ほどイギリスにいました。そこで1本映画を撮ったのですが、それも違うなと感じていて。自分がイギリスにバックグラウンドが無いのにそこで作品作りをしても本質的なものにはならないからやはり日本に帰ろうと。そんなどっちつかずな時期に、学生時代のミックスルーツの知り合いを思い出して。
彼女はとても明るくてみんなの人気者、憧れの存在だったのですが、ある時彼女が「日本と海外、地元が2つあっていいね」といったことを言われた時に、「いや、なんかどっちにも居場所が無い気がする」と返していて、その時の表情が忘れられなくて。
僕も映画作りに関してどっちつかずな葛藤を抱えていたので、その時の彼女の表情と自分の気持ちが重ね合わさって、ミックスルーツをテーマにした作品と撮ろうと考えました。

そこから色々な本を読んだり、ミックスルーツの歴史について学び、まさに「無意識な差別」ということを書きたかったのです。今「外人という言葉が嫌だな」と感じたとおっしゃってくださいましたが、それは「外人」という言い方に差別的な要素を感じているからだと思います。ところが、それについて何も思わない人もいる と思うんですね。自分がどういうリテラシーでこの問題と向き合っているかによって作品への感じ方が変わってくる。名前とか人種とか、生まれながらに決められたもので、自分の運命が左右されてしまう葛藤を描こうと。それで人生が崩壊してしまうということは、何よりも怖い、ホラーだなと。

──幅広い世代の方の感想を聞きたい作品だなと思いますし、10代の方は特に自分ごととしてとらえるのではないかなと思いました。

学校で上映していただくと、信じられないくらい熱いフィードバックをいただくことがあって、ありがたいです。僕は今27歳ですが、脚本を書いていた時は21歳だったので、高校生、大学生の皆さんと近い視点で表現出来ていたのかもしれないなと思います。

──これまでの映画に無かった様な面白いルックやシーンがたくさんありました。

ありがとうございます、嬉しいです。僕がホラー作品を作る時に大切にしていることは、文字にすると一見バカっぽく思えることを全力でやる、ということです。僕が好きな洋画のホラーって文字にするとバカっぽいんですよね。それをめちゃくちゃリッチな映像表現や演出で怖くしたり、驚かせたりしている。そういう作品にリスペクトがあります。一見笑えそうなことも本気でやりきって怖くしようと。

──確かに「スマホのイヤフォンで首が締まる」と文字にすると突拍子がないかもしれないけれど、映像になった時にすごく怖いですよね。

脚本の段階ではほとんど全員に心配されていました。「大丈夫?成立する?」って。そこに限らず、クリーチャーの表現も含めて心配されることが多かったです(笑)。でも完成した作品を観て「西山さんのやりたいことが分かりました」と言ってくれたので安心しました。あまりホラー作品で観ないシーンを入れることで、どういう気持ちになるんだろう?と自分でも知りたかったので、たくさん挑戦が出来たなと思います。

──全体的なトーンというか色味も素敵ですね。

グレーティングで色味は作っているのですが、事前にその色を想定した照明、美術、空間選びをしています。

僕の1つ前の作品、縦型短編映画「スマホラー!」でも同じ様な色調を使っているのですが、その作品を国内外の映画祭に出品した際、海外の映画祭で1番評価が高かったのが、幽霊らしきものが出てくるシーンでの青い光の差し込みだったんです。「その色味が美しくて切なくて怖かった」という感想を多く聞くことが出来ました。それまで自分の作風やテイストということについて考えたことが無かったのですが、自分はただ露悪的に怖いことをやるよりも切なさや悲しさを一緒に描きたいんだということに気付きました。

──ロケ地も本当に素晴らしかったですね。愛媛ロケということですが、この場所に行ってみたくなりました。

地元なので、そう言っていただけてとても嬉しいです。地元の方が見ても「よくこの場所をこういう使い方したな」と思ってもらえるような場所を選んでいます。愛媛県の支援をいただいている作品ですが、いわゆるご当地映画を作っているわけではないので、よく許可してくださったなと驚くことも多かったです。エレナの通っている学校は、松山東雲中学・高等学校という実在する学校で、制服もそのまま使っています。ホラー作品だからということで敬遠するのでは無く、「愛媛出身で映画作りを頑張っている人がいるなら全力でサポートしたい」とたくさん協力してくださいました。完成した作品もすごく気に入ってくれて。そういった、ロケ地や愛媛の景色についても楽しんでいただけたら嬉しいです。

──今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!

(C) 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.

配信元: ガジェット通信

あなたにおすすめ