
人生の意味は、持っていても探していても、心を支えてくれるものだと思われがちです。
ところが今回の研究では、人生にすでに意味を感じている人ほど燃え尽きが低かった一方、意味を探し続けている人ほど燃え尽きが高いという、正反対の傾向が見つかりました。
英国ブリストル大学(University of Bristol)の研究チームによる成果は、2026年7月8日付で『Journal of Health Psychology』にオンライン掲載されました。
目次
- 人生の意味を「感じること」と「探すこと」は別の心理状態
- 人生の意味を感じられないまま探す人ほど、仕事への冷めた感覚が強かった
人生の意味を「感じること」と「探すこと」は別の心理状態
燃え尽きは、長く続く仕事上のストレスによって生じることがあります。
今回の研究では、心身のエネルギーを使い果たす「感情的消耗」、仕事に冷めて距離を置く「シニシズム」、自分は仕事で十分に役に立てていないと感じる「達成感の低下」の3側面から燃え尽きを捉えました。
同じように負担の大きい仕事をしていても、誰もが同じように燃え尽きるわけではありません。
そこで今回、研究チームが注目したのが、その人が人生にどの程度の意味を感じ、どの程度それを探しているかです。
心理学では、人生に目的や重要性、方向性があると感じる状態を「人生の意味の存在」、人生を有意義にする何かを求める状態を「人生の意味の探求」として捉えています。
一見すると、意味を失えば、それを埋めるために探求が強まりそうです。
しかし研究チームの過去の調査では、コロナ禍のフロントラインワーカーが人生の意味を感じにくくなっても、探求が自動的に強まるわけではありませんでした。
そこで今回は、2つの心理状態が燃え尽きとそれぞれどう関係するのか、さらに両者の組み合わせによって関係が変わるのかを調べました。
分析に使用されたのは、英国とアイルランドのフロントラインワーカーを追跡する「CV19 Heroes Project」のデータです。
初回調査は2020年3~4月に1239人を対象に行われ、その後も2021年、2022年、2023年に追跡調査が実施されました。
参加者の多くは、医療・福祉分野で働く人々です。
人生の意味は10項目の質問票、燃え尽きは9項目の質問票で測定しました。
なお、測ったのは仕事だけに限定した意味ではなく、人生全体に感じる意味です。
分析では、人同士の違いに加えて、同じ人の中で「本人の普段の水準より意味を強く感じた時」や「普段より意味を強く探した時」に、燃え尽きの得点がどう違っていたかも調べました。
その結果、人生の意味を感じている人は、燃え尽きの低さと、意味の探求は燃え尽きの高さと関連していました。
より詳しい結果を次項で見ていきましょう。
人生の意味を感じられないまま探す人ほど、仕事への冷めた感覚が強かった
詳しく見ると、人生に意味があると感じる人ほど、燃え尽き全体だけでなく、感情的消耗、シニシズム、不十分さのすべてが低い傾向にありました。
この関係は人同士の比較だけでなく、同じ人の中での得点の違いでも確認されました。
つまり、意味を感じやすい人が燃え尽きにくいだけでなく、同じ人でも普段より人生の意味を強く感じている時には、燃え尽きが低い傾向にあったのです。
一方、人生の意味を強く探求している人ほど、燃え尽き全体と3つの側面はいずれも高い傾向を示しました。
さらに人同士を比較した分析では、人生の意味を感じておらず、それを探し求めている人ほど、燃え尽き全体とシニシズムが特に高くなっていました。
ただし、同じ人の中で意味の存在と探求の組み合わせが変化した時にも、同じ相互作用が起きるとまでは確認されていません。
感情的消耗と達成感の低下については、人生の意味を感じているかどうかにかかわらず、「人生の意味の探求」が強いほど得点が高いという、より単純な関係でした。
研究者たちは、人生の意味を探求することが前向きな成長意欲だけでなく、「今の人生には大切な何かが足りない」という感覚を反映する場合があると考えています。
では、こうした結果からすると、人生の意味を探すことは「良くないこと」なのでしょうか。
そうではありません。
人生の意味を探すこと自体は、人生の方向性を見直すうえで自然で重要な心理的プロセスです。
しかし、意味を見つけられない状態が長く続き、答えの出ないまま強い焦りや消耗を伴って探し続ける場合には、心の負担が大きくなる可能性があるのです。
ちなみに、今回の研究には限界もあります。
初回1239人に対して最終調査の回答者は286人まで減っており、参加者の多くは白人女性の医療・福祉従事者でした。
コロナ禍という特殊な時期の自己申告調査であるため、ほかの職業や文化にもそのまま当てはまるとは限りません。
それでも今回の結果は、意味を探すこと自体が悪いのではなく、意味を感じられないまま探し続ける状態が、燃え尽きの高さと結びついている可能性を示しています。
参考文献
Constant search for meaning is associated with higher workplace burnout, study suggests
https://www.psypost.org/constant-search-for-meaning-is-associated-with-higher-workplace-burnout-study-suggests/
元論文
The dynamics of meaning in life and their associations with burnout within- and between persons
https://doi.org/10.1177/13591053261460983
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

