ガンバレ☆プロレス、通称ガンプロ所属のまなせゆうなが自身の病気について公表したのは、4月の後楽園ホール大会でのことだった。
まなせは鎖骨の骨折で欠場中だったが、手術に伴う血液検査から、卵巣の腫れが見つかったのだ。
「鎖骨の手術を担当してくれたのがヒザのケガも診てくれた先生で『血液検査の数値が変だよ』って教えてくれたんですよ。それで手術の後に婦人科に行きました。知っている先生じゃなかったら、ケガと関係ない数値まで気にしてくれていたか分からないです」
病名は卵巣嚢腫と子宮筋腫。原因は不明、というより何が原因でなるというものでもないそうだ。本人にも自覚症状はなかった。
「試合で卵巣が破裂してた可能性もあるって言われました。普段から生理が重かったので、痛いのを我慢する癖がついてたみたいです。ましてプロレスラーなので、痛いところがあっても練習する、試合するというのが当たり前だったので(苦笑)」
鎖骨骨折の時は欠場をSNSで報告しただけだったが、病気のことは大会会場のインタビュースペースでマスコミにコメントした。より広く伝わってほしかったからだ。
「発表するのはギリギリまで迷いました。ケガならともかく病気のことをプロレスラーが言うもんじゃない、弱いところを見せるなっていう人もいますから。しかも婦人科系の病気なので、どうしても理解されにくいだろうなって。でも早期発見、早期治療が大事な病気でもあるので『みんなもできるだけ病院に行こうね』っていうメッセージになればと思ったんです。
発表してみたら『実は自分も同じ病気でした』って言ってくれる人がたくさんいました。男性の上司に話したら『本当に休む必要ある?』って言われたという人も。だから男性も女性もまず、こういう病気があるんだってことを知ってほしいですね」
以前、インタビューで生理のこと、女子選手ならではのコンディション調整の難しさについて語ったことがあるという。しかし原稿からその部分がチェックの際に丸ごとカットされた。何かネガティブな話題だと判断されたのかもしれない。そういう風潮を変える力になれれば、という思いがまなせにはある。
もちろん手術は怖かった。「大泣きしました。意味が分からないっていうか。まず全身麻酔が怖くて」。以前、麻酔がなかなか抜けず気分が悪くなり、メンタルにも悪影響を及ぼして不眠になったこともある。だから今回は家で使っている枕やタオルなどを病室に持ち込んで、とにかく安眠することに気を使った。
「私はお風呂が好きで、毎日お風呂に入る時間が凄く大切なんですよ。そのことを入院する時のアンケートに書いたら、手術の次の日に髪を洗ってもらえて。それでぐっすり眠ることができたんです。こういうことで安心できるんだなって。それと、同じ病気を経験された方からの言葉も励みになりました。何か力になれたらと思って公表したんですけど、私が力をもらいましたね」
初めて入院した婦人科は、まなせ曰く「病院の中で唯一、命が生まれる場所」だった。赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて、それで気持ちが前向きになる部分もあった。Netflixを見て本を読んで、隣のベッドのおばあちゃんが聴いているTBSラジオの音漏れも楽しんだ。
手術は無事に終わり、術後の検査で腫瘍が良性だったことも分かった。再手術の必要がないことで本当にホッとしたという。
「手術の後はとにかく動きたくて、歩いていいとなったら手術の跡から血が滲んじゃうくらい歩いちゃって。お医者さんに『プロレスラーだから頑張れちゃうんですねぇ』って言われました。結局、予定より3日早く退院しましたね」
ただ復帰に関しては、まだ完全に白紙の状態だ。
「笑ってお腹に力が入るのもよくないというところからなので。動けるようになって、そこから体力を戻してとなると、どれくらい時間がかかるか分からないんですよ。考えたのは、不完全な状態では復帰したくないなということ。自分の動きだけじゃなくて、受けられない技があるのも嫌なので。
プロレスは相手の技を受けるもの。私に受けられない技があったら、相手は全力が出せないじゃないですか。特に若い選手には全力を出してほしい。そうさせてあげるのがキャリアのあるレスラーの仕事だと思うので」
病気による欠場で、自身のプロレス観も見えてきたのだ。婦人科系の病気についてはまだまだ知識、理解が行き渡っていないが、だからこそ公表した意味もある。まなせは毎年SNSで「国際女性デー」(3月8日)に言及するなど、プロレス界においても自分が女性であることに意識的だ。“闘うのに男も女も関係ない”という考え方もあるが、まなせは女性として闘うというスタンス。その上で男子とのタイトルマッチも経験している。
「私も以前はガンバレ☆プロレスの女子部門が“ガンジョ”って呼ばれるのが嫌だったんですよ。なんで女子は別枠にされちゃうんだろうって。でも考えてみたら、私はやっぱり女だなって。男性とは体が違うし、今回みたいに女性だからなってしまう病気もある。
でも、女だから闘わないってことじゃない。男子選手と闘っても勝てるわけないって言われますけど、それはそうですよ。だからって闘わないのは嫌なんです。プロレスラーは闘うだけじゃなくて、闘う姿を人に見せるもの。自分が男子と闘う姿を見て、何かを感じてほしいんです。プロレスラーが“どうせ勝てないから闘わない”ってなったら、一般の人はどうなるんだって。職場で偉い人には何も言えないの? 大げさに言うと、そうじゃなくするためにプロレスがあるんだと思うんですよ」
プロレスは表現する仕事、伝える仕事だ。技を綺麗に出す、ミスをしないというだけではない。まなせはガンプロとその系列のイベントでそれを学んだ。今回のように病気を公 表して欠場することすらメッセージになる。試合には出なくとも、彼女は“女子プロレスラーとしての闘い”に挑んでいるのだ。
取材・文●橋本宗洋
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