北中米W杯の閉幕から、わずか2週間あまり。世界のサッカー界が、前代未聞の分裂危機を迎えている。発端は7月28日、FIFAが打ち出した「FIFA Forward Enterprise」構想だった。
これはW杯をはじめとするFIFA主要大会の放映権、スポンサー、チケットなどを扱う約200億ドル規模の子会社を設立し、最大20%の株式を外部投資家に売却するというもの。ジャンニ・インファンティノ会長は、得られた資金を世界の加盟協会への援助(分配)に回すとしている。
これを受けて、欧州サッカー連盟(UEFA)は7月30日に緊急会議を開く。加盟55協会の全会一致で、この構想が撤回されない限り、W杯を含むFIFA主催大会への参加を拒否すると決めた。
FIFAは翌31日に「サッカーを売るわけではない」と反論し、協議を継続する方針を表明。両者は引くに引けない状態となっている。
さらにアメリカ、メキシコなどを含む北中米カリブ海サッカー連盟も、正式な手続きを踏んでいないとして、構想を拒否した。
この対立が長期化すれば、直撃を受けるのは2030年W杯だ。これはスペイン、ポルトガル、モロッコが共同開催し、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイで100周年記念試合が行われる。サッカージャーナリストが解説する。
「開催国であるスペインとポルトガルはUEFA加盟国。ボイコットが続けば開催国なのに代表チームが出場せず、現地協会も運営に協力しないという異常事態となります。実質的な開催の中心は、アフリカのモロッコへ移るしかありません」
「記念試合」に欧州勢が来なければ興行価値は暴落する
北中米勢までが不参加となれば、アメリカ、メキシコ、カナダも消える。焦点は南米サッカー連盟の動向だという。
「南米連盟のドミンゲス会長はインファンティノ会長の盟友で、現時点ではFIFA寄りとみられています。ただ、南米連盟はUEFAと共同事務所を構え、欧州王者と南米王者が戦うフィナリッシマを開催してきた。2030年大会では南米3カ国でも記念試合が行われますが、欧州勢が来なければ興行価値は暴落します。各国協会から突き上げられ、反FIFAへ回る可能性は否定できません」(前出・サッカージャーナリスト)
仮に欧州、北中米、南米が離脱すれば、残るのはアフリカとアジア、オセアニア勢のみとなる。
「アジア連盟も猛反発しており、FIFA側に立つとは思えない状況です。残ったアフリカとオセアニアだけでW杯を行うなど不可能。インファンティノ会長は巨額資金に目がくらんだあまり、W杯自体を存立の危機に立たせてしまいました」(前出・サッカージャーナリスト)
FIFAが構想を撤回するしか、解決策はないように思えるのだが…。
(川瀬大輔)
1977年生まれ。国内外のビジネス、スポーツ、政治、社会問題を取材するフリー記者。

