今回のテーマは「ラケットに貼る鉛テープ」です。プロや上級者がフレームに鉛テープを貼っているのを見たことがあると思いますが、何が変わって、どんな効果があるのかを知ってください。
プロ選手たちは強烈な打球の応酬に負けないため、ラケットをカスタマイズして使うことが多いですね。選手によっては、プレー環境に応じてストリングのテンションはもちろん、フレームのバランスまで使い分けることもあります。
外見的にわかりやすいのが、フレームに貼る「鉛テープ」です。貼る位置や、追加する重さなどを自分にとって必要なだけ、1グラム単位で調整できるのが鉛テープのメリットです。
あれによって、いったい何が変わるのでしょう? たった1カ所にテープを貼るだけで、3つのスペックが変化します。
◎静的バランス
◎スイングウェイト
◎全体重量
鉛テープを貼るには「どこに・どれだけ貼れば、何が・どう変わるか」を理解して調整する必要があります。
まずは「静的バランス」です。カタログなどに「バランス」として、平均値で記載されています。ラケット自体のバランスが取れるポイントをグリップエンドからの距離で提示し、数字が大きければ「先が重い」、小さければ「先が軽い」ということを示します。
次に「スイングウェイト」。プレーヤーにとって振りやすさを示す数値で、静的バランスに対して「動的バランス」とも言えます。
実質的な「振り重さ感覚」として最も重要なんですが、カタログに記載されることは稀で、テニス専門店などにある、専用計測機器で計ってもらうことができます。一般的に“285”を中心に、数字が小さければ「振りやすい」ですが「出力パワーが小さく」なります。数字が大きくなれば「振り出しづらい」けれども、振り出してしまえば「大きなパワー」を発揮します。
鉛テープをどこに貼ろうと、当然「ラケット全体の重量」も変化します。軽く、振りやすく感じても、絶対重量は増していますから、ラケット全体を振る腕には負担増になることも忘れてはいけません。ですから、適切な部分に、効果を得るための最低限量を追加することを忘れないようにしましょう。
どこに・どれだけ貼るかによって、振りやすさや打球に与えるパワーなどに差が出るわけですが、もし同じ重さの鉛テープを貼るとすると、ラケットの先端側に貼るトップ加重と、手元側に貼るグリップ加重には、次のように大きな違いがあります。
◎トップ加重による効果と影響
1=インパクトパワー向上
2=振り出す時に重く感じる
◎グリップ加重による効果と影響
1=感覚的に振り出しやすい
2=ラケットの先端を回しやすい
3=強烈な打球には押し負ける
トップ加重の魅力は「打ち負けない打球パワー増」を感じること。逆にグリップ加重では、先を軽く感じて取り回しやすいですが、スイングはラケットが回転するだけでなく、腰→体幹→腕→手首→ラケットへと「回転中心」が連鎖的につながっていくので、ラケットだけを見るのではなく、スイング全体にとっての重量・バランスとして捉えましょう。
また、フェイス部フレームのどこに貼るかについても、3つのパターンがあります。
1=トップに貼る(0時)
2=両斜め上に貼る(2時・10時)
3=両サイドに貼る(3時・9時)
たとえ静的バランスが同じであっても、調整の仕方や効果に違いがあります。よく「両サイドに加重することで、面安定性(慣性モーメント)が向上する」と言われますが、2グラムや3グラムの荷重では、高速スイングでのインパクトの衝撃にとっては大きな違いとして感じにくいかと思います。
ただ、ボレーのようにスイング幅が小さく、低速インパクトの時には、静的な慣性モーメントが効果を発揮するかとも感じます。
数値を重視して調整する際には、トップに貼る方が簡単で正確にできますが、プレーヤー本人の好みで決めていいと思います。
テニス専門店では、ストリングを張るだけでなく、重量やバランス調整をしてくれるケースもあります。彼らは多くの経験値を持っているので、調整をお願いするのもいいでしょう。
自分で行なう場合は「一発で決まると思わない」ことです。カスタマイズ用ツールとして鉛テープなども売られていますが、貼る量や位置によって違うことを、何度も試しながら感じていくことが重要です。
数字はあくまで「指標」であり、数字が同じであれば完全に同じ感覚になるとは言いがたいですが、複数本のスイング感覚を整えるための「調整の目標値」として有効と思います。自分用のデータ保存や、調整してもらうプロとの情報交換に役立ててください。
文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2025年3月号より抜粋・再編集
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