
「優勝」という目標には遠く及ばなかった日本代表。能動的に戦えない時点でベスト8も難しかった【識者コラム】
森保一監督が率いた日本代表は、北中米ワールドカップで「優勝」を目標に戦って、ベスト32で敗退した。目標には遠く及ばなかった。その点で、「失敗した」というのが厳然たる事実である。
にもかかわらず、ねぎらう声が多い。感情論のところで、「よく頑張った」というのが日本人らしく、批判精神の方がかえって批判を受ける。
「W杯優勝?そんなのあくまで目安だった。いつか、きっとできる!」
そんな調子である。
しかし、国を背負い、国同士が戦うW杯は、「やってみなければわからない」とおっとり刀で挑む舞台ではない。もっとスケールが大きく、それでいて緻密で、伝統や歴史の重みが引力のように支配する。グループステージの1、2試合の結果は覆るが、それから先は総合力が問われる。
筆者はサッカーダイジェストの予想で、グループステージの勝ち負け引き分け、ベスト32に敗退まですべて的中させた。それは、様々な構図から導き出した答えだった。優勝など、そもそもあり得なかったのである。
しかし、熱くなった一部の国民は「優勝を目標にして当然だろ!水を差すな」と論理性を保てない。だからこそ、メディアは日本サッカーの力を推し量り、彼我の戦力を比較し、プレーモデルの真価を見極め、その戦いがどこまで辿り着けるか。その答えを論理的にはじき出さなければならない。
日本人は平時では冷静だが、戦いでは「自分たちの力を最大化」し、敵を「最小化」するところがある。ラウンド16以降の試合を見たら、「日本最強論」がどれだけ荒唐無稽だったかわかる。「くじ運がよかったら優勝できる」など最たるものだ。
それは太平洋戦争で、日本がミッドウェー、ガダルカナル、インパールでコテンパンに叩かれた後も戦果を喧伝し、強さを妄信する愚かさにも似ている。
戦略的に命令系統が破綻し、作戦を徹底できず、誤った方向に進んでも引くことができない。合理性よりも組織内の融和、調和だけが重視され、根拠のない信念で「うまくいかないのでは」という疑念を排除する。火力で圧倒的に劣る相手に白兵戦を挑み、現場の精神性を恃みとするのは、日本人の「戦う」メンタリティに潜む根源的な問題だ。
勝てるはずもない戦力差を無視した戦いは、「夢を売り物」に楽しめるかもしれないが、どこにもたどり着かない。
森保ジャパンは能動的に戦うことなどできなかった。その時点で、戦略的にベスト8も難しかったのである。ベスト8に入った国々は、常に攻める手立てを持っていた。たとえばブラジル戦は戦術的に4バックに変えるなど、柔軟さも幅もなかった。けが人の多さはエクスキューズにならない。攻撃力のある選手にウイングバックをやらせるというシステムも最悪の発想だった。
森保監督の続投が決まった。半年限定とはいえ、9年目になる。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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