
ディズニー映画「ディセンダント ウィキッド・ワンダーランド」が、7月24日に配信された。ディズニーの名作たちの世界につながる斬新なオリジナルストーリーで、今回はシリーズ第5弾。世界中のファンが待ちわびた最新作をレビューする。(以下、ネタバレを含みます)
■ちょっぴりダークなディズニー…人気シリーズ最新作
“もしもの世界”といえば、現在新作が劇場公開されている「トイ・ストーリー」シリーズなどのピクサー作品のテーマとなっているが、本作も“もしも”から始まったシリーズ。それは、“もしディズニー・キャラクターに子孫がいて、10代だったら?”というユニークなもの。しかもメインキャストとなるのはディズニーヴィランズ(悪役たち)の子孫だ。
2015年に公開された映画第1弾「ディセンダント」は、「眠れる森の美女」でオーロラ姫に呪いをかけたマレフィセントの娘・マル、「白雪姫」で継子の白雪姫に毒リンゴを与えた女王(魔女)イーヴィル・クイーンの娘・イヴィ、「101匹わんちゃん」でダルメシアンの子犬たちの毛皮でコートを作ろうと企んだクルエラの息子・カルロス、「アラジン」の邪悪な大臣・ジャファーの息子・ジェイが主人公。「美女と野獣」のベルとビースト(野獣)が治めるオラドン合衆国を舞台に、ヴィラン2世の苦しみ、葛藤、そして成長を描いた。
ユニークな設定と、ちょっぴりダークだけどエネルギッシュで、ミュージカルを盛り込んだポップな世界はたちまち人気となり、2017年に「ディセンダント2」、2019年に「ディセンダント3」が公開。3作すべてのサウンドトラックは米ビルボードのキッズ・アルバム・チャートで1位を獲得し、ミュージックビデオはYouTubeなどで累計70億回以上再生された。短編アニメーションシリーズや実写短編も作られている。
2024年にシリーズ第4弾「ディセンダント ライズ・オブ・レッド」が公開に。そしてこのほど第5弾がディズニープラスで独占配信され、SNSには日本のファンからも「おかえり」「待ってた」「ようやく」「帰ってきてくれてありがとう」といった声が相次いでいる。
■ハートの女王とシンデレラの娘が親友として活躍する世界線
第4弾では、主人公たちが変わり、「ふしぎの国のアリス」で「首をはねよ!」が口ぐせの暴君、ハートの女王(リタ・オラ)の娘・レッド(カイリー・キャントラル)と、シンデレラ(ブランディ)の娘・クロエ(マリア・ベイカー)に。ヴィランの娘と王道のヒロインの娘がタッグを組むという、新たな展開で描かれたのは、時空を超えてハートの女王がヴィランとなってしまう出来事を止めるべく奔走する様子。
彼女たちは無事ミッションに成功し、2人の友情は深まった。しかし、過去を変えるということは代償がつきもの…というのはSF展開でおなじみ。第4弾のラストで「ふしぎの国のアリス」に登場するチェシャ猫の娘・チェシー(CV:オークワフィナ)も予告していたことだ。
ハートの女王が優しくなり、シンデレラがプリンセスらしくなったタイムライン。レッドにはピンク(リアマニ・セグラ)という妹が新しく存在していて、“ヴィランキッズ”ではなくなったことに少なからず戸惑いも。一方、クロエは10代の“ママ”とは理解し合えそうだったのに、今のママはいかにも王族なルールを守るお堅さでうんざりすることもあった。
そんな折、マッドハッターの息子であり、かつてハートの女王の相談役を務め、レッドの親友だったマドックス・ハッター(レオナルド・ナム)がヴィランとなってしまった。発明家でもあるマドックスは、レッドとクロエが過去に行くのに使った魔法の懐中時計への執着を募らせ、次第に正気を失っていった。そんな彼をハートの女王は、昔、ヴィランズたちが閉じ込められていたロスト島に幽閉。その後、島から出ることができたマドックスは、懐中時計を手に入れてハートの女王が支配する国・ワンダーランドを手に入れることと、ハートの女王への復讐(ふくしゅう)を誓ったのだ。
そのマドックスによってハートの女王が捕らえられたことを知ったレッドとクロエは、ヒーローキッズとヴィランキッズ合同で冒険に出る。
■善と悪に揺れ動く、深いテーマ性は健在
ヒーローに憧れる一方で、ヴィランの闇にも魅了される。日本発の作品として、ディズニーヴィランズにインスパイアされたキャラクターが織りなすゲームに始まり、アニメ化もされた「ディズニー ツイステッドワンダーランド」も人気を博しているが、ヴィランならではの美学や人間味に引かれるのかもしれない。
そんな中、第1弾から突き付けられてきた、ヴィランの子どももヴィランなのかということ。親に悪の道に進むことを期待され、悪事を働く中で心に生まれる葛藤。ヴィランキッズと呼ばれる主人公たちは、真逆の存在であるヒーローキッズたちとの対立や交流を通して、成長し、自分らしさを見つける。本作が多くのファンを生む真髄だ。
ただ、ヒーローキッズにも悩みや葛藤はある。これまでのシリーズでも正しさや優しさばかりじゃない、嫉妬などダークな感情に揺さぶられる姿が描かれてきた。今回のレッドとクロエの立場は、それらが入り混じった状態。善と悪という大きな枠で彼女たちの心は揺れ動く。
自分たちが過去を変えてしまったことで母や国のピンチを招いてしまったと、強い責任感に突き動かされるレッド。クロエも同じ思いではいるのだが、親友なのに、どこかないがしろにされていると感じてしまう。レッドの妹・ピンクもクロエに、レッドの妹でいることはキツイ…というような悩みを打ち明けたりもするほど、レッドは統率力もあるのだが、欲しいもののためには何でも利用すると思われてもしまうのだ。そして、彼女たちの友情は危機を迎え、すべきことに奔走しながら大切なことに気付いていく。
そんな2人を取り巻くヴィランキッズとヒーローキッズには、これまでのシリーズで登場したキャラのほか、新たなディズニーキャラキッズも登場。マドックスの息子・マックス(ブレンドン・トレンブレー)、「ミラベルと魔法だらけの家」の主人公の姉であるルイーサ・マドリガルの息子・ルイス(アレクサンドロ・バード)、「ピーター・パン」のヴィランであるキャプテン・フックの娘・ヘイゼル(キアラ・ロメロ)など。主役、脇役、さらにモブまで合わせれば何千といるだけに、「このキャラの子孫が出てきたか!」と楽しめること請け合いだ。同時にそれはさらなるシリーズの期待にもつながる。
“闇落ち”という言葉があるが、ヴィランキャラだけでなくヒーローキャラにも迫りくるもの。善と悪の間で揺れることは、われわれも生きていく中で幾度となく経験する。普遍的で深いテーマ、というと小難しく思えるが、本作ではヴィランキッズ、ヒーローキッズを通してティーンエイジャー映画として軽やかに見せてくれる。また、自分が進む道を自分で決めて歩んでいく必要があるのは、キッズだけでなく大人も同じ。いつだって人生には大なり小なりの岐路があるのだ。だから本作に感じ入ることが多い。
ラストでは、またまたチェシーの意味深な言葉があり、さらなる展開を予感させる。青春映画、王道ミュージカルとして楽しめるだけでなく、ディズニーファンの心をくすぐる展開や、創造性に富んだ物語も堪能できる。幅広い世代が満足できるはずだ。
◆文=ザテレビジョンシネマ部

