
風の強い日に外へ出ると、傘が裏返ったり、帽子が飛ばされることがあります。
しかし世界には、その程度ではすまないほど、すさまじい風が日常的に吹いている場所があるのです。
そこで今回は、平均的に風が強い都市から、観測史に残る極端な突風が吹いた地域まで、世界でもっとも風が強い場所を10カ所紹介します。
目次
- 日常的に強風が吹き続ける都市と地域
- 観測史に残る猛烈な風が吹いた場所
日常的に強風が吹き続ける都市と地域
1.世界でもっとも風が強い都市「ニュージーランドのウェリントン」

ニュージーランドの首都ウェリントンは、「世界でもっとも風が強い都市」と呼ばれることがあります。
市街地の年間平均風速は、場所によって時速約9~19kmです。
一方、市内にあるカウカウ山の観測装置では、平均時速約44kmという非常に速い風が記録されています。
ウェリントンで観測された最大の突風も、このカウカウ山で記録された時速約201kmでした。
ウェリントンがこれほど風の強い都市になった理由の一つは、南緯40~50度付近を吹く強い西風にあります。
太平洋上を遮られることなく進んできた西風は、ニュージーランドの北島と南島の間にある狭いクック海峡に入り込みます。
すると、風の通り道が狭められ、市街地周辺に強風が吹き込みやすくなるのです。
もっとも、ウェリントンの住民は風に悩まされるだけではありません。
風力発電に利用したり、市内の空気を入れ替えたりする自然の力としても活用しています。
海岸沿いには、風に向かって体を傾ける人物を表現した「風の中の安らぎ」という彫像まで設置されています。
2.アメリカでもっとも風が強い都市「カンザス州ドッジシティ」

一定規模の人口を持つ都市として、アメリカでもっとも風が強いとされるのがカンザス州のドッジシティです。
人口約2万7000人のこの都市では、平均風速が時速約24kmに達します。
カンザス州は竜巻が頻発する「竜巻街道」の一部ですが、平均風速を押し上げている主因は竜巻ではありません。
より大きな影響を与えているのは、ロッキー山脈から吹き下ろし、広大なグレートプレーンズへ流れ込む風です。
同様の地形による強風は、テキサス州アマリロなどでも見られます。
3.”風の街”と呼ばれる「アゼルバイジャンのバクー」

カスピ海に面するアゼルバイジャンの首都バクーは、古くから「風の街」と呼ばれてきました。
この都市では、年間の大部分で平均風速が時速約18kmを超えます。
バクーに吹く風には、大きく分けて二つの種類があります。
一つはカスピ海から吹き込む冷たい風で、ときには強風と呼ばれるほどの勢力になります。
もう一つは、内陸部から市内に流れ込む比較的暖かい風です。
冬には冷たい風によって体感温度が大きく下がりますが、風には利点もあります。
バクーでは大気汚染が問題になっていますが、絶えず吹く風が空気を入れ替えてくれるからです。
また、市街地は海面より約28m低い場所に広がっており、周囲に風を遮るものが少ないことも、強風が吹き込みやすい理由の一つとされています。
4.カナダでもっとも風が強い都市「セントジョンズ」

カナダ東部のニューファンドランド島にあるセントジョンズは、極端な天候で知られる都市です。
年間の平均風速は時速約21kmを超え、時速約48km以上の突風が吹く日は、年間およそ50日に達します。
このため、セントジョンズは「カナダでもっとも風が強い都市」と呼ばれています。
さらにこの都市は、カナダの主要都市のなかでも、霧、雲、雨、雪が特に多い場所の一つです。
冬には、強風によって体感温度が大きく下がることがあります。
その一方で、年間を通した気候の穏やかさでは、バンクーバーとビクトリアに次ぐ国内3番目だとも紹介されています。
風や雪が多いことと、気温の変化が比較的穏やかであることは、必ずしも矛盾しないのです。
5.ヨーロッパでもっとも風が強い国「スコットランド」

スコットランドがヨーロッパでもっとも風の強い国とされるようになった背景には、少し変わった出来事があります。
スコットランドのアイスクリーム会社マッキーズは、自社工場が「ヨーロッパでもっとも風の強い場所」にあり、風力発電で工場を動かしていると広告で宣伝しました。
ところが、イギリスの広告基準局がその主張に疑問を呈し、証拠を示すか、広告を取り下げるよう求めました。
そこで同社はイギリスの科学者から気象データを集め、自社の主張が正しいことを示したのです。
スコットランドの平均風速は、時速約16~29kmです。
特に風が強いのは西部と沿岸地域で、一部の海岸では年間約25日にわたって強風が吹きます。
風がもっとも強くなるのは冬です。
大西洋で発達した低気圧が次々と接近することで、強い風が吹き込みます。
こうした安定した風は、現在ではスコットランドの風力発電を支える重要な資源にもなっています。
6.南米でもっとも風が強い地域「パタゴニア」

チリとアルゼンチンの南部に広がる「パタゴニア」も、強風の影響を強く受ける地域です。
チリのプンタ・アレナスや、アルゼンチンのリオ・ガジェゴスには、南太平洋を渡ってきた強い西風が吹きつけます。
南緯46度より南にある都市としては世界最大とされるプンタ・アレナスでは、時速約60kmの風も珍しくありません。
特に風が強くなるのは、南半球の夏です。
強烈な突風が吹いた際に歩行者がつかまれるよう、一部の建物の間にはロープが張られています。
リオ・ガジェゴスの年間平均風速も時速約25kmに達し、夏にはさらに速くなります。
この風によって気温の上昇が抑えられるため、夏の平均最高気温は約21℃未満に保たれています。
観測史に残る猛烈な風が吹いた場所
7.最速の斜面下降風が吹く「南極大陸」

南極大陸では、内陸部にある冷たく重い空気が、海岸へ向かって一気に斜面を下ることがあります。
南極のコモンウェルス湾にあるデニソン岬では、1912年に時速約270kmの暴風が観測されました。
これは、斜面を下る風としてギネス世界記録に認定されています。
この地域では、1日に観測される最大風速の年間平均値も時速約71kmに達します。
強風は数週間にわたって吹き続け、吹雪のような状態を引き起こすこともあります。
ただし、南極で正確な風速を測ることは容易ではありません。
観測装置が凍りついて停止したり、風で吹き飛ばされたりするからです。
超音波式の風速計も、舞い上がった雪によって誤った数値を示す場合があります。
実際の南極には、観測記録に残っていないさらに強い風が吹いている可能性もあります。
8.竜巻以外で最速を記録した「オーストラリアのバロー島」

オーストラリア北西部にあるバロー島は、竜巻に伴わない風として、観測史上最速の記録を持っています。
1996年、熱帯低気圧オリビアが島を通過した際、無人の気象観測所が時速253マイル、約407kmの風を記録しました。
記録に採用されたのは、3秒間の平均風速です。
それまで世界記録を保持していたアメリカのワシントン山を上回り、現在もギネス世界記録として認定されています。
バロー島は、オーストラリア有数の石油・天然ガス開発拠点です。
しかし同時に、自然保護区としても重要な場所です。
島にはメガネウサギワラビーやウミガメ、オーストラリア最大のトカゲであるペレンティーなど、希少な動物が生息しています。
世界最速級の風が吹いた島が、産業拠点と野生動物の保護区という二つの顔を持っているのです。
9.年間100日以上も暴風が吹く「ワシントン山」

アメリカ・ニューハンプシャー州にあるワシントン山は、標高約1830mの山です。
1934年、この山の山頂では時速231マイル、約372kmの突風が観測されました。
この記録は、20世紀の大半にわたって、地上で直接観測された世界最速の風として知られていました。
現在はバロー島に記録を更新されていますが、ワシントン山が世界有数の強風地帯であることに変わりはありません。
年間平均風速は時速約56kmに達します。
さらに山頂では、時速約121kmを超えるハリケーン級の風が、年間100日以上も吹きます。
ワシントン山のあるホワイト山地は、複数の低気圧が通過しやすい位置にあります。
大西洋側の低気圧と内陸部の高気圧がぶつかり、山の地形によって空気の流れが狭められることで、山頂付近の風が猛烈に加速するのです。
観光客が訪れる山でありながら、山頂では突然、極地のような環境に変わることがあります。
10.時速480kmの風が推定された「オクラホマ州の竜巻」

これまでに確認された最高クラスの風速は、アメリカ・オクラホマ州で発生した竜巻の内部で観測されています。
1999年、オクラホマシティ郊外のブリッジクリークを襲った竜巻では、上空の風速が時速約300マイル、約483kmに達したと推定されました。
この値はドップラー・レーダーによって測定されたものです。
それ以前の記録は、1991年に同州レッドロックで発生した竜巻の時速約460kmでした。
さらに2013年にエルリノ付近で発生した竜巻は、幅が約4.8kmに達し、風速も時速480kmに迫ったとされています。
ただし、これらの数値は地上の観測装置が直接測定したものではありません。
世界気象機関は、ドップラー・レーダーによる竜巻内部の風速を、地上で観測された公式な風速記録としては認めていません。
そのため、「公式に観測された最速の風」という記録は、現在もバロー島が保持しています。
竜巻の内部に観測装置を置いても、装置そのものが破壊されたり吹き飛ばされたりする可能性があります。
人類は時速480kmに迫る風の存在を捉えていますが、それを地上で直接測定することは、現在でも非常に難しいのです。
参考文献
10 of the Windiest Places in the World
https://www.treehugger.com/10-of-the-windiest-places-in-the-world-11889062
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

