
「私はこういう性格だから、今さら変わらない」と考えたことはないでしょうか。
一般に、収入や健康、生活環境は変化しても、人の根本的な性格は大人になると固まると思われがちです。
しかし16万人以上の長期データを分析した新たな研究により、性格は生活満足度や健康などと同程度、場合によってはそれ以上に変化することが示されました。
スイスのチューリッヒ大学(University of Zurich)などの研究チームによる成果は、2026年7月27日付で、学術誌『Communications Psychology』の早期公開版として公表されています。
目次
- 私たちは「性格だけは変わらない」と思い込んでいる
- 外向性や誠実性は人生の中で大きく動いていた
私たちは「性格だけは変わらない」と思い込んでいる
性格心理学では、外向性、協調性、誠実性、神経症傾向、開放性からなる「ビッグファイブ」が、成人後も少しずつ変化することが知られています。
それでも社会には、「性格だけはその人の本質であり、変わらないものだ」という見方が根強く残っています。
そこで研究チームは、人々が性格の変化をどの程度予想しているのか、そして実際の変化は健康や収入などと比べて本当に小さいのかを調べました。
研究1では、米国の人口構成を年齢、性別、人種の面でおおむね反映した成人887人に、15歳から90歳までにさまざまな特徴がどれほど変わると思うかを尋ねました。
対象はビッグファイブの5特性に加え、自尊心、生活満足度、健康状態、収入、睡眠時間、運動や社交の頻度など、合計25項目です。
研究2では、米国、ドイツ、オーストラリア、オランダの8つの大規模縦断調査から、計16万6971人のデータを統合しました。
分析では、年齢による違いと、調査された時代や生まれた世代の違いをできるだけ分けながら、15歳から90歳までの平均的な変化を推定しています。
また、15歳と90歳の差を表す「純粋な変化量」と、途中の上昇と下降をすべて足した「累積変化」を別々に計算しました。
その結果、人々はビッグファイブをほかの特徴よりも安定したものだと考えていました。
ところが実際の性格は、生活満足度、健康、収入、自尊心などと同程度か、それ以上に変化していたのです。
具体的にどの特性がどれほど動いていたのか、次項で詳しく見ていきます。
外向性や誠実性は人生の中で大きく動いていた
一般の人への調査では、ビッグファイブは健康、自尊心などの心理的特徴、経済、余暇や社会活動の各領域よりも、変化が少ないと評価されました。
特に外向性と神経症傾向は、比較された性格以外の20項目すべてより、変わりにくいと見なされていました。
しかし実際のデータでは、15歳から90歳にかけて外向性、神経症傾向、開放性が平均的に低下し、協調性と誠実性は上昇していました。
中でも外向性は大きく低下し、32項目の中でも変化の大きい項目の一つでした。開放性も同様に、上位10項目に入るほどの変化が見られました。
途中の増減まで含めて見ると、誠実性は特に大きな変化を示し、32項目中5位に入っていました。
これは誠実性が一方向にずっと上がり続けたという意味ではなく、人生の中で上がったり下がったりを繰り返しながら、全体として大きな動きがあったことを示しています。
ちなみに、性格以外の27項目のうち、誠実性よりも累積的な変化が大きいものはありませんでした。
たとえば、収入は「上がる時期」と「下がる時期」があっても最終的にはある程度の範囲に収まることが多いですが、誠実性は若い頃から高齢期にかけて少しずつ上がったり下がったりを繰り返しながら、長い目で見ると大きな変化の積み重ねになっていたのです。
また、人々の予想は全体として完全に外れていたわけではなく、変化の大きい項目と小さい項目の関係は、実際のデータともある程度一致していました。
それでも主要分析では、ビッグファイブの5特性すべてについて変化が過小評価されていました。
今回の研究は、過小評価する理由を直接検証したものではありません。
ただ研究者たちは、「本当の自分は変わらない」という文化的な考え方や、一度作った人物像に合う行動ばかりを見つけやすい認知の偏りが、性格を固定的に見せている可能性を論じています。
ただし、示されたのは欧米4カ国における集団平均の変化です。
全員が同じ方向に変わることや、望んだ性格へ自由に変えられることを証明したわけではありません。
それでも、「大人になれば性格は固まる」という見方は、現実よりも人間の変化を小さく捉えているようです。
参考文献
Your personality changes more across your life than you think, according to new study
https://medicalxpress.com/news/2026-07-personality-life.html
元論文
Personality traits are less stable than people think
https://doi.org/10.1038/s44271-026-00515-7
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

