ドジャース・大谷翔平をはじめとして、大リーグで活躍する日本人選手は多いが、サンフランシスコ・ジャイアンツに所属する植松泰良という男を知っているだろうか。選手ではなく、クォリティ・コントロール・コーチの肩書を持つ人物だ。
植松コーチが一躍、その存在を知られることとなったのは7月29日、本拠地でのブルワーズ戦。一塁ベースコーチを務め、これが日本人初となるメジャーリーグでの一塁ベースコーチだった。本来の一塁コーチが家族の事情でチームを離れたため、植松コーチが代行したという。
この植松コーチと面識があるというのが中日、阪神、大リーグで活躍した福留孝介氏だ。8月4日放送の「おはよう朝日です」(ABCテレビ)では、植松コーチについて次のように明かしたのである。
「僕がメジャーに挑戦した時に彼はずっといたので、よく一緒に食事をしたりとか。僕がちょっと早く球場に入って自主トレする時に、キャッチボールの相手をしてもらったこともありました。本当に好青年で、ただ、メシを食べる量はすごいです」
その経歴はなんとも異色だ。プロ野球経験も高校野球公式戦出場経験もない。高校卒業後、アメリカの大学に進学。ジャイアンツのスタッフのインターンに参加し、2007年にブルペン捕手として正式採用。2022年にアシスタントコーチに就任した。そして現在、クォリティ・コントロール・コーチの任にある。
その間、ジャイアンツはワールドシリーズを3度制覇しており、チャンピオンズリングを日本人最多の3個も獲得している。
マイナーではスタッフが少ないので…
クォリティ・コントロール・コーチは、相手投手の癖を見抜いたり、味方投手の癖を直したりする役割だ。福留氏は言う。
「クオリティ・コントロール・コーチは基本的に選手とすごい近いので、そういう仕事もあるんですけど、どっちかというと、選手の兄貴分的な感じの仕事。(植松コーチは)トレーナーを目指してアメリカに渡って、インターンとして参加。マイナーではスタッフが少ないのでブルペン捕手もやって、それを見ていた球団が正式にブルペン捕手として採用した。最初はそんなに英語も得意ではなかった。それでも苦労しながらここまでいったというのは、本当にすごいことだと思う」
かつては甲子園に憧れ、強豪校に進学したものの挫折。しかし現在、メジャーの裏方で活躍している事実は、夢への道がひとつではないことを教えてくれる。
(鈴木十朗)

