突然のビッグカード決定だった。7月24日、後楽園ホールで開催されたジャガー横田50周年興行。女子プロレス界のトップ選手であるSareeeはアイスリボンの優華と対戦する予定だったが、優華が負傷欠場に。急きょ、大会当日に代替カードを決めることになった。
Sareeeの頭に浮かんだのは、タッグチーム「スパーク・ラッシュ」を組む彩羽匠だった。ライバルでありタッグパートナー、彩羽が所属するマーベラスのビッグマッチではメインでベルトをかけて闘っている。そんな大事なカードだからこそ、ここでやろうと思った。気持ちは彩羽も同じだった。
「ジャガーさんの興行で、ゲストにクラッシュ・ギャルズ(長与千種&ライオネス飛鳥)も来ている。全日本女子プロレスのOGも、古くからのファンも見ている。そういう人たちに何か仕掛けて、驚かせたかった。今のプロレスを見せつけたいと」(彩羽)
当日に組まれた試合だから、綿密な作戦など立てられない。それでも2人は見事に噛み合った、ノンストップの激しい攻防を展開してみせた(彩羽がサムソンクラッチで勝利)。タッグパートナー対決だが“負けたくない”という意地の張り合いも凄まじい。敗れたSareeeの憮然とした表情も印象的だった。
試合後、2人はリングサイドで観戦していたクラッシュ・ギャルズの前へ。長与はマーベラスの創始者であり彩羽にとっては師匠。スパーク・ラッシュはクラッシュの後継者を自負してきた。
ただ、試合後のやり取りをきっかけに現在は長与と彩羽、Sareeeは反目。「尊敬はもちろんしてます。でも尊敬しているだけでは超えられない」とSareeeは言う。Sareeeはクラッシュの2人の前で「絶対超えます」と宣言。さらに長与と飛鳥の間で観戦していたマーベラスの新鋭・暁千華も挑発している。彩羽曰く「ついていく人間を間違えている」。
彩羽とSareeeからすれば、まだ新人の暁は試合のセコンドにつくべきではないか、となる。だが暁にとってはクラッシュとともに試合を見るというまたとない機会。ここでしか学べないこともある。
一気に緊張感を増したスパーク・ラッシュとクラッシュ・ギャルズ、暁千華の関係。そこにマーベラスの主力のひとりである桃野美桜も参入して、8月8日の後楽園大会では桃野vsSareee、彩羽vs暁のシングルマッチが組まれた。様相としてはSareee、彩羽vsマーベラスだ。
「それも面白いんじゃないですか。旗揚げから10年、自分は“マーベラスのために”と思ってやってきた。でも自分がトップであることが面白くない選手もいるはず。それが言いにくいのが団体として弱みだったかもしれない」(彩羽)
象徴としての長与、エースの彩羽のもとで団体一丸というイメージがマーベラスにはあった。そこに、あえて波風を立ててしまおうと彩羽は考えている。暁に対しては「簡単には超えさせませんよ。自分たちだって何回も潰されて強くなってきたので」。 それにしても、クラッシュ・ギャルズを超えるというのはとてつもなく大きなテーマだ。何しろクラッシュは女子プロレス史上最大のスター。ファイトスタイル、若い女性ファンを増やしたこと、芸能活動も含めた世間へのアピールなど、あらゆる面で偉大なタッグチームだった。
「何をもって超えるか。そこは自分たちで考えないといけないですよね。“クラッシュがこうやってたから自分たちも”という考え方はなしにしないと。自分たちで新しいことをやっていきたい」(彩羽)
「昔と今とではプロレス界が置かれた環境も違うので、ただクラッシュと同じことをやればいいというわけじゃない。じゃあ自分たちはどんなやり方がいいのか。そこは毎日考えて、話し合ってますね」
8.8後楽園での2大シングル、スパーク・ラッシュは「2人とも負けたら解散」をかけている。観客のヤジに応じて宣言したものだ。
「普通、ヤジに反応して解散かけるなんてないですよね(苦笑)。でもそれをやってしまうのが今の自分たち。すべてにおいて必死なんです」(彩羽)
Sareeeはデビュー16年目、彩羽は14年目。「このキャリアでここまで必死になるなんて」と口を揃える。圧倒的な実力を誇り、それでも余裕なんてない。だから充実しているとも言える。
いま現在のスパーク・ラッシュの凄味は、団体の壁を実力で打ち破っていることだ。かつて、全盛期の長与千種は神取忍との対戦を望んだが全日本女子プロレス時代には実現できなかった。しかしスパーク・ラッシュはやりたい試合をすべて実現していく。
8月24日のSareee自主興行では、スパーク・ラッシュと安納サオリ&なつぽい(スターダム)の対戦が実現。その記者会見が行なわれた翌日、Sareeeはマリーゴールドに参戦している。言うまでもなく、マリーゴールドはスターダム離脱者たちが作った団体だ。
マリーゴールドでは、8.9EBARA WAVEアリーナおおた(大田区総合体育館)大会でスパーク・ラッシュvs岩谷麻優&ビクトリア弓月という注目の一戦も。こちらも大注目カードだ。
「長与さんと神取さんは、お互い対戦したかったけど団体の壁に阻まれてしまったんだと思います。試合をすればどちらかが負ける。そのリスクがあるので。逆に言えば、リスクを背負えばなんでもできるということ」(彩羽)
ビッグカードを実現させれば、負けるリスクはもちろんある。だが、今の彩羽とSareeeは、そのリスクを背負い切るだけの覚悟と実力を持っているのだ。団体の枠を超え、波風を立てることから時代は動いていく。
取材・文●橋本宗洋
【画像】Sareeeが平成の歌姫と豪華ツーショット!フワちゃん、なつぽいらの姿も(計12枚)
【画像】強くて可愛いギャップに胸キュン!破壊力抜群なスターダムを代表する“美しき戦士”たちを一挙にチェック!
【画像】雰囲気ガラリ!“清楚系”なつぽい

