第23回中之島映画祭でグランプリを受賞。自主上映時には全回満席を記録。予約が殺到、アクセスが集中しサーバーがダウンする事態にまでなった、映画『レンタル家族』が7月31日(金)より全国公開中です。
【あらすじ】東京の会社に勤務する洋子は仕事で多忙な毎日を過ごす傍ら、定期的に実家へ帰省をし、父・忠勝とともに認知症の母・千恵子のケアをしている。千恵子の症状は近頃進行が早く、洋子が数年前に離婚したことさえ忘れ、帰省の度に元夫と娘について聞くのであった。ある日、洋子は取引先の担当者から、「レンタル家族」というサービスを紹介され、体験レンタルを強く勧められる。耳馴染みのないサービスに戸惑ってはいたが、断りきれない洋子はレンタル夫を家事代行として自宅に呼ぶ。派遣されたレンタル夫の松下豪と馬が合った洋子は、松下に千恵子のことを相談。すると松下は、自分を夫、知り合いの子役・安田朱里を娘として、家族を演じることを提案する…。日々進行していく千恵子の認知症、不器用ながら千恵子を支えようと奮闘する忠勝、複雑な事情を抱えながらレンタル家族を担う松下と朱里。洋子は、自分を取り巻く“家族たち”と月日を重ね、新たな幸せのかたちに触れていく。
本作で監督デビューを果たした若手映画監督の上坂龍之介さんが、“つながり”を演じることから、本当の絆が生まれることもある——。をテーマに制作したヒューマンドラマ。上坂監督に作品のこだわりについてお話を伺いました。
——本作とても楽しく拝見いたしました。昨年1週間限定上映した際は満席も相次ぎましたが、反響についてどう受け止めていますか?
まず、とても嬉しいです。本当に初めての自主制作での長編映画だったので、映画館で上映できたこと自体もビックリですし、今回こうしてラビットハウスさんが配給会社に入ってくださって、全国上映出来ることも心から嬉しいです。
友人や近い距離感の人たちと「ちょっと映画作りたいから手伝ってよ」ぐらいな感じでスタートした作品だったので、こうしてたくさんの方が関わってくれることに感謝しています。
——ご覧になった方からの評価も高いですよね。私も僭越ながら「初めての映画だなんて思えない」と驚きました。
ありがとうございます。一度関係者向けの試写をしたのですが、その時も良い感想をたくさんいただいて。ただ監督の僕に対してはみんな良いコメントはくれるだろうな、という部分もありつつ、上映中の試写室の雰囲気がすごく良かったので、これは本当に「良い」と思ってくれるのだろうなと感じ始めました。
その後、「中之島映画祭」で上映することになり、実際に大阪の会場に訪れた際、1,000人ほどの方が観てくださって。その中でアンケートでの得点が一番高い作品がグランプリになるのですが、『レンタル家族』が選ばれて本当に光栄でした。関係者では無い一般の方に選んでいただいて、しかもその母数が多いというのは自信になりました。
もちろん関係者の方に評価いただくこともとても嬉しいのですが、やっぱりメインで観ていただきたいのは観客の皆さんなので。
——アンケートの中で印象的だった感想などはありましたか?
監督:皆さん当事者意識を持ってご覧になってくださった様で、長文の感想も多くて嬉しかったです。観てくださる方の環境、精神状態によって共感出来るキャラクターが変わると思うんですね。「自分も今介護をしています」という方だったら、洋子と忠勝に共感する部分も多いでしょうし、洋子と忠勝でも状況が違います。その人物描写を興味深く楽しんでくださる方が多い印象でした。
——本作は「レンタルサービス」をテーマにしていながら、そのサービスを利用していなかったとしても、分かるなあという描写が多かったです。
設定として「レンタルサービス」を使っていますが、それ自体を深く意識はしていなくて、あくまで「これまでの人間関係の否定」と、「これからの人間関係の構築」をテーマに撮りたいなと思っていました。自分が描きたいテーマのギアとして使いやすかったのがレンタルサービスだったというだけで。
土井涼介さんという先輩と一緒に脚本を書いていたのですが、レンタルサービスを取材することはあえてしないようにしましょうと僕から言いました。その情報が強く入ってしまうと、そこに引っ張られてしまって、本来描きたかったことがブレるだろうなと思いました。
——洋子がはじめてレンタルサービスで豪に出会った時に、自分の身の上話をしますが、「他人だからこそ話せる」ことってあるよなあとしみじみしていました。
そうなんですよね。意外と近すぎると言えないことってたくさんある。僕は「家族」というコミュニティって特殊だと思っていて。友達だったり、仕事仲間だったら許せることも、家族っていうだけで、一言足りなかったり、逆に一言多かったり、関係が拗れてしまうことってありますよね。もちろん幸せな家族が多い方が良いと思うのですが、家族で無かったとしても他人だとしても、お互いに心を許せる関係って絶対あると思ってこの物語を作りたかったんです。
——すごく共感します。監督は以前からそういったことを考えていたのでしょうか?
企画自体は大学生の頃に思いついたもので、10年くらい前ですね。アメリカとオーストラリアに留学をしていたこともあって、人間関係のあり方について考える機会が多かったのかもしれません。良い側面でもあると思うのですが、日本は家族の結びつきが強くて、選択肢が狭い部分もあるのかなと。人間関係って一歩引いてみれば、お互いの立場ってさほど関係無いと思っていて、家族でも友人でも他人でも分かり合えれば素敵なのでは無いかと。
——そこから長い月日を経ても伝えたいメッセージが変わらず、こうして素敵な映画を完成させたわけですが、監督にとって何が一番大きなモチベーションでしたか?
数年前に父方の祖父が亡くなったのですが、お葬式で地元の兵庫県に帰った時に自分でもビックリするほど涙が出たんです。高齢だったので、そうやって最期が来ることはどこか仕方が無いと思っていたことだったのに、「自分の映画を観せることが出来なかった」ということがとても悔しくて。おじいちゃんも、僕が映画監督を目指して上京したことをしっていたので。
その時に、短編映画を作る構想などもあったのですが、どうせだったら自分が昔からやりたいと思っていた企画だし、長編を作ってみようと決意しました。それで完成したのが『レンタル家族』なのです。
こうして全国上映されることで、父方母方の祖父母も近くの劇場に観に行くことが出来るので、皆さんの力をお借りしたいです。たくさん観に来てくださったら、もっと劇場を広げることも出来ると思うので。ぜひよろしくお願いします。
——全国にさらに公開がひろがっていくことを私も楽しみにしています。今日はありがとうございました!
(C)KOHSAKA Pro
