「混み合う時間帯は避けたほうが安全」「ベビーカーはみんなで守るもの」――。ベビーカーで夕方のJR山手線を利用したという子どもの母親のX投稿をきっかけに、さまざまな意見が交わされている。
国土交通省とJR東日本は、ベビーカーを折りたたまずに電車へ乗車できると案内する一方、混雑時には周囲の状況に注意するよう呼びかけている。公共交通機関を利用する保護者の実情と、鉄道会社の見解を取材した。
混雑する電車でベビーカーの安全をどう守る?
〈人が降りたり乗ったりの度にベビーカー揉みくちゃで倒れそうになって シェードも開いて 必死で押さえた〉
7月末、ある母親がXに投稿した内容だ。その投稿によれば、ベビーカーを押して夕方の混雑した山手線に乗車した際に乗り降りする人の流れで倒れそうになり、ある男性に車両内にあるベビーカースペース(フリースペース)に誘導してもらった、というものだった。
これに対し投稿への返信では、
〈混み合う時間帯は避けたほうが安全です〉
〈こういう人のせいで子持ち様って言われるから迷惑〉
〈ベビーカーはみんなで守るもんやぞ〉
などさまざまな意見が寄せられ、混雑時のベビーカー利用をめぐる議論が広がっている。
ただし、国土交通省とJR東日本は、「電車内ではベビーカーを折りたたまずに利用できる」と案内している。混雑時についても乗車を避けるよう一律に求めているわけではなく、周囲の状況に注意し、安全に利用するよう呼びかけている。
X上では賛否が分かれたが、ベビーカーで公共交通機関を利用することは、多くの保護者にとって日常の一部だ。通院や保育園の送迎、買い物など、時間帯を自由に選べない事情もある。
国土交通省が実施したウェブアンケートによると、日常的な外出で子どもと鉄道を利用すると答えた回答者は全体の約半数、旅行・帰省時では47%にのぼった。
さらに、「他人の目線などが気になり、混雑時にこどもと一緒に利用しにくい」とする回答は日常的な外出で66.8%、旅行・帰省で61.3%だった。また、「混雑緩和や、子連れ優先時間帯・車両の設定」を求める声もそれぞれ65.0%、62.8%にのぼった。
同資料では、保護者から自由記述でさまざまな困りごとや要望が寄せられている。
「時間帯を気にせず利用できるようになると良い。混雑時間帯を避けて利用を考えると外出先が限られてくるため、断念することが多い」
「混雑時に、申し訳ないとは思いつつ利用することがありますが、お客さんも運転手さんもピリピリしているように感じることがある。どうしても使わなきゃ行けない時間だったりするので、時間をズラしたりなど出来ない理由があるのを理解していただきたい」
「公共交通機関を利用しようとするときは、特にベビーカーを使用します。子供の荷物がたくさんあるので、混雑時にベビーカーを畳むことができません。ご迷惑をおかけして申し訳ないと思っていますが、どうしても畳むことが難しいです」
など、「混雑時でも電車を利用しなければならない」「混雑時にベビーカーを折りたたむのが難しい」といった保護者のリアルな声が多くあがっている。
鉄道会社で進められるベビーカー対応…JRの見解は
こうした状況を受け、鉄道各社ではベビーカー利用者を想定した設備やサービスの充実を図っている。
特に多いのは、ベビーカーや車いすを利用する乗客が使いやすい「フリースペース」の設置だ。現在、多くの鉄道会社で設置が進められている。
さらに設備面では、京王電鉄が2000系の5号車に大型フリースペース「ひだまりスペース」を設置している。また小田急電鉄では、一部をのぞく通勤車両の3号車を「子育て応援車」とし、ステッカーなどを通じて子ども連れを温かく見守るよう呼びかけている。
こうしたなか、山手線を運行するJR東日本は、どのような対応を進めているのか。同社は、国土交通省が設置した「子育てにやさしい移動に関する協議会」に賛同し、子ども連れの利用者が安心して移動できる環境づくりを進めている。
その一環として、2014年8月から普通列車の「車いすスペース」にベビーカーマークを順次掲出。また、2015年に営業運転を開始した山手線E235系では、各車両にフリースペースを設置するなど、車両のバリアフリー化に取り組んでいる。
だが、フリースペースが設置されていたとしても、混雑する車内ではその場所まで移動することがままならないケースもある。
同社はホームページ(「ベビーカーの安全なご利用のために」)でも、ベビーカー利用者に対して以下のように呼びかけている。
「混雑している時間帯は、周囲の状況に注意を払い、安全に気を付けていただきますよう重ねてお願いいたします」
この記載について、同社の担当者は次のように説明した。
「『周囲の状況に注意を払い、安全にご利用いただく』とは、お客さま同士で周囲の安全に配慮し、譲り合ってご利用いただきたいという趣旨であり、当社として『空いている列車を待つ』ことや『ベビーカーを折りたたんで乗車する』ことなど具体的な行動を想定し、お願いをしているものではございません。また、当社では駅構内や列車内でベビーカーを折りたたむことをご利用の条件とはしておりません」
国土交通省による啓発ポスターにおいても、ベビーカー使用者と周囲の人に対して「お互いに思いやりの気持ちを」と訴えている。
ベビーカー利用をめぐっては、子育て世帯が公共交通機関を利用する実情を踏まえ、安全性の確保と、ベビーカー利用者と周囲双方の理解と配慮が求められている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

