高市早苗首相が来年4月からの実現を目指す飲食料品の消費税減税に向けて、8月5日の自民党臨時総務会は「全会一致」で了承した。もっとも、その実態は笑えない茶番劇だった。総務会メンバー25人中、実に3分の1を超える9人が姿を消したのだ。
「海外出張」のためやむをえず欠席したメンバーもいたが、明らかに高市首相の方針に反旗を翻し、ボイコットしたのが中谷元前防衛相、そして前税制調査会長の宮沢洋一氏だった。
とりわけ、これまで幾度となく減税を阻んできた「最大の障壁」であり、「ラスボス」と恐れられる宮沢氏は、秋の臨時国会に向けた最大の時限爆弾となっている。
なぜ宮沢氏ら一部の参院議員の動向が、そこまで脅威なのか。答えは単純で、自民・日本維新の会の連立与党が参院で過半数を握っていないからだ。
記憶に新しいのは、7月24日夜の「副首都法」をめぐる参院本会議での採決。結果は賛成123票、反対121票という「わずか2票差」の大接戦だった。しかもこの時、自民党からは2人が「体調不良」を理由に欠席したため、まさに薄氷を踏む思いだった。与党の足元は想像以上に脆いのだ。
「倒す」どころか法案を通すために頭を下げるハメに
秋の臨時国会での、消費税減税法案の行方をシミュレーションしてみよう。先の副首都法に賛成した「チームみらい」などが反対に回り、仮に日本保守党が賛成に回ってくれたと皮算用しても、賛成派(自民・維新・保守)は125議席。過半数ラインの124議席に対して、わずか1議席の余裕しかない。
つまり宮沢氏をはじめ「たった5人」が造反、あるいは「体調が悪い」などの理由で採決を欠席するだけで、高市首相の看板政策は無残にも否決されることになってしまうのだ。
元大蔵官僚であり、財政規律を何よりも重んじるのが宮沢氏だ。約8年にわたり党税調会長に君臨し、「彼をパスして税制はいじれない」とまで言われた絶対権力者。高市首相や彼女を支える積極財政派からすれば、減税実現のためには「最後に倒さなければならない最も強力なラスボス」であったはずだ。
だが参院の議席という非情な現実の前に、構図は完全に逆転。「倒す」どころか、法案を通すために頭を下げ、協力を請わなければならない相手になってしまった。
宮沢氏は党の規律に従い、おとなしく賛成票を投じるのか。それとも元大蔵官僚のプライドにかけて「刺客」となり、減税法案を葬り去ろうとするのか。高市首相の首根っこを掴むラスボスの決断から、秋の国会は一瞬たりとも目が離せない。
(岡田哲司/政治ジャーナリスト)

