2018年までに来日した29歳のディラン・ライリーは、ラグビー日本代表の主軸である。広い範囲をカバーするアウトサイドセンターで、長らく主軸を張る。
身長187センチ、体重102キロの強靭な身体でスピードが豊か。防御を自身の手前まで引き寄せながらスペースにパスを放ったり、穴場へキックを転がしたりと、スキルフルでもある。守備範囲も広い。欧州列強に1勝2敗という7月のネーションズチャンピオンシップでも、随所に持ち味を発揮した。
大会中はアイルランド代表との2戦目の途中、相手の指が右目に入ってしまってから20分ほどプレーした後交代。続くフランス代表との3戦目では問題なくプレーした。
約1週間のオフを経過し、目下見据えるのは対オーストラリア代表2連戦である。南アフリカから10歳で移住し、いま取り組んでいるスポーツと出合った国が相手だ。
「ラグビーを始めたのがオーストラリアで、それを伸ばしてくれたのが日本という位置づけです。オーストラリアに住んでいる家族の前でプレーすることも、特別ですね」
現在の世界ランクで2つ上回る8位の難敵でもある。自身が代表に入ってから過去に2度、直接対決。まずは8日に東大阪市花園ラグビー場で通算1勝目を目指し、15日には地元のクイーンズランドカントリーバンクスタジアムで初のアウェー戦に臨む。
直近の流れを踏まえ、加速度的に攻めるスタイルで有効打を打ちたいという。
「タフなゲームになる。きっと互角の勝負です。私たちは強みのスキルでボールを動かす。それをタイトな場所で行なう。いまラグビーで大事になっている空中戦(高い弾道の競り合い)で勝つことも重要です」
オーストラリアでは才能を買われながらもプロになれず、才能が開花したのは2017年に来日してからだ。テスト生を経て契約の現埼玉パナソニックワイルドナイツで複数のタイトルに浴し、日本代表としても41キャップ(代表戦出場数)を得た。
ワイルドナイツに愛着があり、かねて海外からのオファーが来ても断ると宣言している。
「いまいる環境は心地がいい。ここで自分のキャリアをどんどん積み重ねたいと思っています」
24年に一気に若返りのなされた代表チームでは、37歳で95キャップのリーチ マイケルに次ぐ経験値を有する。昨年は「組織内でのレコグニション(成果を認めること)が大事だと思い、勝っても負けても選手の働きを称賛しました」と、チーム内表彰の取り組みをリードしていた。いまも後輩を支える。
「(代表の)環境のもと、(若手に)楽しめとは言わないまでも、できるだけ重圧を軽減させたいとは思っています。(今後は)個人的には自分の強みを活かしたい。キャリー(突進)して、チャンスを作る。フィジカルに戦いながら、スピードも活かします。チームとしては80分間、相手にプレッシャーをかけたいです。試合の流れをコントロールしたい」
左腕にタトゥを刻む。和柄のデザインで、片目に墨の入った達磨の絵がある。
願いが叶ったら達磨の両目を黒くするという日本の文化を数年前に友人やパートナーに教わり、そのミッションを自身の皮膚の上で成し遂げようとしているのだ。
翌27年にはオーストラリアで自身2度目となるワールドカップ出場を目指すトップアスリートは、黒目をつけるためにかなえたい願いについて紳士的に述べる。
「タトゥを入れる時に一生をかけて達成することを決めました。ゴールが何か、ここでシェアすることは控えたいです。ラグビーと無関係な、人生の大きな目標なので」
人生の一部としてのラグビーにおいても、大きな成果を示すつもりだ。
取材・文●向風見也(ラグビーライター)
【動画】第3戦・フランス戦ハイライト
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