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【甲子園】佐野日大が積み上げてきた「粘りの野球」──指揮官からエースへつながる数奇な運命<SLUGGER>

【甲子園】佐野日大が積み上げてきた「粘りの野球」──指揮官からエースへつながる数奇な運命<SLUGGER>

まるでシナリオでもあったかのような結末に、試合後は鳥肌が立った。

 春夏連続出場の佐野日大が1-0で聖隷クリストファーを下し、2回戦進出を決めた。エースの鈴木有が102球の完封勝利。今年のセンバツでは1回戦で敗退していただけに見事なリベンジだが、数奇な運命を感じさせたのはそのスコアだ。

 指揮する麦倉洋一監督は同校の選手として平成元年の夏の甲子園に出場し、甲子園で1勝を挙げている。その時のスコアが、今回と同じ1-0の完封勝利だったのだ。

 平成に元号が変わった最初の夏の甲子園で、開幕戦に先発し完封勝利。それも自身のソロ本塁打で勝利した。麦倉は平成最初の初勝利、初完封、初本塁打を記録した人物となったのだ。

 その麦倉の勝利と同じく、教え子のエース鈴木が1-0の夏の甲子園初戦で完封勝利を収めたというのは、何とも数奇な運命である。

「監督さんが甲子園で完封していたことは知っていました。試合中は特に意識はしていなかったですけど、結果的に、同じことができて嬉しい気持ちはあります」
  鈴木は130キロ台の直球と多彩な変化球を操り、コーナーを突く投球術で打者を翻弄する。150キロを超える剛腕が珍しくない現在の高校野球で、鈴木の投球スタイルは前時代的とも言えるかもしれない。しかし、本人に矜持はある。

「本当は150キロ出せるなら出したいっていう気持ちはあるんですけど、コントロールで全国レベルでも通用するっていうことは、センバツのいろんな投手を見ていてもわかってたんで、そこは球速は気にしてないわけではないですけど、あまりこだわらずにやってます」

 その自信の裏には、かつてプロの世界も経験した恩師の存在がある。高校卒業後に阪神に入団した経験を持つ麦倉監督について、鈴木は元プロの片鱗が見えると語る。

「たまにバッティングピッチャーしてくださるんですけど、その時のコントロールだったり、そういうのは今の歳になってもものすごいというか、ボールを1球も投げないようなコントロールを持ってるので、そこは尊敬というか、目標にしたいです。変化球だったりテンポとかだったりっていうのは、監督さんに教えていただいたことなので、それを今日の試合で発揮できたのかなと思います」
  一方の麦倉監督は自身の現役時代と同じ「1-0」での勝利について感慨深くこう語った。

「うちはこういう野球しかできませんので、粘って粘ってやれば、こういう良いこともあるし、たとえ負けたとしても、うちの野球、最後まで粘ってやると、そういう思いが生徒たちにも強い気持ちを作ってくれたと思います」

 ロースコアの接戦は、チームが想定し、磨き上げてきた形だった。「勝つのであれば1-0、2-1、もうこういうゲームしかうちはできませんので。鈴木はその通り投げてくれたので、あいつを信じろっていう感じですよね」

 春の選抜では初戦敗退。この試合での発展途上の投球が、鈴木をもう一段階上のステージへと引き上げる「きっかけ」となった。麦倉監督は試合後に元プロのマインドを垣間見せ、「ピッチャーはインコースを使えないと勝てないですね」と振り返っている。投手として勝てる要素が何であるかのヒントを、メディアを通して語ったのだった。

 単なる敗因としてでなく、ピッチャーが持つ素養として話したのだった。だから、鈴木に対しては厳しくは言わなかったという。

「俺自身があまり言われるのが好きじゃなかったんです。とやかく言わなくても、ここは行かなくちゃダメだよ、痛い目あったでしょって。これからもっといいピッチャー、ワンランク上がるには必要だよねしか言ってないです。日頃の練習からこうしろああしろとは言わないです」
  選手自身が気づき、つかみ取ることを重んじる。「自分でいろいろ聞いたりして。で、やってみて、あ、これいけた、ここもいけた、これダメだったっていうのを自分で分かった時から良くなった」という経験が自分にあったからこそ、鈴木にもそれを促したのだった。

 鈴木はその意図を汲み取り、インコースへの厳しい攻めを自分のものにしていった。麦倉がいうには、春の関東大会の健大高崎戦あたりから、鈴木の投球は明確な変化を見せ始めたという。インコースを突く勇気と技術を手に入れたことで、外角への投球や変化球がより一層活きるようになった。

「今日は最初からインコースに攻めていったでしょ。いってから組み立ててるんで、あれをいけるかいけないかで、あいつのピッチング幅がまた広がるんです。気候も気候だし、今難しい時代になってきてますけど、今日夜だったんで、涼しい中よく投げてくれて、それでも球数も102球ですから、やっぱりあいつらしい球数ですね」

 時を超えて重なり合った「1-0」の勝利。それは佐野日大が長く積み上げてきた「粘りの野球」が、甲子園の舞台に帰ってきた事を知らしめるものかもしれない。

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配信元: THE DIGEST

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