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「昔の私なら絶対に言えなかった」ELT持田香織が明かす「嫌いなもの」を口にするようになった理由

「昔の私なら絶対に言えなかった」ELT持田香織が明かす「嫌いなもの」を口にするようになった理由

デビュー以来、Every Little Thingのヴォーカルとして数々のヒット曲を歌い続けてきた持田香織。華やかな音楽シーンの只中で「突っ走ってきた」日々を経て、いま彼女が大切にしているのは、自分の身体の声に耳を澄ませること、そして「何が好きで、何が嫌いなのか」を丁寧に見つめ直すことだという。

 

東京を舞台にした三部作構成のライブツアープロジェクト『TOKYO TOUR TRILOGY』も進行する中、持田はどのように自分の感性と言葉を取り戻してきたのか。表現者としての現在地を聞いた。〈前後編の後編〉

突っ走った30年のあと、大事になってきた自分の「嫌い」

筆者の前で話す持田香織は、かつてテレビで見ていた印象のまま、ただそこにいるだけで時間がゆったり流れるような、そんな雰囲気を纏っていた。清涼感の中にぬくもりを感じる声も、当時のままだ。だが同時に思う。生き馬の目を抜く芸能界において、アーティストとして長く活動を続けることは、心身への負担も大きかったのではないか。

「デビューからずっと、本当に『突っ走った』という印象です。自分は楽しくやらせてもらって気が付かなかったけれど、30歳を目前にして、これまでできていたことができなくなることが増えました。きっと身体は疲れ果てていたんですよね。

それで、身体を軸にして活動していくようにシフトチェンジしなければダメなんだと学びました」(持田香織、以下同)

これまでと同じく「突っ走る」のでは身体が疲弊する。30歳前後で身体の使い方を考えるフェーズに差し掛かった。

一方で、現場で出会ったプロフェッショナルたちとの交流は、大いに刺激的だったと持田は話す。

「芸能界では、『自分はこれが好きなんです』というものを明確に突き詰めた大人たちとの出会いがありました。そうした人たちは、自分が何を好んで、何を好ましく思わないのかをはっきりさせていました」

翻って、当時の持田は、現在ほどは自分の好き嫌いを把握していなかったと振り返る。そもそも興味の対象も限定的だった。

「1990年代~2000年代は、今ほどいろんなことに興味が持てていなかったかもしれないですね。『漫画が好き』とか、局所的なことはあったのですが、興味の対象が狭かったなと感じます。どちらかといえば現場で出会う人たちと自分から積極的にコミュニケーションをするタイプでもなく、今思えば少しもったいないですよね」

だが多くのプロフェッショナルとの邂逅は、確かに持田の中にその痕跡を残した。多くのファンに支えられながらキャリアを重ねる中で、自分そのものに向き合う時間が生まれてきた。持田は改めて自らの内面の声に耳を傾けたという。

「『突っ走った』状態のときは、自分が何を好きで、何を嫌いなのか、曖昧になってしまった時期がありました。といっても、そんなに大げさなことではないんです。今になって思うと『先が鋭利すぎる靴は、私、あんまり好きじゃないな』とか(笑)。『丁寧な言葉づかいが好きなんだな』とか。本当に些細なことかもしれないんですけど。でもその感性って意外といろんな場所に繋がっているのかなと思うこともあります」

子育てを経て、自分の感性と言葉にもう一度耳を澄ませる

ここ最近の持田は、自分が何を好きで、何が嫌いなのかを大切にしているという。嫌いなものについて話すことなど、「昔の自分なら考えられない」。だがあえて何が嫌いかを口にすることに、意味があると気付いた。

「以前ならば、仕事柄、『お互いに気持ちよく終われるように』という部分を優先してきたと思います。少なくとも、インタビューで『先の尖った靴が好きじゃないんですよね』なんて絶対に言わない(笑)。それは履いている人に失礼だからですね。

でも、オブラートに包みすぎてしまうと、嫌いなものが判然としなくなってしまうんですよね。嫌いなものをきちんと意識することで、逆に好きなものが明確になるように思うんです。そして、『それでいいんじゃないか』と思えるようになりました」

感じるままを口にしてもいいと思えたのは、「どちらかといえば本を読み慣れていない」と話す持田が以前から好んで読み、喫茶店にも持ち歩くという愛読書の影響もあるかもしれない。

「画家の堀文子さんの著書が好きなんです。温泉地の宿に置いてあったのがきっかけで読むようになり、帰ってから探し求めたほどです。さまざまな著名人との対談が収録されているのですが、そこで話されている日本語、話し言葉が美しく、勉強になります。言葉は時代とともに変化していくものですが、少し立ち止まって本来の使い方やその意味を考え、普段から意識してみると、また違う景色が見えてくるような気がします。

その書籍の中に、『嫌いなものを大事に持っていることはよいことだ』という内容のことが書いてあるんです」

持田は言葉を大切にする。丁寧に紡がれた言葉に感銘を受けるのは、書籍だけではなく映像作品でも同じだという。

「ここ最近夢中になっているのは、小津安二郎監督の映画作品です。入口は着物だったんです。以前から、現代着物ではない、年代の古い着物が好きでした。アンティーク着物のお店を訪れたとき、小津安二郎作品でも使用されていることを知って、拝見しました。

着物の質感が素敵なのはもちろんですが、次第に作品に登場する役者さんたちの日本語のきれいな言い回しなど、すべてが心地良く感じられるようになったんです。私は、古めかしいけれど丁寧に作られたものに心を奪われるかもしれません。

たとえばヴィンテージマンションとかも見惚れてしまいますし、古い車がたまに車道を走っているのを見ると目で追ってしまいます」

あえて“嫌い”と“好き”を見つめ直し、自身の感性と向き合うこと。アーティストとして30年、言葉で人々と向き合う持田香織の進化は止まらない。

現在、東京を舞台にした三部作構成のライブツアー『TOKYO TOUR TRILOGY』を開催中。10月11日(日)には東京キネマ倶楽部で第2章「PAST」、12月5日(土)には草月ホールで最終章「PRESENCE」を迎える。チケットの詳細は、持田香織オフィシャルサイトにて。

取材・文/黒島暁生 写真/本人提供

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