
累計発行部数6000万部を突破する大人気コミックを実写映画化した「ブルーロック」が現在公開中。本作でチームZの一員として作品に参加したのが、若手実力派俳優の倉悠貴と西垣匠だ。それぞれの役作りでのこだわりから、特殊な共同生活を描く作品への思い、さらには映画「六人の嘘つきな大学生」(2024年)でも共演し、プライベートでも親交の深い2人の関係性まで、軽快なトークで語り合った。
■未経験から飛び込んだ『ブルーロック』の過酷なトレーニング
本作は、世界一のストライカーを育成するため、300人の高校生FWが集められた実験的施設「青い監獄(ブルーロック)」を舞台にしたサバイバル群像劇。西垣は、お調子者ながら家族を背負う覚悟を持つ成早朝日を、倉は、日本サッカー界の若き天才であり、物語の重要な鍵を握る吉良涼介を、それぞれ人間味豊かに演じる。
――原作の印象と、実写化の話を聞いたときのお気持ちは?
西垣匠(以下、西垣):僕はもともと原作を読んでいて、スポーツマンの心を燃え立たせてくれる素晴らしい作品だなと思っていました。ですから実写化に自分が関われると知ったときは驚きました。高校1年生の役ということもありますし、熱狂的なファンの方が多い作品なので「これは大変な挑戦になるな」と身が引き締まる思いでした。ただ同時に、次の時代に向けて「新しい映画はこういう形で作れるんだ」と提示できる作品になるはずだと確信したので、自分にできるチャレンジをしようと決意しました。
――サッカー未経験から成早朝日を演じるにあたり、どのような準備をされましたか?
西垣:とにかくサッカーの実技練習に通わせてもらいました。それと同時に、撮影スケジュールがかなり過酷になると事前に聞いていたので、耐えうる体を作るために食べる量を増やし、体力作りに努めました。結果的に、自然と体が大きくなっていきましたね。
――倉さんは、高校サッカー界のスターである吉良涼介を演じました。オファーを受けたときはいかがでしたか?
倉悠貴(以下、倉):僕はサッカーの経験がまったくなかったので、最初はとても不安でした(笑)。ただ、撮影までに時間があったので、練習する期間は十分に確保できました。技術を一から極めて上手くなるのは非常に難しいので、今回は「吉良としての正確な動きを、いかに映像で美しく再現するか」という部分に重きを置いてなんとか乗り切りました。
――練習では、どのようなアプローチをとったのでしょうか。
倉:撮影前から1年近く、大勢のキャストと一緒に基礎練習を行いました。でも、普通のやり方ではトップ選手の動きを再現するのは無謀だなと感じたんです。言ってしまえば、自分が劇中で見せ場としてアクションを行うのは限られた数シーン。それなら早い段階で見切りをつけて、自分が劇中で実際に行う動きを重点的に個人練習する方向に切り替えた方がいいなと。個人練習を繰り返すことで、なんとか形にできたのかなと思います。
――西垣さんは実際のサッカー経験はどのくらいあったのですか?
西垣:本当に体育の授業でやったことがある程度で、シュート時のボールの当て方すら知りませんでした。足の当てる場所によって「こんなにシュートの威力に差があるんだ」と驚きましたし、ドリブルの仕方も含めて、すべてが難しいなと感じていました。周りのキャストと比べてなかなか上達せず、後ろ向きな気持ちになってしまうこともありました。
――その状況をどのように乗り越えたのでしょう?
西垣:(サッカー監修の元日本代表の)松井大輔さんが参考になる動画を撮影して送ってくださったり、コーチや他のキャスト陣が本当に親身になって教えてくれたりしたんです。「この方たちのために頑張らなきゃ」という思いで取り組み、なんとか撮影までにそれなりの形にすることができました。
――技術的に一番難しかった部分はどこですか?
西垣:やはりドリブルですね。ディフェンスの動きに関しては、僕が以前やっていたフェンシングのステップや間合いの取り方に通じる部分があり、「この動きでいいよ」と分かりやすい指示をいただけたので落とし込みやすかったです。ですが、ドリブルやシュートで「ボールのここに当てなければいけない」という感覚を掴むまでは本当に長かったです。
■キャラクターを“人間”として存在させるためのアプローチ
――それぞれのキャラクターを演じる上で、大切にしたことを教えてください。
西垣:成早は、チームZの最年少である15歳の高校1年生です。無邪気でお調子者な面がある一方で、私生活では複数の妹や弟を支えるお兄ちゃんでもあります。ですので、点を取ったときの子供らしい無邪気さと、チームを鼓舞するときの頼もしい声の掛け方という、弟っぽさと兄っぽさの二面性を意識して使い分けるようにしました。
倉:吉良に関しては、ストーリーの展開上、ある意味で大きく「ひっくり返る」役割を持っています。そのため、前半部分では内に秘めた部分は極力隠すようにしました。吉良の名前は「キラキラ」から来ているというのが僕の持論なんですけど。
西垣:本当? 適当なこと言っていると怒られるよ(笑)。
倉:まあ僕の勝手な解釈なんだけど(笑)。極力キラキラした、表舞台に立つスターとしての姿を意識して演じていました。でも吉良って自分の性格を隠すようなお芝居というか、ある意味で“吉良という人物”を演じているようなキャラクターだと思ったので、変な話「ちょっとわざとらしく、セリフっぽく言ってみる」というアプローチをしました。そういった免罪符があるようで面白かったですし、新たな発見もありました。
――アニメのキャラクターを実写化する上で、難しさはありましたか?
西垣:いかに「3次元の生身の人間」として存在させるかという点に一番頭を悩ませました。髪色も含めてアニメのキャラクターを、現実の人間に落とし込まなければいけません。消してはいけないキャラクター要素と、人間としてのリアリティのバランスをどう着地させるか、ずっとその塩梅を模索しながらお芝居をしていました。僕自身との性格的な共通点は、実生活でもお兄ちゃんという点くらいですね。
倉:僕も明るさや誠実さは自分にないので似ていません(笑)。ただ、吉良という人物は、世間から求められる「吉良涼介」という完璧なキャラクターを自分の中で作り上げて演じている人間だと思うんです。そこは役者の仕事とも共通する部分があるので、あえて少し演技がかった表現を取り入れるのは楽しかったです。
――自分に一番近いなと思うキャラクターは誰ですか?
西垣:実はゲームが好きなので(K演じる)凪誠士郎と言いたいところですが…やはり自分の演じた成早ですかね。周りからはよく「弟っぽい雰囲気」と言われますが実際は長男なので。
倉:僕は(青木柚演じる)五十嵐栗夢です。みんなの武器について話すシーンで、彼が「諦めない心」と堂々と言うのが潔くて好きなんですよね。僕自身もそういう部分があるなと感じています。
■倉悠貴「現場に気心の知れた西垣がいてくれたことは本当に心強かった」
――『ブルーロック』では「エゴ」が重要なテーマですが、ご自身の譲れない「エゴ」はありますか?
西垣:どんなに忙しくても「朝食をしっかり準備して食べる時間」は大切にしています。朝が早くても、前日の夜にお米をセットして、翌朝は自分で味噌汁を作り、鮭や卵焼きを焼いて食べる、という生活リズムを大切にしています。休日も必ず朝食は作りますね。
倉:お芝居において「自分のやりたい手札をしっかりとテーブルの上に提示すること」です。最近は先輩方と共演させていただく機会が増え、自分のやりたいことを出すのに臆してしまう瞬間もあるのですが、そこで萎縮して何も出さないのは失礼だなと思うんです。最終的な取捨選択は監督にお任せするとしても、まずは自分の手札をきちんと提示することは、俳優を続ける上で曲げずにいたいエゴですね。
――劇中のような共同生活について、もしあのキャスト陣で生活をするとしたら?
倉:僕は絶対に嫌ですね(笑)。みんな各々のエゴが強いですし、あの空間で生活を共にするのは気が休まらないと思います。グラウンドに布団を並べて普通に雑魚寝している描写を台本で読んだときも、「ここで寝るんだ!」と驚きました。
西垣:僕も楽しいとは思いつつも、週休2日制にしていただけないと厳しいです(笑)。どれだけ仲が良くても、僕自身の中に定期的に「どうしても1人になりたい時間」が発生するので、完全に隔離された状態で半年間ずっと一緒というのはお腹いっぱいになってしまいますね。
――プライベートでも親交の深いお2人ですが、今回の現場でお互いの存在はどうでしたか?
倉:今をときめく同世代の俳優が集まる現場だったので、正直最初はかなり緊張していました。ですので、現場に気心の知れた西垣がいてくれたことは本当に心強かったです。僕が現場に馴染めずにいたところを、西垣と青木柚くんの2人が面倒を見てくれたおかげで、なんとか乗り切ることができました。今回、西垣には本当に「ありがとう」と何度も伝えました。
西垣:確かにずっと僕の後ろにくっついていましたね(笑)。でも僕たち以外のキャストもみんな本当に仲が良くて、この間も10人くらい集まってフットサルをしたんですよ。
■2人が夏の思い出を明かす
――今回の映画で、特にこだわったシーンはありますか?
倉:鬼ごっこの終盤のシーンは非常にこだわって撮影しました。アニメ版の表現に引っ張られすぎないようにしつつも、原作ファンの方々が大切にしているセリフの間やニュアンスは意識して、自分なりに寄せるように工夫しました。あと、悔しさに任せてボールを思い切り蹴るシーンがあるのですが、それを「(窪田正孝演じる)絵心の顔に当てるように見せたい」と自分から演出の提案をさせてもらったりもしました。
――映画は8月の公開を予定していますが、お二人の「夏の思い出」や、リフレッシュできるお気に入りの場所を教えてください。
西垣: 子供の頃、父親の実家がある鳥取の海に行ってシュノーケリングをしたことが一番の思い出です。海の生き物が大好きなので、またいつか行きたいですね。
倉:僕は毎年、広島の尾道に行っています。映画の撮影で行って以来、その穏やかな空気感や街並みに魅了されてしまい、今でも1年に1回は必ず訪れて心を落ち着かせるようにしています。自分の中では「日本のカンヌ」だと思っているくらい、大切で馴染み深い場所です。
――毎年訪れる特別な理由があるのですか?
倉:あの空気感がすごく好きなんですよね。心が洗われるような感覚があって、馴染みのホテルやお店もあるので、今年も「尾道の季節がやってきたな」と感じています。年齢を重ねるごとに、1年に1回必ず行くような恒例行事は少なくなっていくので、そういう習慣は大事にしたいなと思っています。
◆取材・文=磯部正和/撮影=梁瀬玉実/スタイリスト=石橋修一(西垣)、伊藤省吾(倉)/ヘア&メーク=細野裕之(西垣)、宮本愛(倉)

