広島カープの新井貴浩監督は就任4年目を迎えたが、チームは2023年の2位から2024年4位、2025年5位と順位を下げ続け、今季も勝率4割前後で低迷している。指揮官の進退が注目される中、後任をめぐっては野村謙二郎氏、金本知憲氏らカープOBが俎上に載り、黒田博樹氏や石原慶幸バッテリーコーチを推す声もある。いずれもカープと縁が深い人物ばかりだ。
ところが、だ。カープファンの間では、全く別の人物が取り沙汰されているというのである。
きっかけは2026年6月、交流戦で広島を訪れた日本ハム・新庄剛志監督の発言だった。試合後、マツダスタジアムについて、
「少し前のガラガラの映像を見た時に、すごい寂しくなった。球場に足を運んでくれたら選手の力になる」
なんと敵地のファンに、異例の呼びかけを行ったのだ。対戦相手の監督が相手チームのファンに来場を促すなど、そうあるものではない。
そこで一気に盛り上がることになったのが「次期カープ監督は新庄で」「カープ再建には新庄が必要」との待望論だ。
新庄監督は2022年に日本ハムの指揮官となり、2年連続最下位に沈みながらも清宮幸太郎、万波中正ら若手を積極的に起用して、チームを作り直した。その結果、2024年と2025年は2年連続2位に躍進し、2025年には球団2位タイとなる83勝を記録した。この手腕に、名だたる球界OBは賛辞を惜しまない。
「4年でここまでのチームに仕上げてくるだけでも、すごいことだと思う」(落合博満)
佐々木主浩氏は送りバントや思い切った作戦を挙げて、采配を評価。里崎智也氏も「育てながら勝つ」選手起用を高く評価している。話題性だけでなく、育成と勝利を両立させた監督として、球界での評価は定まりつつあるのだ。
日本ハムとの2027年以降の契約はまだ確定しておらず、球団側も監督人事を白紙としている。新庄監督自身はYouTube番組で、
「あともう1、2回ぐらい監督すると思う、他のチームで」
と発言しており、去就は極めて流動的な状況だ。
監督だけをすげ替えても運営が従来のままではダメ
では「広島・新庄監督」実現の度合いはどれほどか。カープの監督人事を振り返ると、2006年から2009年はマーティー・ブラウンが指揮を執ったが、2010年の野村謙二郎以降は緒方孝市、佐々岡真司、新井貴浩と、いずれもOBが続く。
もし新庄監督を迎えるとすれば、16年以上も続くOB監督路線から外れる異例の人事となる。加えて新庄流の改革には選手起用だけでなく補強や編成、広報、ファンサービスまで球団全体の協力が必要であり、監督だけをすげ替えても運営が従来のままでは、何も変わらない。
今季のカープは羽月隆太郎の指定薬物事件に加え、その関連捜査が複数の所属選手に及ぶ異例の事態に見舞われており、チームを取り巻く空気は重い。マツダスタジアムでは今季すでに3度、観衆が2万人を下回っており、かつてプラチナチケットと呼ばれた時代から様変わりした。
新庄監督待望論が出るのは「この男なら何かを変えてくれるかもしれない」という期待によるものだけではない。今のままでは何も変わらない、という閉塞感の裏返しなのだ。
(ケン高田)

