楽しくなければテレビじゃない──お台場の某局はそう喝破したが、既成概念を覆すような面白さの追求が、かつての制作現場、特にバラエティー番組に携わる者たちの中で沸々としていた。あの最も熱かった時代を知る映像ディレクターが、破天荒な愛しき異才たちとの日々を語る!
「『芝生に入れない』ってどういうこと?」
2013年春、佐々木敦規はももいろクローバーZ(以下、ももクロ)のマネージャー・川上アキラから伝えられた驚愕の内容に思わず頭を抱えてしまった。
この年の8月4日、日産スタジアム(横浜国際総合競技場)で、ももクロのライブ開催が決定。この会場での女性グループの単独ライブは初だった。ももクロにとっても、その時点での最大規模6万人を動員する一大イベントである。
演出を手掛ける佐々木も、初のスタジアムライブを前に「どデカい花火を打ち上げよう!」と構想を練り始めた。冒頭のセリフは、その矢先の通告だ。
「会場側から『芝生への立ち入りは一切禁止ですが、それでよければ』と言われ、川上さんがその条件を吞んでしまって(苦笑)」
通常、野球場やサッカー場で開催する「スタジアムライブ」では、グラウンドを傷つけないように養生シート等を敷き、その上に椅子を並べてアリーナ席を作って観客を入れる。
ところが、日産スタジアム側は「試合が近いから」と芝生が荒れるリスクを懸念して、会場使用の条件に「芝生に立ち入らないこと」を入れたのだった。
「ライブはアーティストと観客との一体感が生命線です。日産スタジアムには陸上のトラックが併設されていて、グラウンドからスタンドまで距離がある。その上、中央の芝生に観客席が作れず、真ん中がポッカリ空いた状態でのライブになる。そんな状況で一体感は得られるのか‥‥。あの絶望感はいまも覚えてます」
しかし、佐々木の辞書に“無理”の2文字はない。
「『通常のスタジアムライブ』ができないことはわかったので、僕は次の瞬間から『それならこの条件でできることは何か?』を探していったんです」
どんなピンチに直面しようと、投げ出さず逃げ出さず「何とかする」ことに全力を注ぐ。この切り換えの速さが佐々木の真骨頂だ。
「テレビの現場でさんざん揉まれたので、何が起きてもギブアップしないんですよ。無理難題の『無茶ぶり』はされて当たり前の世界で生きてきましたから」
佐々木敦規(ささき・あつのり)1967年生まれ。演出家・映像ディレクター。フィルムデザインワークス取締役。「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!」「とんねるずのみなさんのおかげでした」「IPPON GP」などのバラエティー、K-1やプロレスなど格闘技番組の演出を経て、ももクロのステージ演出を手掛ける。
取材・構成/茂田浩司(ライター&編集者)

