
“ドイツ表現主義”を代表する一本として知られるロベルト・ヴィーネ監督の『カリガリ博士』は、夢遊病患者のチェザーレ(コンラート・ファイト)を操りながら殺人を繰り返すカリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)の正体に迫ろうとする青年フランシス(フリードリッヒ・フェーエル)を描いたサイコスリラー。“サスペンスの神様”アルフレッド・ヒッチコックにも絶大な影響を与えたとされ、映画史における極めて重要な作品としていまも語り継がれている。
誕生から数十年のあいだ、幾度も続編やリメイクの製作が試みられたが、権利関係などを理由に実現には至らず。リメイク権を獲得したハリウッドのプロデューサー、ロバート・リパートが手掛けた『怪人カリガリ博士』(62)はタイトルや役名を拝借したのみでほぼ無関係。また、トム・パラッツォーロ監督の『Caligari's Cure』(83)や博士の孫娘を主人公にした『Dr.カリガリ』(89)、『The Cabinet of Dr.Ramirez』(91)、『The Cabinet of Dr.Caligari』(05)など、影響を受けた前衛的作品は存在しているものの、現在まで決定的な続編・リメイクが作られたことはない。

そうしたなか今年2月、『デビル』(10)や『地下に潜む怪人』(14)などを手掛けたジョン・エリック・ドゥードル監督のメガホンによって『Doctor Caligari's Cabinet of Wonders』の製作が発表。カリガリ博士役を『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)などで知られる個性派俳優マイケル・シャノンが演じ、オリジナル版で物語のキーパーソンだったジェーン役として『17歳の瞳に映る世界』(20)のタリア・ライダーが出演することが明らかになってきた。
すでに発表されているプロットによれば、「夢遊病者を操りながら町から町へと旅をし、行く先々で凄惨な殺人事件を起こすカリガリ博士。ある時、若い女性ジェーンの恋人が謎の失踪を遂げ、彼女はカリガリ博士がなんらかのかたちで関わっていると確信するが、誰も彼女の言葉に耳を貸さない」とある。おおよそのストーリー展開はオリジナル版を踏襲しつつも、ジェーンの役柄がオリジナル版におけるフランシスの立ち位置となる可能性が高そうだ。

制作にあたってはドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州映画メディア財団とドイツ連邦映画基金が支援。上記2名以外のキャストはまだ発表されておらず、詳しい公開時期も不明だが、続報に期待したい。
文/久保田 和馬
