
昇格組コベントリーの右サイドで図抜けた存在感。29歳日本人アタッカーは世界最高峰の舞台でどこまで通用するか【現地発】
8月16日のコミュニティーシールドを皮切りに、いよいよイングランドの新シーズンが本格的に動き出す。21日にはアーセナル対コベントリー・シティでプレミアリーグが開幕する。
今季の注目チームの1つが、昇格組のコベントリーだ。フランク・ランパード監督のもと、攻撃的なサッカーでチャンピオンシップを制したチームは、最高峰の舞台でどこまで戦えるのか。そして、その右サイドには日本人アタッカーの坂元達裕がいる。プレミア初挑戦となる坂元の現在地とともに、新シーズンのコベントリーを紹介する。
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25年ぶりにプレミアリーグへ帰ってきたコベントリーには、日本のサッカーファンにとって気になる存在がいる。29歳のアタッカー坂元だ。
日本代表での実績は多くなく、今夏の北中米W杯にも出場していない。それでも昨季のイングランド2部では優勝チームの主力としてプレーし、リーグ戦35試合で7得点・3アシストを記録した。シーズン終盤はろっ骨の怪我で離脱したものの、昇格までの道のりで果たした役割は小さくない。
コベントリーの復活そのものも劇的だった。2001年にプレミアリーグから降格して以降、経営危機や本拠地問題に揺れ、イングランド4部にあたるリーグ2まで転落。それでもマーク・ロビンスの長期政権で少しずつ立て直し、最後の一押しを担ったのが、元イングランド代表MFのランパード監督だった。
2024年11月、2部17位のチームを引き継いだランパード監督は、まず守備時に広がりすぎていた選手間の距離を修正した。就任1年目で昇格プレーオフまで進み、翌シーズンにあたる昨季は4-2-3-1を軸に攻撃力をさらに引き上げた。
前から圧力をかけ、奪えば素早く前へ出る。サイドに幅を作りながら、ゴール前には人数を送り込む。最終的には95ポイント、97得点でチャンピオンシップを制した。
そのランパード政権で、右サイドを任されたのが坂元だった。
チャンピオンシップでは、技術的に見てもトップクラスに入る選手だ。基本的には右のタッチライン際に張り、そこでボールを受ける。爆発的なスピードで相手を振り切るわけではなく、相手との間合いを見ながら、内側が空けば自慢の左足でカットインし、クロスやミドルを狙う。縦を切られなければそのまま運び、右足でも精度の高いクロスを送る。
カウンターでも慌てない。相手DFとの距離、中央を走る味方の位置を確認し、相手を引きつけてから最後のボールを入れる。坂元の良さは「何ができるか」だけではなく、「その場面で何を選ぶか」にもある。
数字に残らない仕事も多い。昨年2月のミドルズブラとの首位攻防戦では、右サイドで2人をかわしてジャック・ルドニへつなぎ、そこからハジ・ライトの先制点が生まれた。英紙『ガーディアン』は、この場面で坂元を「真の起点」と表現した。アシストはつかなくても、坂元が最初に相手の守備を動かし、決定機を生む。昨季はそんな場面が何度もあった。
守備でも決して手を抜かない。ボールを失えばすぐに切り替え、自陣深くまで戻ることもいとわない。攻撃だけでなく、こうした豊富な運動量もランパード監督が重用する理由の1つだろう。
実際、指揮官は坂元を「素晴らしい選手」と高く評価し、日々の練習での振る舞いやプロ意識を絶賛している。さらに、飾らない人柄と誰よりも懸命に働く姿勢で愛された、チェルシー時代の教え子エンゴロ・カンテを引き合いに出し、坂元にも「少し似たところがある」と語る。
坂元は、日本代表の看板を背負ってイングランドへ渡った選手ではない。それでもコベントリーで結果を残し、現地のファンやメディアから高い評価を得た。近年、イングランド2部で日本人選手への評価が高まっているが、坂元もその流れを作った1人と言っていい。
もちろん、プレミアでは同じようにはいかないだろう。対面するSBのスピードも強さも、寄せの速さも一段上がる。また、コベントリーとしても、守備に追われる試合が増えるのは間違いない。
2部で97ゴールを叩き出した昨季のように、攻撃に比重を置いて戦うのは難しくなる。新シーズンの目標は、あくまでもプレミア残留だ。
それでも坂元には見る価値がある。スピードだけに頼らず、「確かな技術」と「正確な状況判断」で相手を動かしてきたからだ。山形、C大阪、ベルギーのオーステンデ、そしてイングランド2部と階段を上り、29歳でたどり着いたプレミアリーグ。代表歴の少なさとは別のところで着々と積み上げてきた評価が、世界最高峰の舞台でどこまで通用するのか。
コベントリーの残留争いとともに、右サイドの坂元にも注目したい。
文●田嶋コウスケ
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