
■叔父はあの「マトリックス」俳優!テレビからキャリアをスタート

1992年生まれのサマラはオーストラリア出身の34歳。父サイモンは映画製作者、妹モーガンも俳優の映画一家であり、叔父は「マトリックス」シリーズの名悪役“エージェント・スミス”を演じたヒューゴ・ウィーヴィング。映画デビュー作となった『ミステリーロード/欲望の街』(13)では共演も果たした。

キャリアのスタートは2008年にテレビドラマ「Out of the Blue(原題)」。その後、2009年から2013年にかけて出演したオーストラリアのご長寿ソープオペラ「ホーム・アンド・アウェー」でブレイクすると、2015年の「死霊のはらわた リターンズ」シーズン1では、主人公たちが山小屋で出会う女性ヘザーを演じ、ことあるごとに喚き散らす絶叫ぶりでインパクトを放った。
■ジャンル映画で示すクールでイケてる姿に釘づけ!

時には『スリー・ビルボード』(17)などの硬派な作品に名を連ねつつも、活動のベースはジャンル映画という信頼できるサマラのフィルモグラフィ。凶暴化するウイルスが蔓延したオフィスビルを舞台にした『Z Inc. ゼット・インク』(17)では、ブチギレ殺人マシーンと化した本能むき出しのヒロインを勝ち気な笑顔を交えながら痛快に演じた。


さらにデスゲームの駒とされた青年に襲いかかるパンクルックの凄腕殺し屋に扮したバイオレンスアクション『ガンズ・アキンボ』(19)、殺人鬼ゴーストフェイスの恐怖を描く人気ホラーシリーズに参加した『スクリーム6』(23)。


“声を禁じられた村”の生け贄にとされた女性の恐怖と反撃をセリフなしで体現した『ヴィレッジ 声帯切村(コエキリムラ)』(24)に、頼りない元恋人の命を救うため強盗任務に身を投じるタフな女性に扮したアクションコメディ『イーニー・ミーニー』(25)。

互いに相手を殺すため人里離れた山荘にやって来た夫婦を襲うトラブルを、バイオレンス満載で描いたブラックコメディ『オーバー・ユア・デッド・ボディ』(26)…と毎年ご機嫌な作品に出演。タフさのなかにユーモアを感じさせる独特の存在感で、ジャンル映画女優としての地位を築いてきた。

■チャーミングな魅力が詰まった『ザ・ベビーシッター』
なかでもサマラの魅力が詰まっているのが、悪魔崇拝カルトのリーダーという裏の顔を持つベビーシッターのお姉さんにヘタレ少年の純血がねらわれる、天才マックG監督によるNetflix映画『ザ・ベビーシッター』(17)だ。

美人でイケてる憧れの存在ビーを演じ、ナードな話題にも付き合ってくれるノリのいい一面から、手を焼かせる少年コール(ジュダ・ルイス)に苛立つ悪人の顔、騒動を通じてたくましくなっていくコールを見て感慨にふける姿など多彩な表情を披露。随所に滲み出るいいヤツ感で憎みきれない悪役像を浮かび上がらせた。

その続編『ザ・ベビーシッター ~キラークイーン~』(20)でも再び悪魔崇拝カルトにねらわれたコールの窮地を救うヒーローとして登場。前作では語られなかったキャラクターの過去も描かれ、面倒見のよいクールな姉御が取る選択は一抹の感動すら誘った。
■血まみれの花嫁の反撃を描く『レディ・オア・ノット』
この『ザ・ベビーシッター』と並び“ジャンル映画女優”としての地位を確かなものにしたのが、続編の公開が控える『レディ・オア・ノット』(19)。格式高い一族ル・ドマス家に嫁いだ花嫁のグレース(サマラ)が、家族が増えた際に行われる伝統のゲーム“かくれんぼ”で、義理の家族たちから命をねらわれるというデスゲームものだ。

ただの遊びだと思い、渋々ゲームに参加したところ、なにやら様子がおかしい一族の総攻撃に面食らい、恐怖に怯えながらもしだいに怒りを募らせ、ついに覚悟を決めて立ち上がる…。血で染まったウェディングドレス姿で鋭い眼光を放ち、“Fワード”を吐き捨てながら反撃に乗りだすド根性な花嫁の復讐劇は爽快。ユーモアも盛り込みながら、現代的な“ファイナルガール”像を印象付けた。

そんな前作から7年ぶりの新作となる『レディ・オア・ノット2』では、再びグレースを襲う悪夢のバトルロワイヤルが描かれる。

奇跡的に死のゲームから生還を遂げたものの、ル・ドマス家を滅亡させたことで世界を裏から支配する名家たちに目をつけられてしまったグレース。病院で再会した妹フェイス(キャスリン・ニュートン)と共に拉致されると、「夜明けまでにグレースを殺したものが、世界を意のままに操る主席の座を手にする」という勝手なルールのゲームがスタート。世界の支配権を賭けた各国の富豪たちによる“人間狩り”のターゲットとされてしまう。

奇跡的に生還したのも束の間、再び過酷なサバイバルを強いられる主人公を演じるにあたり、サマラは代名詞の“絶叫”を連発。恐怖に歪む表情の奥に鋭いまなざしをのぞかせ、狂気のなかでも自分を見失わない芯の強さを表現。「本能と意志の力で生き延びる存在」と語るキャラクターに、リアルなエモーションをもたらしているようだ。

さらに今作から登場する妹フェイスとのやりとりを通じて顔を出す姉らしい一面など、パワーアップした続編にふさわしい、より多彩な姿を見せてくれることだろう。

ホラーへの出演が続いているサマラ・ウィーヴィングだが、意識的に選んでいるわけではなく、いいと思った脚本を選んできた結果、たまたまジャンル映画が多かっただけなのだという。ホラーについて「ユーモアや感情の幅を演じられる非常に豊かなジャンル」と捉え、“スクリーム・クイーン”と呼ばれることも「最高!」と大歓迎しているように、ホラーというジャンルや役を楽しんでいるからこそ、現代屈指のジャンル映画女優として支持されるのだろう。
文/武藤龍太郎
