
日本発の本格「スター・ウォーズ」長編アニメシリーズ「スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ」が、8月5日にディズニープラスで日米同時全話一挙独占配信された。「スター・ウォーズ:ビジョンズ」は、映画「スター・ウォーズ」の物語を、世界をリードするアニメスタジオがクリエーター独自の“ビジョン”で描き出すルーカスフィルムのプロジェクト。WEBザテレビジョンでは、本作を手掛ける神山健治総監督にインタビューを行い、長編シリーズ制作の経緯、カーラやナワームといったキャラクター、そして「スター・ウォーズ」シリーズの魅力などを語ってもらった。
「スター・ウォーズ:ビジョンズ」初の長編シリーズとなる本作は、「機動戦士ガンダム RG XARX-ZERO(アレックスゼロ)」を手掛けることも決まっている神山氏が総監督を務め、Production I.Gがアニメーション制作を担当。強大なフォースを秘めた主人公・カーラの前に、ダース・ベイダーを彷彿とさせる敵ナワームが立ちはだかる。ストーリーはもちろん、ライトセーバーを使ったアクションシーンもふんだんにあり、見応えのある作品に仕上がった。
■「自分でもチャレンジしてみたい企画だったので引き受けました」
――2022年頃から本作の構想が始まったとのことですが、あらためて今回の長編シリーズが実現するまでの経緯を教えてください。
最初の短編シリーズ(Volume1=全9話)が発表された後に、恐らく日本よりもアメリカのほうで上位の人気を博したようです。
短編を作る際に、キャラクターのバックグラウンドなども設定しながら製作していたので、そのときから「長編にすることも可能」だと言っていたのを、ルーカスフィルムサイドも聞いてくださったようで、「長編にしましょう」というお話を頂きました。
――最初から長編にできるくらいの設定、プロットを考えられていたんですね。
設定はあったものの、いざ8本のシリーズにするとなると、尺で言えば映画1本分になるんですよね。「スター・ウォーズ」の映画は最近3時間ぐらいあるので、これは大変だぞと(笑)。
映画1本分の尺をどう各話に振り分けるか、残りのジェダイは誰なのかなど、逆にこのシリーズに収めるのが難しい状況でした。でも、すごくうれしいオファーだったし、自分でもチャレンジしてみたい企画だったので引き受けました。
――シリーズ化が決定したときのお気持ちはいかがでしたか?
もちろんうれしかったです。私が映像の世界を志したきっかけが、そもそも「スター・ウォーズ」でしたので、ルーカスフィルムからこのオファーを頂けたのは、短編のときもうれしかったですし、それをシリーズ化するというのは個人的にもすごくうれしいオファーでした。
ただ、“夢がかなった”というのとはちょっと違う、不思議な感じでもありました。これだけのタイトルなので、プレッシャーも当然ありましたし、複雑な気持ちでしたね。
――神山さん自身も昔から「スター・ウォーズ」ファンとのことですが、ご自身が考える「スター・ウォーズ」らしさとは?
いくつかあるのですが、まず“ジェダイ”と“ライトセーバー”は絶対に出てこなければいけない。そして、そこに絡む“ある名もなき個人の冒険譚”なのだと思います。ジェダイになる、ならないは別として、宇宙での冒険と、まだ見ぬ新しい惑星での冒険が「スター・ウォーズ」には欠かせないと思っています。
そこに出てくるガジェットも、「スター・ウォーズ」独特の世界観がありますよね。ある種、“つぎはぎ”で作られたようなガジェットなのに、宇宙にも出ていけるし、それを科学として捉えていないところがいいのではないかと思っています。どうやって飛んでいるのか?など、あまり言及していないですし(笑)。
そして最後は、やはり“フォース”です。この世界のファンタジーを彩る一番大きな要素なので、それが抜けないようにすることを意識しました。
■アクションシーンのこだわりも
――ライトセーバーでのアクションは「スター・ウォーズ」シリーズでの注目ポイントだと思いますが、アニメーションでライトセーバーのアクションシーンを表現するのは難しいのではないかと思いました。
おっしゃる通りで、説得力のあるライトセーバーでの戦いをアニメで作画するのは大変なんです。役者さんも大変だと思いますが、アニメでは一番お金と時間がかかる部分ですね。
今回、本当に素晴らしいアニメーターが参加してくださっていて、「スター・ウォーズ」という作品の特色かもしれませんが、日本のアニメーターだけでなく、いろんな国から「スター・ウォーズ」に参加したい、という腕のあるアニメーターたちが集結してくださっているので、ライトセーバー戦は他のシリーズと比べても、最も尺が長いのではないかと思います。
――他の注目ポイントで言えば、やはり主人公のカーラですよね。カーラの成長や変化をどのように表現しようと思われましたか?
最初の「スター・ウォーズ」がそうであるように、親子関係はありますが、あれは“親子”というよりも“師匠と弟子”の関係なのではないかと思うんです。
ダース・ベイダーとルーク・スカイウォーカーだけでなく、オビ=ワン・ケノービがいたり、目標とすべき師匠がいて、まだまだこれから学ばなくてはいけない主人公が、その姿を見て追いつき追い越していくというのが、「スター・ウォーズ」に限らずなんですけど、ジュブナイルの特徴だと思います。
特に「スター・ウォーズ」は親子であり、師弟の関係が物語の軸になっていると思うので、今回は父と娘でしたが、「スター・ウォーズ」シリーズとして描かなければいけない軸として踏襲しました。
――カーラについては、最初の段階でキャラクター設定を細かく考えていたのですか?
まずは成長を描くということと、見る人にとって一番長く付き合うキャラクターですから、明るくて活発で、みんなに好かれるキャラクターになってほしいなというのがありました。
短編でもそうでしたが、今回も8話あるものの成長を全部描いていくのは難しいので、「ライトセーバー使いである」とか「最初から戦士としては優秀で強い」「明るくてポジティブな性格ではあるけれど、どこかで挫折もある」という、最速で視聴者に好かれるキャラクターになってほしいという思いを込めています。

■「謎の仮面の騎士というのは絶対必要なキャラクターだと思っていました」
――今作には、ダース・ベイダーを彷彿とさせるナワームという気になるキャラクターが登場します。
謎の仮面の騎士というのは絶対必要なキャラクターだと思っていました。ただ、今までの「スター・ウォーズ」がライトサイド、ダークサイドという勧善懲悪の世界だったのが、今の時代は、見る側も正義と悪というように単純には語れない時代になっています。
正義も、ある種、見方によっては悪に見えてしまうとか、シス側(ダークサイド)が言っていることのほうが道理に適っているように感じてしまうとか。時代が少しずつ変わってきた中で、ジェダイとシス、ライトサイドとダークサイドの描き方も時代に合わせて変えてみようと思いました。
――確かに正義が悪を倒すというだけではない物語も多くなっていますよね。
「どう見てもダークサイドのシスなのに、なぜ彼は青いライトセーバーなのか」という形で、私が感じている時代に対しての正義、悪について問うていくための新しい形でのヴィランとしてナワームを出しています。
声を担当されているのが大森南朋さんで、こういうキャラクターだからこそ、大森さんの声がピッタリだなと思っています。
■ライトサイドとダークサイドとは何か…
――全話配信され、今後複数回見る方も多いと思いますので「もう一度見るときに注目してほしいポイント」も教えてください。
短編から引っ張っている謎の一つとして、良い面しか見てこなかった父親がなぜダークサイドに落ちたのか、という謎を解いていきます。第3話くらいで、ある程度その謎は開示されるのですが、父親が悩んだライトサイドとダークサイドの問題が最初の問いであり、この物語を通しての大きな謎になっていきます。
剣戟も映像としてものすごくカッコよくできていると思いますので、その辺を見ていただきつつ、ナワームが最後まで考え抜いた、カーラの父・ジーマも考え抜いた、ライトサイドとダークサイドとは何かというところにも注目してもらいたいです。
最後の最後に“九人目のジェダイ”が誰なのか分かりますが、「その人物はどういう結論を出したのだろうか?」という問い掛けにもなっています。カーラは一直線にその道を行きましたが、このキャラクターたちが紆余曲折を経て、たどり着こうとしている答えが、この作品のテーマの一つです。
2回目に見ると、また違う見え方がしてくるかもしれませんし、じっくり考察しながら見ていただけるとうれしいなと思います。
――最後に神山さんが今後、クリエーターとして挑戦していきたいことを教えてください。
いろいろあるんですけど、このシリーズをもっともっと広げていくということもやってみたいですし、「スター・ウォーズ」の本編はライブアクションだと思うので、ライブアクションで「スター・ウォーズ」を撮ってみたいという思いもあります。
「スター・ウォーズ」の世界はまだまだ深くて、世界中の人が自分の思う「スター・ウォーズ」というものを持っていると思います。
その中で、こういう機会があったことはすごくうれしいですし、まだまだ私が思っている「スター・ウォーズ」像が全部描けたわけではないので、もし機会があれば、例えば映画として作れたらという思いもあります。何かできるように頑張ります!
◆取材・文=田中隆信

