JR三鷹駅から少し歩くと、住宅街へ抜ける細い路地に小さな天ぷら屋が、ぽつんと明かりをともしている。
のれんをくぐると、どこか背徳的な高揚感が胸をくすぐる。天ぷらで酒を飲むという行為は大人の特権だからだ。
店主は一見コワモテだが、話し始めれば実に人懐こい。
「長いこと立ち飲みをやってたんで、気軽に入れる店にしたかった」とか。
カウンターに座れば、豊富な天ぷらメニューに圧倒される。品書きはまるで『耳なし芳一』である。
つまみが少しずつ頼めるので、一人客はそこから始めるといい。
つまみを数品注文すると、どれもうまい。聞けば独学というが、きっと研究熱心なのだろう。「常連さんほど天ぷらを頼まなくなるんですよ」と店主が苦笑いする。
「自分が好きなのは庶民的な店」と言う通り、値段は驚くほど手頃だ。天ぷら、つまみ、酒、2000円あれば十分に楽しめる。カウンターでは毎日のように通う常連が静かにグラスを傾けている。
「明日はあれを食べよう」
帰り道にそう思って、明日もまた、彼らの足はこの店へと向いてしまうのだろう。
『すーさんち』
東京都三鷹市下連雀3-19-16
営業時間:15時~23時
休み:日曜
撮影・文/キンマサタカ
週刊実話2026年1月1日号より
※情報は取材当時のものです
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