
ポルトガル中部、アヴェイロ近郊のイリャヴォで8月12日、「Festival do Bacalhau(タラ祭り)」が始まった。会場はガファーニャ・ダ・ナザレのジャルディン・ウディノ。16日までの5日間、ポルトガルの食卓に欠かせない塩漬け干しダラ「バカリャウ」を中心に、料理、音楽、工芸、海の文化をまとめて楽しめる。地元自治体が「市最大の食イベント」と位置づける夏の恒例行事だ。
■ 地元団体がつくる10の食堂
2026年は10の飲食ブースを地域団体が運営し、さまざまなバカリャウ料理を提供する。さらに、バイラーダ地方のワインや、イリャヴォの名物パンも並ぶ。観光客向けの有名料理を外部業者が販売するだけではなく、地域の団体が調理と接客を担うため、食のイベントそのものが地元活動の発表の場になる。
■ 食べるだけでは終わらない
会場ではショークッキングのほか、工芸品展示、コンサート、子ども向けの遊びも実施される。水辺ではカヤックなどを楽しめ、近くの船舶博物館では、かつて遠洋漁業に従事した船員の記憶にも触れられる。バカリャウという一皿を入口に、港町の仕事、海との関係、地域の暮らしまで見せる構成になっている。
工芸品の展示には地域内外の職人向けの枠が設けられ、地元団体や福祉団体も参加する。食だけでなく、手仕事や地域活動まで同じ会場で紹介することで、来場者の消費先を幅広く地域へつなげている。
■ 「名物」を地域全体の物語にする
バカリャウはポルトガル各地で食べられる国民的な料理だが、イリャヴォではそれを単なる名物として消費するのではなく、港、漁業、パン、ワイン、工芸、音楽まで結び付けている。観光地の食フェスは味だけが記憶に残りがちだが、背景にある土地の仕事や人を同時に見せれば、その料理は「そこで食べる理由」を持つ。地域の日常に根付いた食材を、夏の観光資源へ育てるイリャヴォの方法は、食文化を伝える祭りの好例といえそうだ。
