
2型糖尿病は、遺伝的な体質だけでなく、食事や運動など日々の生活習慣とも深く関係しています。
しかし最近では、私たちが「どんな場所に住んでいるか」も、将来の糖尿病リスクに影響している可能性が指摘されています。
今回、英国の42万人以上を約15年間追跡した大規模研究から、自宅のすぐ周囲に庭が多い人や、近隣に複数の緑地公園がある人ほど、2型糖尿病を発症するリスクが低い傾向にあることが明らかになりました。
研究の詳細は、豪クイーンズランド大学(UQ)により、2026年7月2日付で学術誌『BMC Public Health』に掲載されています。
目次
- 自宅周辺に庭が多い人ほど、糖尿病リスクが低かった
- なぜ「緑地」が多いと、発症リスクが下がるのか
自宅周辺に庭が多い人ほど、糖尿病リスクが低かった
これまでにも、緑の多い地域に暮らす人ほど2型糖尿病になりにくい可能性は報告されてきました。
ただし従来の研究では、衛星画像などから地域全体の「緑の量」を測る方法が多く、自宅の庭なのか、公園なのか、それとも単なる草地なのかを細かく区別できないという問題がありました。
そこで研究チームはUKバイオバンクに登録された42万3282人を対象に、住宅周辺の緑地と、その後の2型糖尿病発症との関係を調べました。
参加者の平均年齢は約56歳で、追跡期間の中央値は15.41年です。
この間に1万9648人が新たに2型糖尿病を発症しました。
研究者たちは英国の詳細な地理情報を利用し、それぞれの参加者について、自宅から半径100メートル以内の土地のうち、どれほどが「住宅の私有庭園」として使われているかを算出しました。
その結果、自宅周辺に占める庭園の割合が最も低い25%の人たちと比べて、庭園の割合が最も高い25%の人たちは、2型糖尿病の発症リスクが6.8%低いことがわかりました。
年齢や性別、教育、喫煙、飲酒、食生活、糖尿病の家族歴などを考慮しても、この関連は残っていました。
ただし、これは「庭を持てば糖尿病リスクが6.8%下がる」という意味ではありません。
研究で測定したのは本人が庭を所有しているかどうかではなく、自宅のごく近くに私有庭園として分類される土地がどの程度存在するかだからです。
なぜ「緑地」が多いと、発症リスクが下がるのか
さらに興味深かったのが、公共の公園についての結果です。
チームは最寄りの公園までの直線距離だけでなく、実際の道路に沿って歩いた場合の距離まで調べました。
ところが意外にも、公園がどれほど自宅に近いかという距離そのものと、2型糖尿病の発症との間には明確な関連がありませんでした。
一方で違いがみられたのが、公園の「数」です。
自宅から800メートル以内に公園が0~1カ所しかない人と比べて、4カ所以上ある人では2型糖尿病の発症リスクが5.7%低くなっていました。
また、公園そのものの大きさについても明確な関連は確認されませんでした。
つまり今回の研究では、「巨大な公園が1つ近くにあること」よりも、近所に複数の公園という選択肢が存在することのほうが糖尿病リスクの低さと結びついていたのです。
では、なぜ緑地の多い環境が健康と関係するのでしょうか。
研究者たちは、庭や公園が身体活動を増やす可能性に加えて、屋外で過ごすことによるストレス軽減や心理的な回復、日光を浴びることによるビタミンDへの影響、環境中のさまざまな微生物に触れることなど、複数の仕組みが考えられるとしています。
ただし、今回の研究では参加者が実際に庭や公園をどの程度利用していたかまでは測定していません。
また観察研究である以上、「緑地が多かったから糖尿病が減った」という因果関係を証明したものでもありません。
所得や健康意識など、完全には取り除けない別の要因が結果に影響している可能性も残されています。
それでも42万人以上を長期間追跡した今回の結果は、糖尿病予防を考えるうえで、食事や運動といった個人の生活習慣だけでなく、人々が暮らす街そのものの環境も無視できない可能性を示しています。
高密度の集合住宅が増えていくなか、庭や公園は単なる景観のための空間ではなく、将来の健康を支える都市インフラの一部なのかもしれません。
参考文献
Scientists Found a Surprisingly Simple Way to Cut Your Type 2 Diabetes Risk
https://www.sciencealert.com/home-gardens-and-local-parks-could-be-reducing-your-risk-for-type-2-diabetes
Home gardens reduce risk of type 2 diabetes
https://news.uq.edu.au/2026-08-home-gardens-reduce-risk-type-2-diabetes
元論文
Private garden exposure and public park access in relation to type-2 diabetes incidence: a UK Biobank cohort study
https://doi.org/10.1186/s12889-026-28277-1
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

