【やくみつるのシネマ 小言主義 第302回】『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』
ベトナム戦争中の1968年、特殊任務に就いていた米軍グリーンベレーの精鋭部隊「毒ヘビ部隊」がジャングルで消息を絶った。捜索のため「ハゲワシ小隊」が赴き、ジャングルの奥深くで遭遇したのは、ティラノサウルスやトリケラトプス、ケツァルコアトルスといった恐竜の大群だった。陸、川、空から襲いかかる恐竜たちを相手に、隊員たちは壮絶なバトルを繰り広げるが…。
戦争映画と恐竜映画を混ぜたらスプラッターになった!
怪物や地球外生命体を描いてきたオーストリアの監督が「作りたくて作りたくて」しょうがなかった本作。ハリウッドに企画を持ち込むも、色よい返事がもらえず、1人で【監督・脚本・製作・編集・美術】を担当。VFX全開で製作にこぎつけたそうです。
恐竜映画と戦争映画の見事な合体映画を作ったら、結果的にスプラッター映画になってしまった。むしろスプラッター映画ファンの方にはおすすめの作品です。
当初、「ベトナム戦争に突如恐竜が現れた!」というキャッチコピーで、なんじゃらほいと思うのですが、本当になんじゃらほいのまま話が突き進んでいきます。
とはいえ、きちんと理論武装はしているんです。ベトナムを戦場にした米ソの対立。恐竜が出てくるのも、ソ連軍のとある機密作戦のしくじりによる。そんな破天荒なストーリーを思いついた時点で、監督は「これはいける」と確信したんでしょうね。
パンフレットを見ますと、役者紹介より多い恐竜オールスターキャスト。全12種類。それらが自らの特徴を生かしながら、待ち伏せや奇襲、集団戦を仕掛けてくるんです。「恐竜ってこんなに攻撃的だったか?」と思うくらい凶暴。「パーク」と名付けられるほど、のどかな雰囲気の『ジュラシックパーク』とは、まったく違います。何しろ米国の特殊部隊と恐竜軍団の全面戦争ですからね。今後、これを超える恐竜映画は出てこないかも。原題の『プリミティヴ・ウォー』でありながら、「ファイナルウォー」になるかもしれません。
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恐竜映画なのに突然訪れる“ほっこりタイム”
この映画を見ていますと、殺人兵器化した恐竜だけには喰われたくないと思うわけです。ただ、どういうフォローのつもりか分かりませんが、恐竜の雄と雌が頬を寄せ合ったりとか、親子の恐竜が仲良さげに歩いていたりとか、ほのぼのしたシーンも挟まれ、この監督の情緒が分からなくなり、苦笑してしまいます。
こうなったら、米軍の最高司令官であるところの大統領がしゃしゃり出てきて、恐竜に頭から喰われるシーンがあったら、どんなにスカッとするかな、と。続編にはぜひ検討いただきたい。
ところで、恐竜といえば「巨大なトカゲ」というイメージですが、最新の科学では鳥に非常に近い生態を持っていたことが明らかになっています。ティラノサウルスなども、一部に羽毛が生えていた可能性があるとのことで、前に行った恐竜展のお土産コーナーで買ったぬいぐるみには、背中に羽毛がびっしりとついていました。ご参考までに。
『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』
監督・脚本・製作・編集・美術:ルーク・スパーク 出演:ライアン・クワンテン、トリシア・ヘルファー、ニック・ウェクスラー、ジェレミー・ピヴェン他 配給:オンリー・ハーツ+キングレコード 配給協力:トリプルアップ 8月7日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズ他全国ロードショー
「週刊実話」8月20日・27日号より
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
