
オランダNECがCL本戦進出へ王手! 予選3回戦で躍動した“日本人を母に持つ新参CB”にも注目「真ん中は相撲のような感じ」【現地発】
クラブ創設125周年を迎えた昨季、NECはオランダリーグ3位という好成績を収め、今季チャンピオンズリーグ(CL)出場の挑戦権を得た。その第1関門はギリシアの名門オリンピアコスとのCL予選3回戦。その対決を敵地で0-0、ホームで2-1で制すと、1万2500人収容の瀟洒なスタジアムが歓喜で爆発した。
NECの魅力は畏れ知らずの攻撃サッカー。3-4-2-1システムから5トップに移行しながら、中盤、DFの選手も攻撃に関わるサッカーで、オランダのビッグクラブ相手に怯まず互角の撃ち合いに持ち込むスタイルは唯一無二だ。その魅力をNECはオリンピアコス相手に存分に発揮した。
5年前は2部リーグで燻っていたクラブだった。しかし、元オランダ代表のGKヤスパー・シレッセン(無所属)、FWバス・ドスト(引退)、日本からFW小川航基、MF佐野航大(現PSV)などを補強しはじめた22年から23年にかけて中堅上位の力を付け、昨季就任したディック・スフローダー監督が怒涛の攻撃サッカーを持ち込んで、さらにワンステップ上のクラブに育った。
NECは超ベテランと、無名の若手が奏でるハーモニーが素晴らしいチームだ。パナシナイコス戦の同点弾はドゥシャン・タディッチ(37歳)のクロスに、ブライアン・リンセン(35歳)がスライディングボレーで鮮やかに決めたもの。司令塔を務めるチャロン・チェリーは38歳。試合後、リンセンは「3人合わせて110歳だ」と言って笑った。スフローダー監督は会見でこう語る。
「ベテラン選手によくあることですが——私が指揮したPECズウォーレ(オランダ)やカステジョン(スペイン)でもそうだったように、彼らが好むプレースタイルで戦うと、プレー自体をすごく楽しんでくれるようになるんです。彼らには相応のパフォーマンスを期待して当然です。しかし、若手選手を見てみると――」
と言ってスフローダー監督はオリンピアコス戦で先発した3人の若手の名前と、NECに来る前の所属リーグを挙げた。
トビアス・ストーム(21歳/DF)/リンビー(デンマーク2部)
デフェロン・フォンフィール(23歳/DF)/アイセルメール・フォーゲルス(オランダアマチュア)→ドルトレヒト(オランダ2部)
ノエ・レブレトン(22歳/MF)/カーン(フランス3部)
「そう考えると、彼ら若手がこのレベルにしっかりと適応して戦っているのは、実に素晴らしいことですよ」
そのなかでストームはオリンピアコス戦で難しい役割を果たした。3CBシステムの右を務めたストームだったが、中央でDFリーダーを務めるサンドラーが負傷退場したことで急きょ、彼が真ん中を固めることになったのだ。191センチの高さ、機敏な動き、ボール技術の確かさが武器のストームは急なポジション変更にもスムーズに対応し、オリンピアコスの攻撃を止め続けた。
「新加入選手たちの適応スピードが非常に早いです。私たちが目ざす高いテンポのサッカーにフィットしてくれています。トビアス・ストームは少し苦戦している部分もありますが、ポテンシャルが高く、さまざま点で大きな成長を見せています。今日のトビアスは非常に良い仕事をしてくれたと思います。(軽い怪我のため)今週末の試合(オランダリーグ)には出しません。リスクを侵すわけにはいきませんからね。先週末もトビアスを温存しました」(スフローダー監督)
U-21デンマーク代表のストームは、日本語を喋る。
「お母さんが日本人なので、家で日本語を喋っているんです。4歳まで中国で過ごし、それからデンマークに住んでます。日本には行ったことがありますよ」
試合中のポジション変更について、どう対応したか?
「CBの右だと、前に上がったり、1対1で行ったり来たりするけれど、真ん中は相撲のような感じ。格闘技のようにぶつからないといけない」
激しいデュエルの応酬を相撲に例えるのが新鮮だった。
「NECのホームゲームはとてもエキサイティング。サポーターからエネルギーをもらってプレーしています。デンマークでは“普通のサッカー”をするチームだったけれど、NECはとても攻撃的なサッカー。相手がどこでもNECのプレースタイルでサッカーをします」
延長戦後半、ミスパスなどでプレーが止まるたび、疲労のあまりピッチの上に3人、4人とオリンピアコスの選手が倒れ込んだ。しかし、タイムアップの笛が鳴り、ピッチの上に寝転んだのはNECの選手たちだった。それだけすべてを出し切った熱戦だった。その疲れを癒したのが、試合後、スタジアムに流れたアンセム。
CL予選3回戦はまだ“CL”のステータスではなく、試合前にこのアンセムは流せない。今回のアンセムはあくまでスタジアムDJが流したものだった。しかし、ボデ/グリムト(ノルウェー)と戦うCLプレーオフでは公式にあのアンセムが鳴り響く。だから8月19日のNEC対ボデ/グリムトの試合は126年目のクラブにとって歴史的な一戦になる。そして25日のアウェーゲームは、NECが新たな歴史を作る試合になるのかもしれない。
取材・文●中田 徹
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